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Ⅶ 獣

獣の目撃情報が多いのは、やはり森だった。


ジェールは手当たり次第、森の動物へ火縄銃のようなものを射っている。


音におびえた野生動物は草葉に隠れたり、遠くに逃げたりして、目で追うのも一苦労。


近くに行かなければ判断つかないが、動いているのでほとんど当たってはいない様子だ。


メルドラが負けじと、ハンドガンを発砲。

明らかに狙いを決めずただ射っているため、無駄弾である。



「また弾切れするぞ」


この銃は日光に当てることで弾が増えるらしい。

中に太陽の光を吸収する何かが入っているんだろうと俺は思う。


森には日光がないため、自重してもらいたい。


「ごめん…」

しゅんと、肩を落とした。

メルドラはため息をついてから、ゆっくりと歩きはじめる。


ガサリ――――。


草むらから中型の動物が飛び出してきた。


動物はメルドラ、セッカの眼前にまでせまる。


「えい!」

メルドラが発砲。


「はっ!」

セッカが眼前に迫った獰猛で血走った獣を杖で斬る。


「やったか!?」


ぴくりともしない。


しかし、銃創じゅうそう切創せっそうからは血が流れない。


変だと考えていると、獣は起き上がった。


俺達は、その光景に目を疑う。

頭部に弾丸の跡、左肩のあたりに痛々しい傷はついているが、やはり血は流れない。


「とにかく…こいつが依頼のターゲットだよな」

「さあ?ワカリマセーン」


いちいち腹立つなこいつ。

見てわかるだろ。あれはヤバイ化け物だってことが。



「殺しても起き上がってくるなんて…」

「初めて見た」


なんであれ、あれを倒して依頼を達成しなければ。


あれを放置したらこれからもっと罪のない人間が沢山死ぬ。


これだけ被害が出ていても兵士は民を助けには来ない。


なら俺達が、何とかするしかないってことだ。


どのみちこいつを倒さないと、生きて帰れないだろうからな。


「よし、全員で総攻撃だ」

「どうするの?」


まず、メルドラが目を狙――――


「目をうつの?」


だが、動物は大体視力が低い。



「目を狙ってもらおうと思ったが、動物は目が悪いし野生のカンで更に暴れる可能性がある」


かと言って攻撃しないわけにはいかない。


撃ちまくって動けなくするか…それでも俺とメルドラだけで銃が足りるだろうか。


即効的な威力ある銃を使う奴、丁度ジェールがいたが、あいつには協力をあおぎたくない。

敵対しているからだ。


メルドラと共に、暴れる化け物を射つ。


いつの間にか、さっきの傷が治っている。


つまり、再生力があるのか。


こうなったら遠距離で攻撃を仕掛けて、もっと弱らせてから近接攻撃を仕掛けることにしよう。


簡単だ。銃で完膚なきまでうって、動けなくなったタイミングで近接のセッカ、カツと全員で潰す。



能書きでは淡々と思考をめぐらすことができた。



―――さすがにこれは人としてまずいだろう。

できれば何度もいたぶるんじゃなく、サックリ済ませたい。


だったらどうするか、縄のようなものがあれば、動けなくなるように拘束できる。


そう都合よく、縄があるわけないか。


「誰か縄もってないか」

「火縄銃の縄ならあるよ」


メルドラがジェールを指差す。


「短すぎでしょ…これじゃダメよね」

セッカが包帯を持っていた。


これは長さがあっても強度が足らない。


だが、これに組み合わせて何か長いものにすれば――――


そうだ植物のツルがあるじゃないか。


ここは森、周りに長いものが沢山―――――



「ねえよ!!」


草と葉っぱ(リーフ)型の葉っぱしかない。

ようするに葉っぱしかない。


「どうしたの!?」

メルドラが化け物の背後を撃ちながら、化け物がこちらへ向かってくるのを防いでいる。


やはり、視覚よりも感覚、音に反応していると見て間違いない。


「なんか方法はないか―――」


「攻撃してだめなら、攻撃をしなければいいんじゃない!?」

「それじゃ本末転倒だ…」


どういうわけか、いまは敵が攻撃をしてこない。


いつ起動再開するか、もうさっきの方法でいくとしよう。

理論だけなら成功する自信はある。

実戦でうまくいくだろうか。


―――――もういい、とにかく攻撃するのみだ。


「メルドラ!いくぞ」

俺は傘の持ち手を獣に向ける。


メルドラはカチャリ、両手に銃を構えたのを確認し、銃撃を開始した。


「カツ、セッカ…お前らはあいつが弱ったのを見計らって近くで軽めに攻撃してくれ」


「解ったわ!!」

「おう!」


獣の動きが弱る。


必要以上に傷つけたくない。

この獣に家族を殺された人間のことを考えると、なんとも言えない感覚がある。


それでも、あの獣をボコボコにすることはしたくない。

見逃すことはできないが、たとえ殺しても、それを楽しむような趣味はない。



「砂に埋めろ!」

木に縛り付けられないなら、土に埋めるしかない。


「え!?砂!?」

「埋めれば出てこられず窒息死するだろうからな」


獣は出てこなくなった。


これで依頼は解決――――。



そう思っていると、茂みから、俺と同い年程の少年が現れた。



「お前ら…許さねえ……」

憎しみのこもった目で、こちらを睨む。



少年はまるで獣のような唸りを上げる。


「おっおい、落ち着けよ!」

カツは焦りながら、少年をなだめようとする。


「!」

少年が目を見開き、更にひきつった顔をして、黙った。


獣を攻撃したのは奴が沢山の人間を襲ったからだ。

なのに少年はなぜあんなに、激昂しているんだ――――。

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