序
遅筆ですが、よろしくお願いします。
私の知人の間で、「変人だ」と評判のイケメンがいる。実際に、彼に会ってみると、変人どころか、とても魅力的な人物だった。私達はすぐに意気投合した。私は彼が今までどんな人生を送ってきたのかを知りたいと思った。そして、彼に話してくれ、と頼んでみると、快く承諾してくれた。私は彼に許可を取って彼の話を録音した。以下の文章は、それを文章に写したものである。
生まれたばかりの赤ん坊は、たいてい、可愛いというよりかは、グロテスクなものだけど、俺はとても可愛かったらしい。あまりに可愛らしかったので、俺を母から取り上げたナースは母の体液でぬるぬるの俺に、思わず頬擦りをしたそうだ。この話を教えてくれたのは叔母である。叔母はこの他にも幼い私を巡る様々なエピソードを教えてくれたが(醜い老夫婦にさらわれかけたとか、子供ができないせいで離婚させられた哀れな狂女にさらわれかけたとか)、その他のこともいろいろ教えてくれた。しかし、そのことは後で話すことにしよう。
(ここで私は残念なことを読者にお知らせしなければならない。彼の、美しい、大学生の叔母が彼にどんなことを教えてくれたのか、あなた方が知る機会はない。その話の部分を私は削除してしまったのだ。彼の数奇な人生をあなた方に伝えるために、私は通報されるわけにはいかないのである。)