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1 ハローワークで紹介されました

 俺は田島真司、三十代だがまだ四捨五入しても四十歳じゃないからアラフォーではない。

 先月まで務めていた貿易会社が倒産して失業保険で暮らす日々。景気が良くなってきてるって聞くけどイマイチこれだっていう求職が見つからないんだよな。

 幸いなことに失業保険がまだ数ヶ月はもらえるから焦っているわけではない。今までアクセクと働いてきたから少しくらいはのんびりしてもいいだろう。

 でも、失業中という身分では嫁さん探しは絶望的だから、あまりのんびりしてるのも考えものなんだよな。


 失業保険を受給するためには月にニ回以上、ハローワークに行って求職活動をしなければならないらしい。真剣に探してるやつは毎日のように行ってるんだろうな、いい求職口はきっとすぐに埋まってしまうだろうから。

 でも、俺は今のところは最低限だけ。こういうヤツはきっと多いんじゃないかな。

 ハローワークに行ったら機械的に仕事を探してるフリだけすれば問題ないんだけど、俺は月に二回だけだけどハローワークに行った時は真剣に求職口を検索してる。

 いい就職口が見つかったらもちろんすぐにでも再就職したいのは当たり前だからな。


 そんな感じで認定日だったので、ハローワークで検索機を眺めていたところ、一件の求人が気になったんだ。


-----------


 次元総合商社

 職種:営業職

 勤務地:東京都新宿区

 年齢:問わず

 学歴:問わず

 資格:問わず

 勤務日:週五日

 給与:試用期間18万円(三ヶ月間)正式採用時20万円~

 賞与:年二回

 募集人数:一名

 特記事項:パソコン操作が普通にできること。人種差別をしないこと。

 

-----------


 特に条件は良くもないし悪くもないか。気になったのはまずその社名。

 次元って、いきなりファンタジーな世界か?

 気になってスマホでググッてみましたけど社名は見つからなかった。

 そういえば泥棒さんのアニメのキャラでも次元って名字もあったっけ。


 そして特記事項に人種差別しないことってのが、また気になるところ。外人相手の仕事が多いんだろうか?

 欧米人相手の仕事で人種差別ってわざわざ書かないだろうから、アフリカかアジアかな?

 前の会社でアフリカあたりも何度も行ってるからそのあたりは大丈夫。結構カルチャーショックあるから大変だったよ。


 なんとなく気になっちゃったからしかたない。

 もう勘としか言いようがないんだけど、時々ひらめくんだ。この物件は買いだって。

 さっそく俺は相談員のところへ行って、この会社の紹介状をもらうことにした。


 目の前で相談員の人が電話をかけてくれてるのをじっと待つ。

「田島さん、明後日の午後で大丈夫?」

「はい、問題ありません」

 相談員さんの確認に俺は即座にOKを送る。

「それじゃ、頑張ってね」

 電話を切った相談員さんは紹介状をプリントアウトして俺に渡してくれた。

「はい、頑張ってきます」




 指定の時間の五分前に俺は紹介状の場所を訪れた。新宿駅から歩いて十分ほどの雑居ビルの三階にその会社はあった。

 受付には誰もいない様子。「御用の方は押してください」と書かれていた呼び出し用のブザーを押すことにした。

 すぐに一人の金髪の女性が現れた。

「ハローワークから紹介された田島です」

「担当のアイリーンです。こちらへどうぞ」

 流暢な日本語で一安心。一応英語は普通に話せるけど、やはり緊張するからな。

 それにしても、アイリーンさんというのか。すごく神秘的な美人だ。


 アイリーンさんの後をついて、応接室へ。アイリーンさんの長髪が揺れた瞬間、一瞬だけ見えたその耳に俺の目は釘付けになった。

 耳が尖ってる?

 まさかな。

 応接室で向かい合っても一度気になるとその耳が気になって仕方ない。


「どうかいたしました?」

 その一言で俺は現実に戻された。慌てて俺はカバンから書類を取り出した。

「これが紹介状と履歴書です」

「ありがとう」

 そう言って受け取ったものの、チラリと見ただけであまり履歴書にも興味がなさそう。

 これは望み薄かもしれないなぁ。


「田島さんは体は丈夫ですか?」

「はい、病気一つしたことがありません」

 気になる質問だな。すっごくブラックな企業で死ぬほど働かされるんだろうか。

「メンタルのほうはどうですか? 常識外の出来事に適応できる方でしょうか?」

「大丈夫だと思います。前の会社でアフリカや中東での勤務も経験してますので異文化にもすぐに適応できる方です」

「それは頼もしいですね」

 やっぱり海外勤務があるのかな?


「仕事の説明をさせていただきますね」

「はい、お願いします」

「採用後は一つの支店をお任せいたします。与えられた資金で現地で需要のある物資を見極めて販売し、また現地で安く仕入れられる物資を購入していただきます。

 すべて才覚にお任せいたします」

「現地滞在なんですか?」

「それも可能ですが、通勤可能になっております」

 よくわからない……最初の話を聞いた限りではどこか未開の国に送られて稼いでこいって感じに聞こえたんだが、通勤可能?」


「週5日勤務となっておりますが、勤務形態などはお任せいたします。業績さえ上げていただければまったく店舗に行かなくても結構ですが、週一度こちらへ出勤して報告は行っていただきます。

 裁量労働制というそうですね」

 最近良く聞く言葉だけど、正直これもブラックな労働条件になり兼ねないのが怖いところだ。


「三ヶ月間の試用期間を設けておりますので、その期間に業績を上げる見込みがないと判断された場合は、残念ながらそれ以降の契約は見送らせていただきます。

 一定以上の業績を上げていただいた場合は正式採用とさせていただきます。

 なかなかこれだけの話では仕事の内容も理解できないかもしれませんが、何かご質問は?」

 これは困った……わからなすぎて何を質問したらいいのかも思いつかないぞ。

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