闇の世界での邂逅
どんな夜闇よりも深く、光の欠片すら存在しない世界。
その静寂の中に、人の形をした何かが膝を抱えて座っていた。
音も、風も、時の流れさえもない。
普通の人間なら、とうに狂ってしまうだろう。
だが、彼は狂わない。
感情という仕組みを持たない――ただのgolemだからだ。
クラーディは何も感じず、何も思わず、ただ命令を待つ。
永遠の闇の中で、ただそれだけを繰り返す。
……はずだった。
いつの間にか、彼の中に“主”の面影が浮かんでいた。
奇妙なことだ。
思考を持たぬはずの彼が、パーサーのことを考えている。
そして次に浮かんだのは、マリアやハミルトンの名。
彼らは無事だろうか――
そんな問いが、彼の中に微かに生まれた。
その瞬間、闇の奥から光が差し込む。
クラーディはゆっくりと顔を上げる。
目の前には、鏡のように静止した湖があった。
波ひとつ立たぬ水面が、彼自身の姿を映し出している。
不意に、その水面が揺れた。
波紋が広がり、水中から“誰か”が現れる。
それは彼と同じ背丈、瓜二つの顔の造形。
けれど、違う――
足首まで届く白銀の髪。
柔らかく膨らんだ胸。
そして、微笑を浮かべた表情。
クラーディは首を傾げる。
……同型の、女型……?
クラーディは思考する。
すると、その“もう一人の彼女”が眉をひそめた。
『わたし、golemじゃないよ。失礼だな』
声が、湖面を震わせる。
どこか懐かしく、暖かい声だった。
『やっと、会えたね――クラーディ。』
微笑むその顔を、クラーディはただ無言で見つめ続けた。




