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The Golem   作者: ひでくん
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ベルメール

 カタカタカタとリズミカルな音を響かせ、石畳の道を進んでいく。

 二体のホースゴーレムの陶器製の足のカチャカチャという音が重なって何とも眠くなる音楽になっている。

クーペと呼ばれる小型の狭い馬車の中で二人の乗客は向き合って座っている。

 一人は個人馬車のクッションに慣れていないのか、仕切りに座り直したり窓の外をチラチラ見たりと落ち着きが無い。

 もう一人というより、一体は静かに一ミリも動かずにじっとしている。


「お客さん、到着しましたよ」


 御者はメモの住所近くに来たことをパーサーに伝えた。


「ああ、わかった。・・・なぁ、本当にこの付近で合っているの?」


 窓から覗く、風景はパーサーが想像していた陶器を焼く煙や金型に溶かした金属を流し込む煙も立ち込めておらず、ショーウィンドーに流行りのドレスや装飾品を着こんだwaxwork達が通行人に向かって色々なポーズで商品をアピールしている風景があるだけだった。


「はい。メモではこの付近ですよ」

「わかった。ちょっと、待って。クラーディ、この辺りで間違いはないのかい?」


 パーサーはクラーディに問い掛けるとクラーディは大きく頷いた。


「そうか、わかった。なぁ、ここで降ろして」

「あい、わかりました。『止まれ』」


 御者の号令でホースゴーレムはカシャンという音と共にピタリと停止した。

 パーサーは馬車から、降りて手を差し出してクラーディの補助をしてやった。


「坊っちゃん、私は付近で待機してますよ」

「坊っちゃんって、僕はそんな歳じゃない!」

「これは失礼しました」


 まったく本当に失礼だなと憤慨しているとクラーディがパーサーの袖を引いて来た。


「どうした?」


 見るとクラーディは一件の店を指差している。


「えっ?まさか、ここが!?」


 クラーディの指した店にパーサーは驚きに眼を見開いた。

 店の看板には『ベルメール写真館』と書かれていた。











 カランカラン。


 錆び付いた扉の鐘がなり、パーサーとクラーディは店の中に入って来た。

 中は、物があちら此方に散乱していて唯一、受付と表示されたカウンターの周りだけが片付けられている。


「すみません。誰かいますか?あのー!」


埃っぽい店内には人気はない。

可笑しいなと思いつつ、パーサーは奥へと進んだ。

すると、二階からごそごそと音がしてお客かと声が聞こえた。


「ウィルソン教授の使いで来ました。パーサーです。」

『ウィルの所の奴か、待ってろ』


 二階から低い男の声が聞こえて数分後、奥の階段から一人の男が降りてきた。

 しわくちゃのシャツに無精髭の目立つ中年の男だ。


「はじめましてパーサー・フロイツです。貴方が教授の共同研究者の片ですか?」

「共同研究者?ハッ、そんなんじゃねぇ~よ。俺はハンス・ベルメール。まぁ、見ての通りの写真家兼、芸術家だ。よぉ、クラーディ。久しぶりだな」


 ハンスが親しそうに右手をあげるとクラーディは会釈した。


「それじゃ、物を準備してくるから待ってろ。ああ、もし暇だったら俺の作品でも見てろよ。カーテンの奥にある」


 そう言い残し、ハンスは再び二階へと上がって行った。


「なぁ、クラーディ。あのハンスって人は君の制作に関わっていたんだよね?あの人はラビなのか?」


 分からないと言った感じにクラーディは首を掲げた。


「何だか、よくわからないな。まぁ、良い。君のパーツを持ってるみたいだし、待っていよう。そう言えば、作品があるって言っていたね。せっかくだから、見てみようか?」


 パーサーの提案にクラーディは後退り、絶対に嫌だと言うように首を横に振った。

 まるで、本当に感情があるみたいな動作に改めてクラーディの命令文はどうなっているんだろとパーサーは思った。


「わかった。じゃ、そこに居てよ。行って来る」


 パーサーは奥に行き、カーテンを開けた。


「ヒッ!」


 開けた瞬間、眼前に広がる光景にパーサーは思わず腰が抜けそうになってしまった。

ハンス・ベルメール、史実の人物です。人形写真家で有名な人。

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