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第43話カグヤの正体ー刻印の章ー

「カグヤと出会ってから……だと」


 思わぬココネの告白に、俺は戸惑ってしまう。彼女の肩に刻まれている刻印が、もし本当にカグヤと出会った頃にできたと仮定するなら、今まで繋がっていなかった糸も、少しずつ繋がり始めている気がする。


「黙っているつもりは別になかったんだけど、何か見られると恥ずかしかったから……」


「まあ確かに普通は人に見せるものじゃないからな」


「それにまだその頃って、彼女のこと何も分かっていなかったから」


 ココネの肩に刻まれた謎の刻印。これが一体何を示しているのだろうか? カグヤがもし魔物の類だというなら、それは簡単に説明がつく。

 それはこの刻印が例の魔物と関係していることだ。ココネは五年前扉を開けた際に、大量の魔物と接触している。その時に何かの拍子で彼女の肩に刻まれ、それが魔物(仮)であるカグヤとの接触により、浮き彫りになったのだと思われる。もしかしたら二人で海に行った時に現れたあの魔物と何か関係あるのかもしれない。


「どうしたの? ケイイチ。何か深刻そうな顔をして」


「え、あ、いや、ちょっと考えていたんだ。その刻印の意味を」


「これの意味?」


 脱いでいた服を着ながらココネが尋ねてくる。俺は今しがた考えたある仮説を彼女に話した。


「うーん、確かにそれだと筋が通っているけど、あくまで全部仮定の話よね」


「ああ。だからそろそろ本人に確認してみようかと思っていたんだよ」


「確認するってどうやって?」


「刻印ぐらいなら確認できるだろ?」


■□■□■□

 という訳で翌日、ココネと共にカグヤが眠っている部屋へ。


「カグヤを見るたびに思うんだけど、本当に生きているのかこいつ」


「物騒な事聞かないでよ。ちゃんと息はしているから、生きているに決まっているでしょ」


「いや、分かってはいるけどさ」


 しょっちゅう寝ている姿を見ていると、やっぱり生きているようには思えない。


「とりあえず確認はお前に任せるよ。流石に相手は女の子だし」


「そういう所はしっかりしているのね。普段はあんなにだらしない癖に」


「だらしなくて悪かったな」


 もしカグヤが魔物だというならば、もしかしたら彼女の肩にもココネと同じものがあるのかもしれない。なければなかったで、また別の説から考えてみればいいわけだし、本人がいつかまともに会話をできるようになれば、もっと話は進むに違いない。


五分後。


「終わったからこっち向いていいわよ」


 ずっと二人に背を向けていた俺は、ココネの合図で振り返る。そこには既に服を着させられているカグヤと、ため息をついているココネの姿があった。


「それでどうだった?」


「やっぱりあんたの言う通りだったわ」


「言う通りって事は……」


「ええ。彼女の肩にも同じものがあった」


「やっぱりそうだったか……」


 これでまた一つ、仮説が実証されてしまった。何だか真実に近づけば近づくほど危険な領域に足を踏み入れているような気がする。由奈が出会った謎の人物の言葉、俺とココネの仮説、そしてカグヤ。これら全てが一つに繋がった時、果たしてその先に何が見えてくるのだろうか?


「ねえケイイチ、私ちょっと怖い」


「それは俺も一緒だよ。この先何が起きるか本当に分からないから怖いよ」


「ううん。そう意味じゃなくて、私がこの後どうなるのかすごく怖い。だって肩にこんな変なものができて、しかもそれが魔物とつながっているとしたら、私はこの作どうなっちゃうの?」


「それは……今の俺にも分からない」


「何も分からないからすごく怖いのよ。自分までもが魔物になってしまうんじゃないかって心配で」


「ココネ……」


 ココネがこの先どうなるか? そんな事一度も考えたことなかった。言われてみれば彼女は魔物を呼び出してしまった張本人だ。その彼女に何かしらの事が起きてもおかしな話ではない。おまけにあの刻印が魔物と繋がっているとしたら、この先何が彼女に起きてしまうのか、不安にならないわけない。

だからこそ俺は、彼女に自信を持ってこう言えたりする。


「心配するな。俺が絶対に守ってやるから」


 俺が必ず彼女を守ってみせると。


「な、何よ格好いい事いって。べ、別に自分の身ぐらいは自分で守れるわよ」


 思わぬ言葉にびっくりしたのか。ココネは急に顔を赤らめて恥ずかしそうにそんな事を言った。うーん、ツンデレってこのデレる瞬間がたまらないんだよな(本人はそんな自覚微塵もないと思うけど)。


「何だよ恥ずかしがってさ。こんな臭いセリフ今までに何回も言っているだろ?」


「そ、そのセリフが恥ずかしいのよ。この馬鹿!」


 あ、デレタイム終わっちゃった。


「まあとにかくだ。カグヤの件に関しては、もうちょっと調べたほうがいいな」


「そ、そうね。あんたに守られるようなことが起きる前に、早く解決させましょ」


「ああ」


 と、二人で新たに決意したところで、突然部屋の扉が開かれ、セレスが慌てた様子で入ってきた。


「ココネ様、ケイイチ様。大変です」


「どうしたセレス。そんなに慌てて」


「料亭が……ロリータが……」


「リタがどうした?」


「魔物の襲撃に合いました!」


「な、なんだって!」


 まだオープンして二日目なのにだぞ!


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