軍隊へ
冗談じゃないとパーサーはハンスに詰め寄ったが、ハンスは落ち着けと椅子に座る様に促した。
「良いか、観戦武官と言っても前線に出ることはない。安全な後方から戦場を眺めるだけだ。心配すんなよ。それにお前の安全くらい大佐なら確保してくれるさ」
気軽に言われたが、パーサーの不安は消える事は無かった。
「もっと、安全なルートは無かったんですか?」
「無い。良いか、これが今一番ベストなルートだ。良いじゃないか、軍のゴーレムとか見放題だぞ」
「・・・軍のゴーレム。主力ゴーレムのタロースとか、あの最新鋭のダイタロスとか見れるかも!いやっ、でも中東の紛争なら旧式のポーンとかありそうだな!」
「盛り上がってるとこに悪いが、もうすぐ着くぞ」
いつの間にかに馬車は港に程無く到着していた。
そして、二人と一体が馬車から降りると軍の海軍事務所の建物から、一人の男が出てきた。
カーキ色のトレンチコートと軍服に身を包み、軍帽を深く被っている。
「貴様がマルセイ・ベルメール候補生だな。自分はイアン・ハミルトンだ」
イアンは両手を後ろに回してパーサーを見た。
イアンの印象は正に規律に厳しい厳つい軍人と言った雰囲気の人物だった。
「上官を前に敬礼しないのか、候補生?」
「す、すみません!」
パーサーは慌てて敬礼するとイアンは眉間の皺を更に深めて敬礼の時には手の平を見せるなと注意した。
「マルセイいや、パーサーだったかな。貴様は今、軍服を着ている。それが一時的なものであっても、着ている以上は軍人として貴様を扱う。良いな」
「イッ、yes、sir」
そこまで言ってイアンはハンスに向き直り、右手を差し出した。
「久しいな、ベルメール」
「イアンの旦那。お久し振りで、あまり甥を苛めないで下さいよ。そいつはウィルのお気に入りでも有りますからね」
「ハン。ワシには関係無いな。まぁ、しっかりこいつを目的地まで連れていってやるとウィルソンに伝えておけ」
お互いに握手を交わして、イアンは立っているパーサーに目を向けた。
「何をしている?案山子の様に立っているだけか?そこのゴーレムに自分の荷物をあの船に運ばせて、貴様は私の荷物を持っていくんだ。荷物は海軍事務所に置いてある。さあ、行くんだ」
「yes、sir!」
駆け足だとイアンに言われてパーサーは慌ててクラーディに指示して事務所の建物に走って行った。
「旦那」
「心配するな、彼らは私が守る。ベルメール、貴様はしっかりウィルソンを助けてやれ」
ハンスはよろしくお願いしますと頭を深く下げ、イアンは敬礼して返答した。