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第13話国外へ

 翌日、俺は昨日まともに話すことができなかったカグヤに、俺達が名前を付けた事とこの城に関しての話をした。


「カグヤ……私の名前?」


「ああ。お前名前がないっていったから、俺達が名前をつけたんだけど気に入らなかったか?」


「……カグヤ……いい名前」


「そうか。気に入ってくれたならいいんだけど」


  元からそうなのか、衰弱しているからなのか分からないが、彼女の口数がかなり少ないためなかなか会話ができない。そんな俺を隣で見ていたココネは、俺に情けないわねと言いながらカグヤに話しかけた。


「ねえ、本当に何も覚えてないの?」


「……何も分からない……」


「どこに住んでたのかも?」


「……うん」


「うーん、これはかなり厄介ね」


「住所もなにも分からないとなるとな」


「最小限の情報があればいいんだけど……」


  一日経てば何か思い出せるかも知れないと思ったけど、どうやらそれも見当違いらしい。おまけに口数が少ないとなると、この先色々と厄介に違いない。


「さてと、カグヤのことはしばらく様子見ってことにして、俺達は仕事に戻るぞ」


「仕事って、今日は何か特別にやる事あったっけ?」


「忘れたのか? 今日からは建築も始めるんだぞ?」


「いや忘れていないけど、大掛かりな事が出来るほどの人員いたかしら?」


「いないけど、それでも最低限やっておきたいだろ?」


「まあ、そうね。で何を作るのよ」


「今回作るのはとりあえず店を開くための、軽い建物ってところだ」


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

  という事でまずはこの前見た廃れた商店街へ。店は今日はどこも開いてないらしい。というか店を開いても意味ないんだよなこの有様だと。


「折角野菜を育ててるんだから、ちゃんとした建物を建てて販売をしないと思ったんだよ」


「まあ確かにこれなら人員はかからなそうだけど、一つ問題があるわよね」


「商人の事か?」


「うん。こうして販売するとしても、売る人がいなければ意味がないし、何より人が来なければ意味ないじゃない」


「そんなの、俺達が販売すれば問題ないだろ?」


「へ?」


  野菜を育てている時点で考えてはいた。自分たちで育てたなら、自分達の手で販売すればいいと。それもここだけの範囲ではなく、遠出して売りに行くのもよし、近くにいる人に売って、他の人にオススメしてもらうのもありだ。こうすればある程度の客を確保することができるし、交通手段がよくなれば遠くのお客だって確保できる。今は不可能かもしれないが、いずれかはそこまでできるようにしたい。


「嫌よ。なんで私が直々に販売に行かなきゃいけないのよ」


「それの方が効果あるかなって思ったからだよ」


「効果って何よ?」


「だって一国の姫が直々に野菜を販売してると聞いたら、絶対に有名になれるぞ」


「そ、それはちょっとは有名になれるかもしれないけど、何か色々と怖くないかしら」


「怖いって何が?」


「えっと、その、ほら、私が可愛いから……」


「それはないな」


「何でよ!」


  自分で自分のことを可愛いって言っている時点でアウトだと俺は思うんだが、それは間違いなのか? いや、確かに可愛い部類に入るけど。


「とにかく私は嫌よ」


「お前がそこまで言うなら、俺一人だけで行くけど、その間勝手に休んだりするなよ?」


「わ、分かってるわよ」


 こいつ絶対にサボるな。



  という事で早速城の人も呼んで簡易的なものの建築を開始。


「そもそもその線で詳しい人とかいなくて、大丈夫なのか?」


「そんなの私に聞かないでよ。やるって言いだしたのはそっちなんだから」


「へいへい」


  プロの人とかいなくて若干不安だが、多分問題ないはずだ。うん、絶対に問題はないはずだ。


  二日後。


「ほら言わんこっちゃない」


 そのフラグはきっちり回収されました。


「俺も反省してるよ。自分の腕を信じすぎていたって事を」


「そうでしょうね!」


  俺は建築というものを舐めていました。二日かけて建築した建物は、設計もメチャクチャな上に、間取りもしっかりできておらず、少しでも衝撃を与えたら倒れてしまいそうだった。


「誰が見てもこれは壊れそうよ。たとえばこうやってちょっと触っただけでも」


  グラッ


「え?」


  ガッシャーン


 そう、こんな感じに。


「……」


「……」


  一週間後。


「よし、これなら前よりはマシだろ」


「沢山の人員を使って作って建てたものとは到底思えないけど、合格点ではあるわね」


  前回あまりにも悲惨だったので、今度は沢山の反省点を踏まえて建設。と言ってもあくまで商店街なので、外国にあるマーケットみたいな屋根だけついている簡易的な建造物だけを何個か建てただけだ。でもこれならマシなレベル。一週間前に立てた廃墟よりも全然よかった。


「でもここに建てただけじゃ、人は来ないわよ」


「だから直接売りに行くんだろ? 折角野菜も少しだけ出来てきたんだから」


「私は行かないわよ?」


「どうぞご勝手に」


  本当は人手がほしいので、ココネには当然来て欲しいのだが、これ以上言うと何を言い出すか分からないので断念。俺は翌日一人で売り出しに行くことになるのであった。


 で、翌日。


「あれ、来ないんじゃなかったのか?」


「き、気が変わったのよ」


  出発直前にココネが突然自分もついて行くと言い出した。人がいるのはありがたいので、彼女を連れて本日の売り出しへ。


「そういえば目的地聞いていなかったけど、どこへ行くのかしら」


 向かいの馬車に揺られながらココネが聞いてくる。俺は予め考えておいた場所をココネに伝えた。



「と、こんな感じで今日はちょっとだけ国外へ出る」


「え? いきなり国外って、色々危なくない?」


「ほら今まで他国との交流が全くなかっただろ? だから少しでも必要かと思ったんだけど駄目だったか?」


「別にだめって事ではないけど……」


「?」


  いつになく元気がない彼女に俺は疑問に思いながらも、目的地へと向かうのであった。


  だがまさかその選択が、この国の現実を見せられるキッカケになるとは、この時は知らなかった。


「私本当は行きたくないんだけどなぁ……」


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