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第42話刻まれた刻印

 開店してからもう二時間くらい経つのだが、まあ客が来るわ来るわ。やはりリタの著名度がかなり高い影響か、開店してものの数分で満席(既に行列ができていた)。あまりに予想外の大反響に、俺達三人じゃ流石に人手が足りないので由奈も呼んだりして人を更に導入。


「うわぁ、すごいお客さんの数ね」


「ああ、まさか俺もここまで来るとは思ってなかったよ」


 予想外の大盛況にとにかく大忙し。今日の売上が実に気になるところではあるが、果たしてどれくらいになるのだろうか?


そして時間は過ぎて行き、


『ありがとうございました!』


 夜になり用意していた食材が切れたので、今日は閉店。最後のお客さんを見送ったあと、店の後片付けを済ませ、由奈も含めた四人でちょっとした打ち上げパーティを行うことにした。


「それじゃあ皆、今日はお疲れ様。乾杯!」


『かんぱーい』


 テーブルにはリタがわざわざ作ってくれた料理がずらりと並んでいて、軽く六時間以上働き続けた俺達は乾杯するやいなや、すぐにかじりついた。


「うーん、やっぱり最高だな」


「うんうん。本当に美味しい」


「いつか私も学びたい」


「えへへ、でしょでしょ。もっともっと沢山食べてね」


『はーい!』


 まるで小さい子供のように食事にありつく俺達。本当こんなに美味しい料理が食べられるなんて。俺はなんて幸せ者なんだ。


「でも本当今日は疲れたわよ。まさかあんなに客が来るなんて思ってなかったし」


「突然圭ちゃんが助けてほしいって言い出すから何事かと思ったけど、まさかメイド服を着させられるなんて思ってなかった」


「別にわざとじゃないよ。どっかの執事が服装を指定したから悪いんだよ」


「後で私がお灸を据えておくわよ。あの馬鹿セレスには」


「でも私この服好きだよ。可愛いし」


「リタの場合は、そういうのを着ると似合わなさそうなタイプだな」


 子供がメイド服なんか着たら、それこそロリコン属性が増してしまうような気がする。やはり彼女にはコック姿が一番お似合いだ。


「今絶対失礼な事考えたよね。そんなに酷いこと言うと、私コックやめちゃうから」


「だー、悪かったって。でも実際そうだろ? お前が一番似合うのってコック姿だと思うんだけど。なあ二人共」


「確かに」


「言われてみれば」


 ココネと由奈に同意を求める。どうやら二人共同じ意見らしい。


「うわーん、皆していじめるなんて酷い。弱いものいじめ反対!」


『あははは』


「笑い事じゃなーい」


 こうして楽しい夜はあっという間に更けていったのであった。


■□■□■□

 打上から帰ってきた頃には、既に日付が変わっており、結構騒いでいた俺達は、部屋に戻るなりすぐに眠気に襲われた。


(って、何で俺は当然のようにココネと寝ているんだ?)


 最近当たり前になりかけているが、俺は毎日のようにココネと一緒に寝ている気がする。男として生まれたからには、そこから色々と発展してもいいはずなのだが、そんな事したら確実にココネに殺される。


(まあ、その当の本人は既に寝ているんだけどな)


 隣で静かに寝息を立てているココネの顔をつついて遊んでみる。ふにふにの肌の感触が俺の指に伝わってくる。意外と柔らかいんだなこいつ。


(……はっ! 俺は何をしているんだ)


 こんな事しててココネにバレたら元も子もない。早く俺も寝ないと……。


(ん?)


 慌てて彼女に背を向けようとした時、一瞬だけ彼女の肩あたりに何かが見えた気がしたけど、気のせいか?


(なんか黒いものが見えた気がするけど……)


 再度確認しようと体をココネの方に向ける。が、


「何やってるのよあんた」


 確認する前に、俺の命に危険が迫っているようだ。


「わ、わ、悪い。俺は別に何かしようとしていたわけじゃなくて……」


「人の寝込みを襲おうとするなんて、いい度胸しているわね」


 明らかな殺意を感じた俺は、ベッドから緊急脱出。


「そんな事してないって!」


「今度したら絶対に許さないわよ」


 何かされると身構えていた俺だが、そう一言言ったココネは俺に背を向けたまま布団に潜り込み、その後何もしようとはしてこなかった。


(もしかして寝ぼけてたのか?)


 その割には口調がはっきりしていたけど、どうやら俺の気のせいみたいらしい。ホっと一安心した俺は、布団の中に再び入り、今度こそ眠りにつこうとした。だが……、


「ねえケイイチ」


 ココネはどうやら眠っていなかったらしく、突然俺に話しかけてきた。


「何だよ。寝たんじゃなかったのか?」


「あんたのせいで目が覚めたのよ。それより」


「それより?」


「あんた今、見たでしょ」


「み、見たって何を?」


「とぼけないで。私の肩についていた何かをたまたま見えたから、もう一回確認しようとしたんでしょ?」


「え、えっとそれは……」


 確かに間違ってはいないけど、気のせいだと受け流そうとしていた所なんだけど。


「ねえこっち見て」


 ココネに言われたとおり彼女の方に向き直る。そこにいたのは上半身裸で背を向けてこっちを見ているココネの姿だった。


「ば、ば、馬鹿。い、い、いきなり何をしているんだよ」


「今は何も考えないで! それよりも私の肩を見なさい」


「肩?」


 言われたとおり彼女の肩を見る。するとそこには、今まで見たことがない謎の黒い刻印が彼女の肩に刻まれていた。


「な、何だよこれ」


「分からない。気が付いたらなんかついてた」


「気がついたらって、いつ頃だよ」


「多分あの子と出会った頃からだと思う」


「あの子?」


 それってもしや……。


「カグヤに初めて会った時からよ」


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