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第47話思い描く未来

 あれから二日、連続して色々ありすぎたせいか、この二日は誰も何かしようとしなかった。特にココネは酷く、あれ以降部屋から出てきていない(勿論俺も入ることができなかった)。今いる中でまともに動けるのは俺と由奈のみ。けど由奈も最近は必死に勉強していて、それを邪魔することなんてできなかった。つまりまともに動けるのは俺一人。こんな状況の中で、王国祭に間に合うのかものすごく不安だ。


「はぁ……」


 このままではいけないと今日から料亭の修理から手をつけてみたが、やはりやる気が出てこない。誰かが悪いとかそういう問題ではないのに、こうも一人で何かをやろうとすると、どこか寂しさを感じる。


(でも修理したところで、肝心のリタがあれじゃあな……)


 仮に料亭が元の姿に戻ったとしても、料理を作る側があの調子だと、これもただの飾りにしかならない。一体どうすれば……。


「お困りのようですわね国王様」


「ん?」

 一人で黄昏れていると、後ろから聞き覚えのない声が聞こえた。振り返ると、日傘をさしたココネとは全く違ったタイプのお嬢様がそこに立っていた。


「えっと、あなたは?」


「お初にお目にかかります。わたくしはヴァンダルシア伯爵家ダルジアン伯爵の妻、メリアーナでございますわ。以後見知りおきを」


 ヴァンダルシア伯爵家って、確かナルカディアの中で一番の金持ちであり、確か国の北東部に豪邸が建っているとココネから聞いていた。実際先日の結婚式や食事会にも参加していたらしい。


「その伯爵家の奥様がどのようなご用事で?」


「先日魔物の襲撃に合われたと聞きまして、ご心配になったのでお訪ねしたのですが、どうやら被害は大きくないようですわね」


「それがそうでもないんだよ、っと」


 一旦作業を中止して、彼女の所へ行く。何だってこのタイミングに伯爵家が訪ねてきたのだろうか? 何か思惑を俺は感じる。


「それはどういう事でございますか?」


「あんたも知っているでしょ? 世界でも有名な料理人のリタって子を」


「ええ。もちろん知っておりますわよ。わたくしも何度か食べさせてもらいましたわ」


「彼女が今回の事件の被害者になったんだよ。傷は癒えたんだけど、彼女自身に問題が起きてさ」


「トラウマと呼ばれるものでしょうか?」


「ああ。恐らくだけどしばらく彼女は料理ができない」


 できるようになったとしても、それがいつになるか不明だ。誰かが彼女の心の傷を癒してあげなければ、二度と立ち直れなくなってしまう。


「国王様、わたくしからお一つ質問させてもらいましてもよろしいでしょうか?」


「なんだ?」


「あなたが思い描くこの国の未来とは、どういったものでしょうか?」


「俺が思い描くこの国の未来?」


 そういえば俺ってどんな未来を作りたいのだろうか。深く考えたことがなかったけど、案外その答えって簡単なのかもしれない。俺はパッと思いついた言葉を、そのまま述べてみた。


「誰もが笑顔でいられる、平和な国かな」


「何か小学生みたいな考えですわね」


「うるせえ。難しく考えるよりは、これの方がシンプルだと思ったから答えただけだよ」


「まあ、答えなんてございませんし、それも答えの一つなのかもしれませんわね」


 そう言うと、メリアーナは「では、ここら辺で失礼させていただきます」と一言残し、その場から去っていった。一体伯爵の妻である彼女が、何しに俺を訪ねてきたのか、さっぱり分からなかった。


(これだけ聞きにきたわけじゃないだろうし、何かあるんだろうな絶対)


 その俺の疑問の答えは、翌日になって分かることになった。


■□■□■□

 それは翌日、ココネの様子を見に部屋を訪ねた際に判明した。


「え? お前の元にも来たのか?」


「うん。何か色々言って帰っていた」


「色々って?」


「分からない。私そんな事聞けるような状態じゃなかったから」


 一体彼女はココネに何を伝えたのだろうか? 多分意味のある事ではあると思うんだけど、何せココネがこの状態だから、詳しくは分からない(実際今日部屋に入れたのだって、ココネの気まぐれで入れてもらえたとしか思えない)。


「それよりもあんた、こんな所で道草食っていて大丈夫なの?」


「こっちはお前の心配をして、訪ねてきたんだって。いつまで引きこもっているつもりだ?」


「そんなの分からないわよ」


「分からない? どうして?」


「外に出たら何が起きるかわからないし、何をされるかも分からない。だって私はもう人間でいられないのかもしれないんだから」


「まだカグヤの言葉を気にしているのか?」


「だってそうでしょ。私はあの子と同じ刻印が刻まれているのよ。何が起きるのか分からないじゃない」


「それはそうだけど。だからっていつまでも引きこもってたら格好悪いぞ。王国祭だって近いのに」


「わ、分かっているわよ。でも……」


「ったく、お前はいつまでそうやっているつもりなんだ」


 いつまでも拒み続けるココネを見かねた俺は、彼女を引っ張って外へ出そうとする。


「痛い痛い、何をするのよ」


「そうやっていつまでも引きこもってたら、同じことの繰り返しだろ? だから嫌でも出させてやるよ」


「やめて! 私だっていつかはちゃんと出るから!」


 暴れ続けるココネを無視して、外へと引っ張り出すことに成功する。


「馬鹿。あんたは何にも分かってないくせに、どうしてそういう事するのよ!」


 外に出ても文句を言うココネに、俺の怒りが爆発してしまう。


「しっかりしろよ! お前はこの国の……ナルカディアの姫なんだろ! うだうだしてるんじゃねえよ!」


 乱暴なことをしているのは分かっている。けれどいつまでもそんな事をしていたら埓があかない。だから俺は強めに言ってやった。お前は一国の姫であるって事を。


「どんな刻印が刻まれていようが、どんなものになろうがお前はお前だろココネ。ナルカディア王国の姫であるココネだろ!それは他の誰でもないんだ。だから一々気にするな。お前はお前らしくいろ!」


「私は私らしく……」


 それは俺の願いであった。彼女がこの先どうなってしまっても、彼女は彼女らしく居てほしい。だから……。


「お前は……俺が好きなココネのままでいてくれ。この先もずっと」


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