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最弱魔王のポーカーフェイス  作者: ねこのきもち
1章 魔王から魔王へ
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魔王の秘密⑦ No.33〜36

——うううっ。やってしまったものは仕方ない。てか本当にこのカルスってやつは本当に魔王なのか……。


 ちらっとカルスに目を向けると、ニヤニヤと笑っている。その凶悪な笑みにルークは顔には出していないが震え上がっていた。


——こ、こわっ。ま、魔王っぽい……のか?


 ルークは当時ビビりであった。今もビビりではあるが。だが、この時ルークは絶対に恐怖を表情には出さないようにしていた。


——ポーカーフェイスだ。ポーカーフェイス!!相手に本当の自分を見せたら負けだ!!


 ルークは自分に言い聞かせる。 相手に自分の恐れがバレると、カルスが興味を失い勝負を放棄するかもしれない。


 其れはルークにとって悪い事ではないが、殺されないという保証も無い。ましてや自称魔王。魔王というのが嘘だとしても自称するだけ、実力はある筈だ。


 本物かもわからないようなやつに殺され、無駄死にはごめんだとルークは内心独りごちる。


——この状態だと、瞬殺。


 ルークはごくりと唾をのむ。


——勝負だと、『アレ』を使わない限り勝つ可能性はゼロ。


 心臓の鼓動はかなり早い為、深呼吸をし早く脈打つ鼓動が遅くなるよう、リラックスする。 手がないわけではないができれば使いたくない。この力を使えば後がない。


 ルークが此れ程弱い魔物なのに、生きる事が出来たのもある力があったからだ。だが、力を使っても倒せるか分からない。


「お前、魔物だったの?」


 目を丸くするカルスだが、直ぐにまたニヤニヤと笑い出す。


——本当に面白い奴だな。予想を裏切ってくれやがる。


「まぁ、人間だろーが魔物だろーがどっちでもいいや。とりあえず、此処では戦えない。後々家臣にどやされるからな。外に移動するか」


 場所を替えるという提案にルークも頷く。ここで戦えば他の魔物も巻き込みかねない。


 また、家臣にどやされるという発言からカルスは負ける事がないとおもっているのは明白で、ルークにはその油断が実に有り難かった。


 だが、最後の言葉にルークは眉を寄せた。


「外?」


 と思わず声に出してしまっていた。


「あぁ、門の外だ。この都市を破壊したら流石の俺も忍びないからな」


——どんな戦い方するつもりだ。


 ルークは思ったが口にはしなかった。上級どころか終焉クラスの魔法を使うのだろう。


——魔法の強さは大まかに分けて下級、中級、上級、天級、終焉、神級があるけど……都市を破壊するとなると天級以上……。


 そう思うと確かに魔王だという信憑性は増してくる。ルークはさらに気が重くなった。 そして、2匹は無言で門の外に出る。カルスが前を歩き、ルークが後ろについていく。


 カルスは自分の腕をチラチラと気にして見ていたが、門をぬけてもなにも起きないと分かると、ホッと安堵した様子だった。 ある程度、門と都市を囲む壁から離れた広い場所に着くと、カルスは足を止めルークの方を振り向いた。


 ルークも足を止める。カルスとルークの間は5メートルほど。ピリピリとした空気が漂う。


 ルークの頬を汗が伝い、自分に殺気が向けられていることを自覚する。


——さっきと、雰囲気が全く違う。


 先ほどのカルスも凶悪な魔力を放っていたが、比べものにならないほどの禍々しい魔力が放たれ、2匹の空間を埋め尽くす。


 其れは明らかにカルスが唯の魔物ではない事を示していた。 カルスが身を隠すために、着ていたマントを投げ捨てる。


 カルスの服は確かに人間の貴族のように豪華な刺繍がなされており普通の魔物が着れるものでは無さそうだった。 名剣なのだろうか、ルークが見た事ない美しい剣が腰には差さっている。


 まさに魔王と呼んでも過言ではないほど、今のカルスは存在を確固なものとしていた。


——本当に魔王だったんだ。


 その時、ルークは本当に認めさせられた。カルスが魔王だという事を。


——ダメだ。相手の雰囲気に飲み込まれるな!!


 ルークは唾を飲み込むと、戦いには邪魔なマントを外し地面に落とす。 ルークはぶかぶかのシャツとゆったりとした部屋着のような服装で、魔王と比べると、ザ庶民という服装だ。


 しかも武器は、簡素な装備しかしていない。 魔王のような美しい剣も無い。

 あるのは少し刃渡りの長いナイフの魔具、煙が出て姿をくらます事ができる魔具など、戦闘の攻撃としては心許ない。


 ルーク自身は、攻撃に魔具を使うつもりは無かったのだが。


——一発で決めなければならない。


 ルークは魔王を睨みつける。

 内心、生まれたての子鹿の気分だが、ここまできたらもう覚悟を決めるしかない。


「まぁ、手加減はしないが最初はハンデをやる。この姿で戦ってやるよ」


 魔王カルスは余裕の表情でルークを見下していた。だが、ルークにとってそれは好都合だ。


——勝てないと思っている。


 其れは生まれ育った中で何度も見た表情。確かに実際、このままのルークであれば、勝てない。無残に殺されるだけだ。


——だからこそ、チャンスがある。


 油断。ルークの勝てるチャンスは唯一つ。カルスの油断に付け入ることだ。ルークは深呼吸をし、心を落ち着かせる。


 そして真っ直ぐにカルスの目を見た。


「それでは始めましょう」


 という言葉とともに魔具を投げ捨てた。魔具が光を放ち煙があたりを包む。カルスとルークの視界は煙によって分け隔てられた。


「なんだ?かくれんぼか?」


 カルスは辺りを見回す。一瞬にして広がった煙はかなりの範囲を覆っていた。


——思ってたよりバカなのかあいつは。


 カルスは呆れ、直ぐに魔力感知を行う。

 『魔力探知』、其れはどんな魔物でも使う事ができる能力で、辺りの魔力を探る事が可能だ。


 但し魔力の場所を探るだけなので魔力の大きさは分からない。


——探知の魔法使ってもいいが、あんまり効果変わんねぇしな。


 探知魔法は魔力感知より早く、正確に魔力を見極める事が出来る。魔力の大きさも分かるのだが、習得している者は多くはない。

 何故なら、魔力感知で十分事足りるからだ。相手さえ感知できれば魔物は強力な魔法で相手を殺せる。


 だからこそ、探知魔法は魔物にとってお蔵入りの魔法で、カルスは其れを使う事が出来るが頻繁に使う事はない。


——目くらましなんて、知能の低い魔物しかつかえねーだろ。魔力感知で充分。


 場所は直ぐに特定できた。 魔力が少ない為ぼんやりとしか捉えられないが、カルスにはそれで十分だった。


——ん?なんか違和感があるな……。アイツ自身の魔力なのか、これは……うーん。ま、いっか。


 カルスは己の違和感を無視してしまった。油断していたのだ。どうせ攻撃してきても避けられると慢心していた。

 相手が攻撃の魔具を発動した瞬間でも、避ける自信があった。


 実際、目の前で魔法が発動しても、カルスにはそれを避けることは可能だ。どんなに早い発動でも、カルスは今まで当たった事はない。


 もはや、チートいや、チータやんというレベルだ。双剣黒ずくめの人物並みである。


 しかし、その時は発動を察知する間もなく、 カルスは吹っ飛んだ。

誤字脱字など有りましたらご連絡お願いします

m(__)m

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