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Ⅱ 銃


更に奥へ進むと、人がいた。

身の丈程の斧を持ちながらほどほどの筋肉、中肉中背の男。


「お前らもオレと戦うのか?」


振り向く男。だが、こいつの顔、をどこかで―――――


男が斧を後ろに投げ、俺達のほうに突進してきた。


「レツじゃねーか!!」

「……お前、カツか?」


こいつは同じ村で育った幼馴染だ。

数年前に両親が夜逃げし、こいつは孤児院へ引き取られた。

それ以来、久々の再開のようだ。


「久しぶりだなー!」

「そうだな」


昔からテンションが高く、見ているだけ疲れるタイプだったが、相変わらず元気のようだ。


「ねえ二人は知り合い?」

メルドラは俺にとカツを交互に見る。


「村で仲がよかったダチだ」

「レツ~そのこ、お前の彼女か~?」


カツはニヤニヤとはやしたてる。


「ちがうけど」

「ちげーよ冒険仲間」

大体メルドラとは会ったばかり。


だが事情を知らない側からすれば、若い男女が二人で連れ立っている姿は端から見れば恋仲には見えるだろう。


しかしこいつも色恋沙汰に興味を持つ年になったか、10年は怖いな。


「久々に戦うか」

「さすがにデカ斧相手じゃ不利だっての」


「ねえ、この動物って誰が…」

「この死骸か?オレが来たときにはこうなってた」


だが、ここにいたのはカツ一人、となれば動物を大量に殺したのはこいつの可能性が高い。


「本当にお前じゃないのか?」

「なんでオレがこんなことする必要あんだよ」


確かに食料でない動物を殺してもなんの特にもならない。


昔から戦士になりたがっていたカツなら力くらべで人間と戦う筈だ。


「まあ犯人探しはどうでもいい。

カツ、お前ヒマなら俺達と旅しないか?」


せっかく見つけた強力な仲間候補を、逃がしてたまるか。


「なんだかしらんけどいいぜ?」


「疑われてたのにあっさりすぎない?」

「昔から細かいことは気にしないやつなんだよ」

「とにかく胸くそわりーこっから出ようぜ」


「クククク…森から出られると思うな」


後ろから気味の悪い声が聞こえた。


「なんだいまの」

「気のせいじゃないの?」


二人には聞こえなかったようたが、たしかに俺は聞いた。


鈍い痛みが、肩に何かが刺さる。

血のついた杭が、足元に落ちた。


「レツ!?」

メルドラは俺に声をかける。


「大丈夫だ」

俺は自然治癒が早く、左肩についた杙創よくそうは、すぐに塞がった。


「傘殺しだな……クククク」

下卑た男が現れ、メルドラが即座に射つ。


しかし攻撃を受けながらも平然と笑っている。

アイツは俺を変な名で呼ぶ、もしかしなくとも、今朝の男の同類のはず。



「てめえアイツの仲間か、今日は客が多いな」あれは所詮、ただの木の杭、俺達の敵ではない筈だ。


問題は銃が奴の体に効かないこと。

なぜ、銃が当たらないのだ。

アイツは化け物なのか、血も流れていない。



「俺がまずアイツに攻撃をしかけるメルドラは援護射撃、カツはいざとなったらメルドラをつれて逃げろ」

「うん!!」

「わかった!!」


俺は敵の懐に入る。タイミングを見計らい、メルドラが銃撃。


「クククク…あたらんあたらん」


飛び道具がきかないならと、首をつかみ、窒息させることにした。


だが、苦しがる素振りがない。

そもそも息をしていないようだ。


であれば、こいつは傀儡、別の場所で操っている。

おそらくは近くに隠れている。


向こうに見える木の上に、気配があった。


傘の円形パーツを広げ、ブーメランの要領で上へ垂直に投げつけた。


ブーメランは当たらず男はそのまま、避け落下した。


当たらなくても、どうせ倒すのだから構わない。



「わしはヨク、真帝の配下が一人」

「真帝?なんだそれは」


下卑た爺は立ち上がり、傀儡を動かした。


「隠れなくていいのかよ老いぼれジジイ」

「クククク…若造が」


困った。俺に年寄りをなぶり殺す趣味はない。


だいたい俺を殺そうとするからその相手を殺すだけなのだ。


「レツ、ごめん弾切れした」


「ジジイ、いま引くなら見逃してやるけど、どうするんだ」

「生き恥はさらさん!!化け物め!」それは俺の傷の治りが早いことについてだろうか。


「あ?何いってんだジジイ。これは神のご加護だろ」


傘の持ち手からスピアを引き抜く。


このまま頭に突き刺せる位置だが、衝動にまかせて殺すのはいけない。

あと一歩で踏みとどまる。



「フフフ…」

ベールを巻いて身体を隠した背の高い女が現れた。


中には中華ドレスのようなものを着ているのがみえた。

しなやかな白い足を、スリットから覗かせ、悩殺する気だ。主にカツを。


「娼館から抜け出してきたのか?」


女はただ笑うだけだが、ジジイの元へ歩く。


「お前は…!ジョク皇…」

この女はジョクというのか。

しかし、ジョクがジジイの息の根を何らかの方法で止めた。


ジョクは俺ではなく、メルドラに狙いを定める。


ジョクの武器はフワリとした羽のついた扇子。

だが、ナイフのように輝く何かが仕込まれていた。


あいつはいま武器が使えない。

カツは何を―――――


鼻血を出して倒れていた。


「くそっ!!」


「は!」

キィン。 どこからともなく現れた赤茶毛の少女。

少女は、赤い石のついた木製のようなロッドで、ジョクの扇子をしのいだ。


こいつ、何者だ―――。






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