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第38話意志を継ぐ者

「ふ、ふざけないでよ。結婚したからって調子に乗って」


 俺は何一つふざけていない。心の奥底からの言葉、つまり俺の本心だ。前にも同じようなことを言ったけど、あれは半分ふざけている感覚でいた。現にその後は、曖昧のまま終わったし。けど今は全く違う。今度は自分の気持ちを素直に彼女にぶつけたのだ。


「ふざけてなんかない。俺はお前が……好きなんだよ。結婚したからとかそんなの全く関係ない。俺は心の底からお前のことが好きなんだ。だから……どこにも行こうとしないでくれ」


「い、嫌よ。私は……私は……」


 いつの間にか涙声になっていくココネ。あれだけ拒絶していたくせに、肝心の心はボロボロだったのかよ。まあ、そんなのとっくに分かっていたけど。


「前にも言ったじゃないか。俺はお前にどんな事があっても守るって。だからまずは、その苦しみを少しでも和らげてあげたかったんだよ」



「馬鹿、すごく余計なお世話よ。……あんたなんかに頼らなくても、私だってできるようになるんだから」


「まあ、その前に何とかなりそうだけど」


 タナトゥス国王から教えてもらったある情報を踏まえると。これなら汚名返上できそうな気がする。


「そ、そ、それより離してくれないかしら。は、恥ずかしいじゃないこんな場所で」


「あ、悪い悪い」


 謝りながら彼女から離れる。つい勢い余って抱きしめちゃったけど、人に見られていたりしないかな。


「誰かに見られてたらあんたのせいにするわよ」


「悪かったって」


 こうして無事(?)ココネを引き止める事に成功し、待たせてしまっていた馬主に何度も謝ったあと、ナルカディアへと俺達は帰るのであった。


■□■□■□

 その日の晩、今日は何とも珍しく背中合わせで寝ないことを許された(その言葉自体がおかしい気がするけど)。


「な、何でこっちをジロジロ見てるのよ」


「そりゃあ背中を向けないなら、こっちを向くしかないだろ」


「仰向けで寝なさい! は、恥ずかしいでしょ」


 何が恥ずかしいのか俺には分からないが、仕方がないので俺は仰向けになったまま眠りにつこうとした。


「ね、ねえケイイチ」


「ん?」


「きょ、今日はありがとう」


「別に礼を言われるような事をやってないよ俺は」


「で、でも私、さっきあんたがやった事に怒っちゃったし」


「気にするな。お前がツンデレ成分の姫だってことくらい分かってるから」


「だ、だから何なのよそのツンデレっていうのは」


「今度教えてやるよ」


「今すぐ教えなさい!」


「だが断る!」


「どうして?!」


 単純に説明するのは面倒くさいから。それよりも、もっと大切なことをココネに話しておきたい・


「なあココネ、まだ眠くないか?」


「ちょっと眠いけど、すぐには寝ないと思う。どうして?」


「ちょっとお前に話しておきたいことがある」


「話しておきたいこと?」


「さっきタナトゥス国王から聞いた話なんだけどな」


■□■□■□

「魔物による大きな被害がなかった?」


「そうだ。実は例の事件が発生する少し前に、ライドアでは一種の伝染病が発生しておった」


「伝染病ですか?」


 タナトゥス国王の口から語られたのは、今まで俺が知っていた事実と全く違うものだった。ココネが疫病神と呼ばれていたのは、彼女が魔物を呼び出してしまった結果、それが別の国にも広がり大きな被害を出してしまったと聞いていた。だが、タナトゥス国王が語った真実は、ライドアに一時期流行った伝染病の話だった。


「伝染病とは実に怖いものでな、その被害は全土に渡り、国民の三分の一が死亡した」


「三分の一って……」


 ほぼ半数に近い数字の人が死んでいることになる。それってかなりの被害が出ているのではないか?


「運が悪いことにその伝染病が流行ってしまった時期と、彼女が起こした事件が重なってしまい、彼女が 意図的に起こしたという噂が広まってしまったんだよ。国王である私もそうと疑ってしまっていたのだが、彼女の夫である君の言葉を聞いて、ようやく真実を見ることができた。感謝する」


わざわざ頭を下げてまで、お礼を言ってくる国王。


「そんな、俺はただココネの為を思ってやった事ですから」


「ハッハッハ、実にいい国王を持ったものだナルカディアも。私の亡き親友にそっくりだ」


「亡き親友って、もしかして」


「ああ。君の先代の国王であり、ココネ姫の父親のルーファス前国王だ。彼は実に優秀でな、何よりも国民を想い、そして自分の妻のココロ姫を想っていた。だからこそ、親友である彼を失ったのはとても悲しい」


「タナトゥス国王……」


 親友か。同じ国王同士仲が良かったんだろうなきっと。


「でも彼の意思を継ぐ者がこうして現れたのは、とても喜ばしいことだ。何か困ったときはいつでも聞いてくれ」


「はい! 是非頼らせてもらいます」


■□■□■□

「じゃあ、私は……」


「ああ。噂が事を大きくしただけで、本当に悪者扱いされているわけじゃないんだよ」


 一連の話を全て話し終え、ココネは何かを考えるかのように天井を眺めた。


「私、そんなに悪者じゃなかったんだ」


「元から悪者じゃないだろお前は」


「あんなにあんたに酷いこと言っているのに?」


「悪気がないことくらい俺でも分かってる。それに」


「それに?」


「お前のそういうのもう慣れちゃったから」


「慣れたって何よ馬鹿! 私だって……私だって……」


 声がまた涙声になっていく。どうやら今度は、嬉し泣きのようだ。


「一日に二回も泣くなよ。さっきも泣いたばかりだろ?」


「だって……やっと報われたんだもん。ずっとずっと苦しかったから」


「知っているよ。お前がどれだけ辛かったのかくらい」


「それがやっと……やっと……」


 我慢できなくなったのか、ボロボロ泣き始めるココネ。本当はまだ喜ぶのは早いけど、今日くらいはいいか。


「ったく、仕方ないな。今日だけだぞ」


 俺は泣き続ける彼女を優しく抱きしめてあげた。それに安心したのか、ココネは更に泣き始めた。


(姫は姫だけど、やっぱりまだまだ子供なんだな)


 この日俺は、彼女が落ち着くまで起きていた。そして彼女がようやく眠りについた時、既に外は朝日が昇っていたのであった。


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