13 費える
バクは手当たり次第に地面や壁を爆破させていく。
俺は後退しつつ、階段をつかって下へ降りて、バクを外で倒すことにした。
「お前、あんまり爆破させすぎると、瓦礫にうもれて死ぬぞ」
「はっ!そうなんだなぁ!」
三階だったためか、少し長く追われた気がしたが、なんとか城から出られた。
「いつのまに外なんだなぁ!?」
「気づいてなかったのか」
「レツー!!」
メルドラが城の反対側から手を降りながらこちらへ走ってくる。
カツやジェールは一緒にいるがセッカは――――
「……」
向こうからなぜかとてもげっそりしたセッカが歩いて来た。
「まあ全員揃ったことだしいいか。メルドラ、ジェール、俺があいつに飛び出したら射撃を頼む」
「うん!」
「ワカリマシタ」
「カツ、セッカ…お前らは下がってろ。あいつに触れられたら爆発するからな」
二人はしぶしぶ頷いた。
「こそこそしてるんだなぁ?」
「…バク、俺達は外に出た。この意味がわかるか?」
「わかんないんだなぁ」
とぼけるバク。
「お前を遠慮なく攻撃できるってことだよ!!」
俺が刀を抜きバクに向かって斬りかかる。
素早く反応したメルドラ、ジェールが銃で援護する。
手当たり次第に切り刻む。
「アバババ!?」
「ちっ!!脂肪が邪魔で刃が入らねえ!!」
なんどやっても滑る。まずはこの油の塊をそぎ落とすしかないか。
「もうおこったんだなぁ!!」
「ち!!」
バクに触れられ、爆発、右肩を痛めた。
「レツ――――!!」
メルドラがかけよろうとするが、手で制した。
たしかに痛いが、この程度ならすぐに治る。
「利き手をやってやったんだなぁ……もう反撃できないんだなぁ」
バクが下卑た笑いを始める。
「それはどうかな?」
俺は傘を左手持ち変えて、銃口をバクの口にむけた。
口の中には油はない、間違いなく銃は当たる。
「あばばばば」
「銃くらい利き手じゃなくても使えるからな……」
こいつの敗因は、両腕に怪我をさせなかったことだ。
「真帝さま……おいらやくにたったかなぁ」
最期の瞬間―――――
バクはわらっていた。
―――――――――――
「レツ……もう大丈夫なの?」
メルドラが慣れない手つきで包帯をまくが、ついた傷はもう目立たない。
「ああ」
「うかない顔してどうしたの?」
メルドラが俺の顔を覗きこんだ。
「……俺の怪我、治るのが早いと思わないか?」
こいつは俺の怪我が治ったことに、驚いていない。
気づいていないだけなのか、あえてそう見えないよう振る舞っているのか――――。
メルドラが去ってから、俺はそのまま、ベッドで仮眠をとる。
―――――――――――
『まってよ~お兄ちゃん』
ふわりとした薄い茶髪をゆらしながら、あどけない少女は、俺の後ろをおいかけてまわる。
リシルだ。何度がおいかけても、俺においつけないでいる。
『走ると転ぶぞーー』
どうしたことだろう。
振り替えると、リシルが俺に背を向けていた。
そのまま、向こうへ走りだす。
俺は追いかけるがリシルには追いつけない。
なんで、距離が縮まらないんだ。
さっきとは正反対に、俺はリシルを追い続けた。
―――――――――――
『ねえおにぃちゃん…なんでわたしたちに
とうさんかあさん、いないの?』
強い雨のしたたり、曇り晴れない空。
人通りのない路地で、幼い少女は少年にすがった。
つめたく苛む雨、たった二人きり、助けはない。
『だいじょうぶだよ兄ちゃんが必ずなんとかする』
ボロボロに汚れた布を、少女に深く被せ、少年は手を引きながら、先の見えない世界を歩いた。
―――――――――――
――――少女は老婆とともに、森を歩いていた。
二人の周囲には緑葉が茂る。
『森の奥に、行ってはいけないよ……』
老婆は言った。
『どうして。わたしきになるわ、ばばさま』
少女は森の奥に、進みたいという。
『森の奥には災いが眠っとるんじゃ』
『わざわい?』
少女は深森の入り口を去るまで視線を奪われていた。
―――――――――――
帝都中央城――――――。
「首尾は如何ようである」
老いた男は、青年に問う。
「―――――は、無事、西城から回収してあります陛下」
青年は、皇帝の前へ出ると片膝をつき、淡々と告げた。
「わざわざ朕が出向いた甲斐もあったといふものよのう?」
皇帝は延びた自身の髭をなで、満足そうに語る。
「お脚を煩わせ、申し訳ございません陛下」
青年は頭を垂れた。
「フン、心にもないことを云ふのう……」
皇帝は口の端をつりあげ、青年をあざ笑った。
「して、贄の様子は、変わりないか?」
地下にいる贄の聖女、生き死にを皇帝はなにより気にしている。
儀式の日まで、死なせるわけにはいかない。と皇帝は語った。
「は、体調に不備はなく、供物の儀式に支障はないかと
其の他、お伝えするようなことは取り立てて御座いません」
皇帝は青年の言葉に、偽りはないと判断し納得する。
「―――近頃、あの娘の家族が、何やら嗅ぎまわっているようだな」
「は、それは……」
「知っていて黙認したか、初めから知らぬか、其れは問わぬ。しかし、仇なす者なれば殺れ」
「御意に」




