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第72話歴史を伝えし者

『これは……全ての始まりにあたる物語の始まりです』


 目の前の景色に愕然としていると、突然どこからか声がした。


「誰だ!」


 辺りを見回してみるが誰かがいる気配がしない。


『私はこの物語を伝える者、とでも言っておきましょうか』


「この物語を伝える者?」


 一体この声は何を俺に伝えようとしているのだろうか? 


『あなたは長らく閉ざされていた歴史の一ページを開きました。つまりあなたには歴史を知ってもらう必要があります』


「長らく閉ざされていた歴史?」


(もしかして、あの本のことを言っているのか?)


 ふとあの本のタイトルを思い出す。確か『始まりの物語』と書いてあるとルナが言っていたけど、それと何か関係があるのだろうか。


「じゃあ今俺がいるここは……」


『そうです。ここは二百年前のルイヴァック島。まだ何もない更地ですが、時が進むにつれ少しずつですが形になっていきます』


「二百年前の……」


 一体どれだけの前の話なのか全く実感が沸かない。島にあった書物で少しはこの島の歴史を学んでおいたのだが、確かにルイヴァック島は何もない更地から島が形成されていったと記されていた。まだ島としての形もできておらず、周りには海すらない。果たしてこの状態からどうやってあの姿になっていったのかすごく気になる。


『あなたが知りたいのは、確か現世で起きている記憶喪失がどうして起きてしまったのか……ですね』


「どうしてそれを?」


『私には分かるんです。人がどのような想いを持ってこの本を開いたのかを』


「へえ」


 そんな会話をしている間にいつの間にか時が進んでいたのか、少しずつではあるが更地に木や水といった自然が形成され始めている。そして時間が過ぎていくに連れて、人が現れ始め、建物が建てられ生活空間が形成されていく。


『あなたには話の核を知ってもらう前に、お先に話しておかなければならない事があります』


「話しておかなきゃいけないこと?」


『まずあなたが知ろうとしている記憶喪失の事ですが、正直に申しますとどれが発端になっているのかは分からないと思います』


「それってつまり、今起きている記憶喪失は原因不明なのか?」


『簡単にそういうことです。けっど、それが必ずしも正解というわけではありません』


「それはどういう事?」


『この世界全体で起きている記憶喪失事件はこの島の歴史とは無関係なんです』


「もっと意味が分からないんだけど」


『単刀直入にお教えいたしますと、今ルイヴァック島の人々全員が記憶喪失になっているのは世界全体で起きている記憶喪失事件とは全くの別物。ですからこの島で記憶喪失になった原因が分かったとしても、それが世界的な事件の解決には繋がらないということです』


「この島の記憶喪失とココネ達の記憶喪失とは全くの別物……」


 でも刻印がついているって彼女は言っていた。それはココネや由奈との刻印と同じもののはず。実物は見ていないが、それはほぼ間違いないはずだ。


『果たしてそれが間違っていないと言い切れるのでしょうか』


「ルナ達が嘘をついているとでも言いたいのか?」


『それについては私が答える必要はありません。何故なら全ての答えはこの歴史の中にあるのですから』


「全てはこの歴史の中……」


 恐らく声の主は知っているのだろう、全てを。だからそれを俺達に伝えようとしている。さっきの言い方は恐らくそれを指しているのだろう。だからあんな意味深な言い方をしたのだ。


(ルナが嘘をついているとは思えないけど……)


 一体何が正しい情報なのか、それはこの先の歴史で確かめろという事なのだろうか?


『ルヴァック島は元々大規模な都市国家だったのですが、ある事件がきっかけに一つの島として孤立してしまい、その規模は徐々に小さくなっていきました』


「その事件って、百五十年ほど前に起きた大型地震の事か?」


『はい。それによって巨大な津波が発生し、土地のほとんどが海に飲まれてしまいました。そしてその津波の影響で都市国家は一つの島へと変貌してしまいます。後にそれがルイヴァック島と呼ばれるようになるんです』


「何であんたはそんなに詳しいんだ? 仮にその時代から生きていたとしたら軽く二百歳を越えているぞ?」


『私の体は既にこの世に存在していません。今の私はこの本の中に眠る魂みたいな存在です』


「本の中に眠る魂……何となく言いたいことが分かるけど、何でそこまでして歴史を伝えようとするんだ?」


『それは……』


 何かを伝えようとする前に、目の前の景色がさっきみたいな都市国家とは変わって、今の形と変わらないルイヴァック島の姿が映し出されていた。


「これは最近のやつか?」


『いいえ。これは百年前のルイヴァック島の姿です』


「すげえな。百年間この姿を保ってきたって事なのか?」


『実はそういうわけではありません』


「え?」


 でもこれが百年前の姿で、今とほとんど変わりがないならずっと保ってきたという事で間違いないはずだ。それなのに、それが違うってどういう意味なのだろうか?


(って、まさか)


『この姿は百年前のルイヴァック島の姿であり、今から九十年前に既に滅んでしまったルイヴァック島の最後の姿です』


「おい、嘘だろ……」


 それってつまり……。


『今あなた達が流れ着いたルイヴァック島は、ずっと昔に滅んでしまった島なんです』


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