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第81話未来への代償

 セレスと無事和解をし、俺達は来るべきカグヤとの決戦のために作戦を考えていた。


「私が調べたところ、確実に言えるのは私達三人だけの手ではどうにかなるような相手ではないという事です」


「いきなり絶望的な事を言うな」


 勿論俺はそれを理解してはいたけど、絶対不可能な話ではないと俺は思っている。


「策はある。ナルカディアだけが占拠されているなら、他の国に頼みに行けばいい」


「それが一番早い話だと思いますが、果たして上手くいくのでしょうか?」


「ココネを救出する時、ライドアが協力してくれたんだ。もう一度頼めばきっと、手伝ってくれるさ」


「ライドアが……私の為に」


 ココネの救出の後色々あって話忘れていたが、どうやらココネはその事実が嬉しいらしく、少しだけ微笑んでいた。俺がナルカディアに来た頃は、ほとんど人口が少なく周囲の国からも嫌われていた。

 それを一番に理解していたココネは、どれだけその事で苦しんだのかは俺には分からないけど、もしここから新たな一歩が踏み出せるなら、やれるべき事はやるしかないと思う。


「この国は確かに嫌われていたけど、俺達はそれを払拭できるくらいの努力をしてきた。それが一度でも報われてもいいんじゃないかって俺は思う。だから」


「私はケイイチの事を信じる。私達がもっと認めてもらうためにも、ここは一歩を踏み出す必要があると思うの」


「お二人の考えはご一緒なんですね。なら、私も信じます。まずはここから近い上に、既に協力の手があったライドアから向かう事にしましょう」


 その一歩は決して安全だとは言えないかもしれない。それでも俺達は進むべき道を進むしかない。大切な仲間を救うため、国を取り戻すため、そして未来へと歩き出すため。


 王国ライドアへの出発は明日に決行する事になった。


 ■□■□■□

 その日の夜、セレスが用意してくれた荷物をまとめ終えた後、明日の出発のために早めに就寝する事になった。俺とココネは同じ部屋、セレスは何故か気を使ってくれて別の部屋で寝る事に。


「こうやって二人でゆっくり夜を過ごすのも久しぶりね」


「そうだな。ここ最近ずっと色々な事が起きていたからな」


 とは言っても、ココネとこうして夜二人きりだなんて久しぶりな気がする。とは言っても、ルイヴァック島で記憶を取り戻した時も、こんな会話をしていたのでこれは気のせいなのだろう。


「そういえば、まだお前に謝っていなかったな」


「ん? 何が?」


「ココネの母親の事。本当は知りたくなかった事なのに、俺が勝手に解明しちゃって申し訳ない」


「いつかは……知る事だと思っていたから、今となってはそれでよかったのかなって思う。確かにあの時、私すごく動揺していたけど、お母さんの事を知れて少しだけ嬉しかった」


「そういえばほとんど記憶にないんだったな」


「うん……」


 でもまさか、あんな形で知る事になるとは思っていなかったはずだ。だから俺の中には未だに申し訳ない気持ちだけが残っている。


「ねえケイイチ」


「ん?」


「今更だけど元の世界に帰りたい?」


「何だよそんな突然」


「ほらケイイチにも家族は当然いるんだし、由奈ちゃんだって今回の件で辛い思いをしているから、きっとこの世界にいたくなくなるんじゃないのかなって」


「結婚までして何を言ってんだよお前は……」


 俺の事はともかくとして、由奈の事は一理ある。自分から付いて来ると言ったものの、彼女は今回の件で帰りたくなるのではないのかと考えていた。彼女には追っている夢があるし、まだまだこの先色々な選択肢がある。

 俺はというと、ココネとこの世界で婚約してしまったので、ナルカディア再建に力を入れていこうと思っている。


「今回の件が落着したら、由奈には聞いてみるよ。どちらにしても俺は帰るつもりなんてないけど」


「そう、よかった。その言葉を聞けただけでも私嬉しい」


「何だよいきなり」


「ねえケイイチ、ここからは真剣に考えてほしい事なんだけど」


「何だ」


「私の命が長くないって聞いたら、ケイイチはどう思う?」


「え?」


 突拍子もない質問がココネから出てきたので、俺は体を起こしてしまう。


「私のお母さんがそうであったように、その血を継ぐ私も同じ運命にあるのは間違いないの。それに私はこの前刻印の力を使ったから、寿命はもっと縮んだと思う」


「それって俺を助けるために、命を削ったって事か?」


「そう。でも決してすぐとかそういう話ではないけど、ケイイチはこれから先の未来を進んでくれるなら、覚悟だけしていてほしいの」


「どうして……。俺を助けるために、そんな事を」


「何を今更。元はと言えばケイイチが私に提案してきた事でしょ?」


「そうだけど、知ってたなら」


「断るわけないじゃない、馬鹿」


「でもな」


 もしこの先もココネの力が必要になる時があったら、俺は果たしてどうすればいい。これまで以上の戦いになるのに、俺は彼女に頼ってばかりで俺からは何も……。


「ケイイチ、大丈夫。何も怖がらないで」


「そんな事……言うなよ。俺が一番怖いのはココネ、お前を失う事なんだ。だからそんな事……言わないでくれ」


「ケイイチ……」


 結局この後俺は自分の答えを出す事はできずに、夜が明けてしまった。

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