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最弱魔王のポーカーフェイス  作者: ねこのきもち
1章 魔王から魔王へ
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魔王の秘密④ No.18〜22

遅くなりました。これからは毎日更新を心掛けたいと思います(ノ ̄▽ ̄)

 魔王の規約


 魔王には絶対に守らなければならない規約が1つ存在していた。魔王城の魔物達が言っていた規約であり、カルスが魔王が交代したくても出来ない理由ともなっている。


『王の座につく魔王は、必ず前の魔王を殺さなければならない』


 これがその規約である。国が作られた時から存在し常に守られてきた重要な規約だ。


 これを破った者は存在しない。だからこそカルスや魔王城の魔王の部下、家臣は困っているのだ。


 カルス自身魔王を退きたいのははやまやまなのだが、魔王の座を譲るには自分は死ななければならない。

 部下の魔物は魔王を倒したい。だが手加減されたとしても倒せはしない。そのぐらいの力の差がある。


 カルス自身はそんな昔の規約守る必要はないと考えている。


 大体、魔物同士の戦いはどちらかが死ぬまで続けられるのが常であるため、この規約が誕生したのだとカルスは考えていた。


 だから規約等は如何でも良いと。


 だが、カルスが唯一恐れている事が1つある。先代の魔王が死ぬと同時に新しい魔王へ移動するこのイバラの刺青だ。この刺青、カルスにも解けない魔術が組み込まれている為、どうしても消えない。


 魔法ではなく、魔術なのもタチが悪い。魔法のような構造が簡単なものではなく複雑な形式が混ざった魔術は解くのが難解な上にイバラの刺青は完全に同化し、魔術の痕跡すら詳しく調べなければ分からない。


 そして、この刺青がどんな作用をもたらすかも不明なのだった。


「今日から、俺、魔王やめます!」


 という勝手な事も出来ないからこそ、今の国の現状は存在していた。

 そして、カルスは10年間、魔王をやって分かった事がある。


 それは、魔王ってかなりつまらないという事だった。国の状態が良いと、かなり良い暮らしが出来るが悪いと、私物(綺麗なオネーチャンや酒)さえなくなってしまう。


 しかも、じっとしている事が多い。魔王自体は命令するだけで動く事は殆どないのだ。前の魔王の様に世界を支配しようとするのならまだしも国の維持だけなら魔王はいるだけで十分。


 カルスは世界を支配したい訳ではない。唯面白い事を見つけたいだけなのだ。だが今の魔王の座には面白い事が全くない上に行動に制限すらある。


 カルスを苦しめられているのはイバラの刺青だけではなく、自由の少なさだった。カルスは元々、土地を転々としてきた魔物であるため、10年も同じ土地にいるのは初めての体験だった。


「思ったよりつまらなかったな。魔王ってのも」


 カルスはこそこそと隠れるように、ある方向へ向かう。暫く歩くと、大きな門が姿を現した。外に通じる門である。


——やっぱり、逃げるが勝ちってやつかな。


 イバラの刺青は心配だったが、そんなことよりも自由の少なさの方が死活問題だった。それぐらい、カルスにとって城はストレスだったのだ。たった10年で逃げ出したいと思う程に。


 そんな、考え事をしていたからだろう。目の前からくる者とぶつかったのは。

 ドンと、前から来た者とぶつかり、カルスとぶつかった者は互いによろける。


「いってーどこ見て……」


 カルスは相手の姿を見て、口をつぐんだ。その姿が自分と同じ人の姿のようだったからだ。

 顔まではフードを被って見えないが体格は人間の少年もしくは少女のようだった。


 多くの魔物は完全な人型にはなれない。頭にツノが生えたままだったり、尻尾が生えたり爪が長いままだったりと。


 だが、それが見えないのだ。マントで身体を隠している為、中は分からないが、雰囲気も魔物とは言い難い。カルスは目の前の者が魔物とは違うことを直感的に感じ取った。


——人間なのか。だが、人間とも違う……。


 カルスはじっと相手を見る。


「すみません。急いでいたもので」


 目の前の者は謝りカルスの横をすり抜けて、突っ立っているカルスとは反対側へ向かう。声の高さは中性よりだったが、少女ではないようで、恐らく少年だろうとカルスは検討をつける。


 そして、カルスは何故かニヤリと笑みを浮かべていた。


「おい」


 と、その少年を呼び止める。少年は怪訝な様子で振り返りカルスを見た。


 いつもなら、そんな事はしない。しかし、面白くなるような予感がしたのだ。カルスは自分の直感を疑わなかった。


「どこに行くんだ?」


 相手はしばらく黙っていたが、


「何故あなたに言う必要があるのですか?」


 と逆に質問された。


 まぁそれはそうだろう。如何にもだ。


 いきなり知らない相手に何処へ行くなどと聞かれれば、それは不信を抱くのは当然だし、言わないだろう。


「いや、ぱっと見人間に見えるからな。こんな国になんの用かな、と」


「…………」


「あと、お前からは魔力が感じられないのも理由の一つだ。魔力感知で引っかかるギリギリの魔力なんて魔物じゃあり得ない。人間の魔術師でも其処まで魔力は少なくないし、かと言って商人や奴隷って訳でも無さそうだしな。そんな普通の人間みたいな奴が魔具を持ってうろついてたら俺も気になる」


 少年は息を飲んだ。


 フードで隠れて顔は見えないが驚いているのが手に取るようように分かり、カルスはくっくっと笑う。

 少年はさっきとは異なり警戒心をむき出しにした。


「お前、何者だ?」


 ときつい口調で問う。


 そしてカルスは偉そうにふんぞりかえり……。


「俺は魔王だ!」


 と自信満々に宣わった。


「え?」


 少年は一瞬の沈黙後あまりにも自分の考えていた答えとかけ離れていたので聞き返してしまった。一方カルスは少年が聞こえなかったのかと思ったのかもう一度……。


「俺は魔王だ!」


 と再び自信満々に宣わった。


「は?」


 再びあり得ない返答が返ってきた為少年は思わずその言葉を口にしてしまった。

 カルスと少年の間に冬の風以上の冷たい空気が流れ去った。


 この時を振り返り、現魔王の少年はこう言った。


『あの時は、キチガイに会ったと思った』と。


 仮にも、国の王が何の用事でこんなところに1匹でいるのか。フードをかぶり人間の様な姿で歩き回る魔王……。事実だとすればなんとも危機感のない魔王である。今や国民から殺意を向けられているというのに。


 カルスが魔王だという事は事実ではあったのだが。


 呆然とした様子からハッと気づいた少年は顔を逸らす。


「……あの、もう私行くので……」


 そさくさとカルスから距離をとる。


「おおい!無視かよ!てか無視すんなよ!」


 カルスは逃げる少年を追いかけ口元が引きつっている少年を捕まえた。少年はカルスが掴んだ肩から手を振り払い、顔を見られないよう下を向いた。


「いや、私、虚言妄想癖のある人とはちょっと話したくないというか話せないというか……」


 としどろもどろに答える。


「虚言じゃねー! 俺が魔王だって言ってるだろーが!」


 大声を張り上げるカルスに通行していた魔物達がなんだなんだと視線を向ける。その魔物達の様子に少年は舌打ちをすると、再びカルスから背を向け歩き出した。


「おい、お前、どうしたんだよ!」


 後を追うカルスにイライラした口調で少年は返す。


「あまり目立ちたくないんですよ。重要な用事でココに来ているもので……あまり目立つと後々大変な事になりますし」


 スタスタと歩く少年の背後をカルスはゆっくり歩いて追う。背丈のせいか歩くスピードは違うのに距離は離れない。


「……」


「……」


「っつ! というか、なんであんたついてきてるんですか!」


 再びイライラとした口調で少年はカルスに話すと、カルスはくっくっくと笑った。少年は足を止め、合わせてカルスも足を止める。


「なにがおかしい?」



誤字脱字ありましたらご報告よろしくお願いしますm(_ _)m

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