暗殺者×守護者
最近ラノベを大人買いしました。
ラノベばっか読んでる五月病予備軍。
「妖刀ってのは知ってるか?」
ヤツはいきなりそう聞いてきた。
今はエドから出て一時間の街道である。
トウカイドウ、と言うらしいが、それはさておき。
ヤツ、とは共に護衛をしているサイトウとか言うこちらのサムライのことだ。
今、私達はブルボン公護衛のため、こちらの国の旅人の格好をして、つまり変装して歩いている。
ちなみにブルボン公は馬に乗られている。
「おい、聞いてんのか。」
「知らんな。なんだ、それは。」
「だろうと思ったぜ。」
ヤツはあきれたような口調でそう言った。
正直言って、私はヤツのことを快く思っていない。
それはヤツも同じようだ。
しかしヤツは見たところ相当な手練れであるようだし、腕に対する疑問はない。
気に入らないのはヤツの態度のことだ。
ヤツは普段じっと黙っているかと思いきや、こちらの隙を突いたように話しかけてくる。
何を考えているのか、さっぱり分からない。
その上、ヤツはずっと剣の柄に手を置いている。最初はそう言うしきたりなのかとも思ったが、町で人を見たところどうもその様ではなかった。
まるで剣に取り憑かれているかのような、そんな様子にさえ、見える。
ちなみに、ヤツは左利きらしく剣は右に差している。
「あんたらの国にも、どうやら似たようなモノがあるらしいが。」
「ああ、聖剣・魔剣のことか。」
「いや、名前まで知らんが……聞いた話によると、それは能力を宿した剣らしいじゃねぇか。」
どこから聞いたのだか……開国したとはいえ、この国ではまだ我々の情報は貴重なはずだ。
そんなこと、気にしても仕方ないのだが。
「で、それがどうした?」
「妖刀は、同じ摩訶不思議な剣なんだが、また別物だ。妖刀は、持ってるヤツの能力を引き出す剣、だ。」
能力を引き出す剣?
「こいつもそうだ。と言うより、これからの敵はほとんどその妖刀を使ってやがるから、気ぃつけたほうが良いぜ。」
「そこまで気をつける必要があるだろうか?確かに鬼族は身体能力が高いと言われているが、そんなに差はないはずだ。私だって聖剣を装備している。油断は禁物だが、そこまで特筆すべき点は――」
そこまで言って、私は黙らざるを得なかった。
圧倒的な存在感。
体が、魂が、精神が、存在が、私の全てが全方向全方面から圧迫されている。
圧倒されている。
それはそう、まるで……
「蛇に睨まれた蛙。」
まさしくその通りだ。蛇に睨まれた蛙のように原始的な、遺伝子に植え付けられた恐怖だ。
と、突然それが消えた。
「と、これが妖刀の力だ。俺の妖刀は〈罪刀・鬼神丸〉。効果は威圧能力の増大だ。まあ、ある程度慣れたヤツなら効き目は薄くなるがな。」
「い、今のが妖刀の能力……いや、鬼族の潜在能力か。」
「ああ、そうだ。ま、どの能力が引き出されるかはその刀によるがな。ちなみに妖刀の能力発動時には――」
額のあたりを指で指す。
「この辺に、角が出る。女が一本、男が二本だ。」
それで見分けろ、といことか。
「俺の足手まといになってもらっても困るからな。」
……最後の一言が余計なんだよ。
そのまま何事もなく、旅は進む。
夕方になり、旅籠に入った。
「さて、まずは一安心……というわけにもいかないのだろう。」
「まあな、むしろここからが本番だ。」
そう、ここからは夜の時間。
この国の暗殺の夜の始まりだ。
……。
…………。
「――来たぞ」
言うと同時に私もヤツも剣を抜く。
「〈不壊剣・デュランダル〉、聖力解放!」
「夜を吸え、〈罪刀・鬼神丸〉。」
発動と同時に私の体を白の全身鎧が包む。
ヤツも服装が変わっている。これは?
「ウチの隊服。あと、手甲、脛当て、額当て、鎖帷子だ。柔な剣筋じゃ斬れやしねぇよ。」
見たところ、チェーンメイルのようだ。
「さて、外に出るぞ。そっちの殿様にも伝えとけ。」
「分かった。」
室内戦では不利だ。こちらは乱戦になると守りにくい。
ブルボン公に一言、外に出ないよう言ったら、階段を下りて玄関の戸を思い切り開ける。
すかさず斬りつけてくるが、そんなもの――
「効かんな。」
デュランダル第一の効果『見えざる加護』。納められた聖遺物の力で剣の軌道上に一定時間残る透明な防壁を作ることができる。
『見えざる加護』に剣をはじかれた暗殺者は明らかに狼狽を見せる。
「角が出ているな。この国の者か。」
ならば警戒しなければならないな。
「天誅!」
また違うヤツが斬りかかってくる。が、こいつ角が出ていない!?
と、思ったらいきなり角が出て加速。
この変速が想定外で追いつけない!
「おせぇよ、雑魚が。」
「っが!」
「サイトウ!」
一振りで決めた。確実に急所を仕留めている。
まさに暗殺のための剣だ。
「何惚けてんだ、次いくぞ。」
「あ、ああ。」
気を取り直して次の敵の相手にかかる。
「死ねや、雑魚共。」
「はぁぁぁぁぁぁぁッ!」
片っ端から敵を斬って斬って斬りまくる。
サイトウもその能力を最大限に利用し、動く敵を据え物にして斬る。
返り血に濡れたその相貌はまるで人食い狼のようだ。
「ふぅ、終わった。」
合計で七人。そこそこの数だ。それに、トリッキーな動きをする。
「死体は、どうすればいい?」
「その辺に転がしとけ。どうしても気になるならお前が自分で埋めろ。」
酷いのか、そんなモノなのか……。
まあ、死者に対する扱いとしては酷いのだろうな。
そんなことを思いながら、農家の女性に荷車を借り、死体を載せる。
ついでに埋める場所も聞いた。
「んなもん、あっちの山にでも埋めておけ。あ、でもその前に寺には寄っておきな。」
ふむ、寺……か。そういえばこの国は仏教を信奉する国だったな。
「おい、あんた。珍しいかっこしてるね。」
めずらしい?この服装はこの国の普通の旅人のものであるはず……。
「いや、服装じゃなくて顔だよ。白子みたいに白い肌だし、金髪、青い目。むむ、これは爺さんから聞いた伴天連の特徴と同じ……むむむ?」
「し、失礼する!」
「え、あ、おい!……寺はあっちだぞ!」
……恥ずかしい。
新学期が来ると思うとつらいです。
一生春休みが良いなぁ。フィニアスとファーブみたいな。
HawaiiFive-Oみたいな警察にあこがれる中二病でした。