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第11話二人で一つ

 結局この少女の面倒を見るために城に戻ることになった俺達。その為翌日の漁は急遽中止になった。俺達にとってはある意味助かったのだが、サクロさん達はどこか不満気だったがこういう時は流石に見逃してほしい。


 で、帰りの馬車で俺達は、先程から気持ちよさそうに眠っている名も無き少女を眺めながら会話をしていた。ちなみにこの少女、身長はココネとはさほど変わらず、髪の毛は黒色で肩にかかるか、かからないかくらいの少し短めの髪型だ。まあ普通に見れば、可愛いの類に入る子だろう。歳は……見た目で判断するのは難しい。


「それにしても本当によかったのかしら?」


「漁業の方は取引成功したし問題ないだろ?」


「そうじゃないわよ。この子の事よ」


「ああ、そっちか」


「どう考えたってそっちでしょ。まあ確かにどっちも心配だけど」


 ココネがそんな事をぼやく。こうしてこの少女を連れてきたのはいいのだけれど、記憶がないとなると、基本的な情報がない為、どこから来たのかなど確定させることができない。


(それにどうして彼女は、あんな所にいたんだろう)


 最もな疑問はそれだ。まるでどこからか流れ着いたような感じだったけど、果たして真相はどうなっているのだろうか?


「明らかに心配なのは彼女の方だよな」


「そうよね。名前も何も分からない状況だと、私達も行動取れないし」


「ああ。何とかして彼女に思い出してもらうしかないよな」


 俺達の心配をまるで気にしてないかのように、気持ちよさそうに眠る彼女。今の状況からして、名前は俺達が付けるべきなのかな。


「なあコココ」


「彼女の名前を思い出させるより先に、まずあなたの記憶をいじらなきゃいけなさそうね」


「冗談だ。ココネで間違いないよな」


「名前で呼んだら殺すわよ?」


「じゃあ何て呼べと」


「姫様?」


「却下! 何で俺がこいつより下につかなきゃならないんだよ」


「何を今さらのこと言うの? あなたの立場は私よりずっと下なんだから、もっと立場をわきまえなさい」


「お前もいい加減にしろよな……」


 俺は一応一国の王だというのに、どうして姫よりずっと下の立場でいなきゃならないのだろうか? まあいずれ、その考えすらも見事に消し去ってやるけどな。


「まあ、今はその話はいいや。それよりココネ」


「だから名前で呼ばないで!」


「この子に名前を付けてあげないか? 記憶を取り戻すまでの仮の名を」


「まさかのスルー!? でも、名前をつけてあげるのはちょっと面白いかも」


 怒っていたのにいきなり機嫌を取り戻し、俺をガン無視して名前を考え始めるココネ。男の俺よりも女性のココネならマシな名前を考えてくれるだろう、きっと。


「じゃあ黒い髪の子だからクロコちゃんで」


 期待した俺が馬鹿だった。


「そのまんますぎて、もはや突っ込む気にならないんだが」


 しかもどこかのアニメで出てきそうな名前だし。


「何よ文句ある?」


「文句じゃない。これはツッコミだ」


「ツッコミ?」


「とーにかーく、その案は名前は却下だ!」


「そんなぁ、いい名前だと思ったのに」


「どこがいいか、すぐに答えてほしいくらいだよ」


 結局彼女の名前はカグヤという名前になった。由来は特にこれといったのがあるわけでもないが、何かその名前が似合いそうな気がしたからだ。


「やっぱり納得いかないわ。クロコの方が何倍もマシよ」


「もういいよ!」


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 城に到着するなりセレスに事情を説明すると拒むことなく彼女を招き入れてくれた。で、カグヤを運んだ部屋が、


「何で俺の部屋なんだ? 別にココネの部屋でいいだろ」


「私が眠れないじゃない。あとどさくさに紛れて名前呼ばないで」


「それじゃあ俺も眠れないだろ」


「あんたはいいのよ」


「本当扱いひどいなおい!」


 俺が毎日寝泊まりしている部屋。勿論ベッドは一つしかないため、俺は半強制的に床で眠ることに。こんな不遇な扱い、誰が納得するか。

 それに問題点はまだあるそれは。俺が男であるが故の問題点。


「よく考えてみろ、男女が二人で同じ部屋で寝るとか、そんなの……」


「そんなの何よ?」


「い、色々な意味で駄目だろ」


「色々な意味って何よ」


「う、うるせえ」


 今までたまたまそういった事なかったから緊張しているだけで、別にそういう意味で言ったわけではないし。元から俺はそういう人間じゃない。


「あのお二人共、何か勘違いしているようですが」


 そんな俺達のやり取りを見たセレスが、更なる追い打ちをかける発言をする。


「この部屋は只今からカグヤ様のお部屋になりますので、王子には別室に移動です」


「あ、そうなのか。それなら安心したけど、その別室はどこにあるんだ?」


「姫のお部屋です」


 んん? 今俺はすごい言葉を聞いたような気がするが気のせいか? いや気のせいだ。


「え、えっとセレス、もう一度聞くわ。彼の寝床はどこに移動するのかしら?」


 流石に聞き間違いだと思ったのか、ココネが俺に代わって質問する。


「残念ながら只今空き部屋がございませんので、王子の寝床は姫のお部屋になります」


「じゃ、じゃあ私はどこになるのかしら」


「そんなの決まっているじゃないですか。お二人にはしばらくの間、同じ部屋で寝てもらいます」


 トドメと言わんばかりにセレスがもう一度告げる。


 お二人にはしばらくの間、同じ部屋で寝てもらいます。


 お二人にはしばらくの間、同じ部屋で寝てもらいます。


 お二人にはしばらくの間(以下略。


 俺はその言葉を理解するのに、十秒ほどかかった。何度も何度もその言葉を頭の中で繰り返し、出てきた言葉が……。


『は?』


 という訳で……。


「いい? あなたの生活スペースはこれだけよ。これ以上絶対に踏み入れないでね」


「狭っ! これじゃまともに眠れないだろ!」


「元はといえばあなたがあの子を見つけたのが原因なのよ。それくらいの罪は償いなさい」


「そんな馬鹿な~」


 俺とココネはしばらくの間、同じ部屋で寝泊りする事になりました。


「あ、体が少し外に出てる。はい罰ゲーム」


「罰ゲームってなんだよ」


「ケイイチ、タイキック」


「やめなさい!」


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