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第6話

少し間が空きました。

「ねえ、裕人。なんで【MP分配】なんてスキルを習得しているのかな?」

樹が微笑みながら聞いてくる。しかし、その目はまったく笑っていない。

やばい、樹が怒っている。

「いや、その間違えたというか、なんというか。」

「ふーん。間違える要素がどこにあったのか僕に教えてくれないかな?」

「・・・」

「教えてくれないかな?」

「・・・ありません。」

「そうだよね、君は僕と間違いがないか確認してから購入したはずだよね。」

「その通りです。」

「じゃあなんで間違えたなんてことが起こるのかな?」

「・・・」

「それに僕達は3つしか選んでないはずだよね。」

「・・・」

「黙ってないで何か言ってくれないかな?」

「えーと、その、・・・悪かった。」

「・・・はぁ。いつまでも過ぎたことを責めても仕方ないか。で、なんで【MP分配】なんて習得したのかな?」

「DP0で購入できる【大陸共通語】を購入しようとして、1つ上にずれたんだと思う。」

「なんでそんな余計なことをするかな。」

「いや、どうせ0DPだったし。」

「結果的に1000DPも余計に使ってるんだけど。」

「うっ。」

「1000DPって初期DPの10分の1なんだけど。」

「ほんと、申し訳ない。」

「で、その【MP分配】はどういうスキルなの?」

「『自分のMPを他人に分け与えることが出来る』だってさ。」

「まあ、使えるんじゃないかな。あっても損はしないと思うよ。」

「そうだな。他にもメリットはあったし、悪いことばかりじゃない。」

「メリット?」

「ああ。これで、スキルは購入した方が習得するってことがわかっただろ。」

「なるほどね。」

しかし、このとき俺達は1つのことを忘れていた。

【MP分配】はスキルであるため、10分の1の効果がないこと。

つまり、10分の1になっていなくとも、1000DPで買える価値しかないということに。

そして、それはすぐに明らかとなった。

「ところで、そのスキルは1度にどのくらいのMPを分け与えられるんだい?」

それを聞いて、効果を見てみた俺は固まってしまった。

「どうしたんだい?」

「・・・」

「おーい、裕人?」

「・分の・・を・使・て・・の・Pを・・復だ。」

「えっ?」

「自分のMPを6使って相手のMPを1回復だ。」

「・・・」

「しかも、1度使うと5秒のクールタイムが必要になる。」

「・・・なんて効率の悪いスキルなんだ。」

「そういえばこのスキル、割引なしで1000DPだったな。さすが、安いだけのことはある。」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「じゃあ、続きを始めようか。」

「そうだな。とっとと、ダンジョン作りの続きを始めるか。」

俺達はこのスキルの効果を見なかったことにして、作業を再開するのだった。







【冒険者の心得と常識】でモンスターの強さがだいたいわかったところで今度は罠を見てみる。

するとそこには罠とカスタマイズの2つの項目があった。

ということで、またまたヘルプのご登場。

曰く、

罠は、針や落とし穴のような罠のもとになるものや、1度作った罠なんかを買えるもの。

カスタマイズは罠の大きさを変えたり、発動条件をつけたりするものらしい。

また、罠はダンジョンクリスタルのレベルが上がると罠の材料や発動条件、特殊な罠なんかが増えるとのこと。

しかし、罠の種類はモンスターと比べてずいぶんと多い。

いや、モンスターの種類が少ないのか。

たぶん、モンスターはレベルアップ以外に召喚出来る種類を増やせるからだろう。

「さて、裕人がダンジョンを作る前に確認したいことってあと何があったっけ?」

「あとはモンスターが倒れた時に発生する魔素の量と、モンスターの増え方だな。」

「うーん。気になってたんだけど、モンスターの増え方ってどういうことなんだい?」

「モンスターだって生き物だろ。だったら他の生き物みたいに子孫を残すようなことをするはずだ。実際、ゴブリンの説明には繁殖力が強いって書いてあったしな。」

「けどモンスターは普通の生き物とはまったく別のものだよ。説明に書いてあったゴブリンはともかく、全てのモンスターが子孫を残すようなことをするとは思えないけど。」

「それならそれでいい。けど、冒険者を殺してDPを得るにしても、冒険者の数は無限じゃない。だとしたら、他にもDPを得る方法があるはずだ。だから、どのモンスターも増える、つまり繁殖するようなことがあってもおかしくはないと思うぞ。」

「なるほど、確かにおかしくはないね。」

「じゃあとりあえず、先にモンスター用の部屋を作るか。」

「いや、先にモンスターを召喚しよう。」

「何でだよ。」

「どんなモンスターなのか、先に見てみたい。主に僕が。」

「自分のためかよ!」

「冗談だよ。けど、どんなモンスターなのか1度見ておいた方がいいだろう?」

「・・・まあ、そうだな。じゃあ、今召喚出来る8種類を1匹ずつ召喚するか。」

「ちょっと待って。確か、水がないとだめなモンスターがいたはずだよ。」

「おお、ほんとだ。じゃあ、この水ヤゴと玉杓子の2つを抜いた6種類だな。」

ということで1匹ずつ召喚してみる。

まず1匹目にグリーンスライムを召喚。

するとダンジョンクリスタルの前の地面になにやら模様が浮かび、輝いた。

たぶんあれが、召喚用の魔方陣みたいなものなのだろう。

で、そこから出てきたのは逆U字型のぶよぶよしたもの。

どうやら、これがグリーンスライムらしい。

色はその名の通り、緑色。といっても、中が見える位透き通っている。

そして、中には白っぽい玉が入っている。おそらく、あれが核なんだろう。

「うーん、ちょっと想像と違うな。」

「そうかな?僕はこんな感じだと思っていたよ。」

「もっとべちゃっとしたもんだと思ってたんだよ。」

あれじゃあ、スライムというよりゼリーだ。

「いいじゃないか。ゼリーみたいにぷるぷるしてて可愛いし。」

「可愛い!?いったいどういう神経してんだよ。」

「可愛いじゃないか。あのぷるぷる感が特に。」

俺はグリーンスライムに近づいてつついてみた。見た目はゼリーなのに以外と弾力があって少し冷たく、そしてぷるぷるしている。

・・・以外と可愛い。

「まあ可愛いかどうかは置いとくとして、こいつはかなり弱いんだよな?」

「うん。【冒険者の心得と常識】によると、初心者でも簡単に勝てる位弱いみたいだね。ただ、ハンマーみたいに殴ったりする武器は効きにくいらしいよ。」

「打撃に対する耐性か。まあ、妥当なところだな。じゃあ、次いくか。」

そして、次に召喚したのはゴブリン。

こいつは、緑色のでこぼこした肌に醜い顔でこん棒のようなものを持っていて、『ギー』と鳴く。

「「ゴブリンだ。」」

まさに、ゲームなんかのゴブリンそのものだった。

続いて、コボルト。

茶色い毛に覆われた2足歩行する犬みたいなモンスター。

こいつもイメージとほぼ同じモンスターだった。

ただ、かなり顔が怖いためお世辞にも可愛いとは言えなかった。

次に粘菌。

スライムとどう違うのかと思っていたが、実際に見てみるとかなり違う。

まず、スライムよりずっと小さく、べちゃっとしていてアメーバに近く、色も黄緑で中が見える程透き通ってもいない。

はっきりいって気持ち悪い。

「うえー、スライムと違ってかなりキモい。」

「うん、それは僕も同じだね。これはちょっと・・・。」

そんなことをいっている間に粘菌はゴブリンに襲いかかっていた。

そういえば、粘菌は他のモンスターを襲うんだった。

まあ、ゴブリンにへばりつく前にこん棒で弾き飛ばされていたが。

ちなみに、弾き飛ばされた粘菌は死んだ。さすが2DP、めちゃくちゃ弱い。

ただ【冒険者の心得と常識】によると、粘菌1匹1匹はたいしたことはないが、大量にいると厄介で魔法使いがいないと厳しいとのこと。

たぶん、小さくて攻撃が当たりにくいからだろう。いわゆる、数の暴力という奴だ。

次は魔核。

こいつはみる角度によって様々な色に変化する、野球のボール位の大きさの玉だ。

基本的にほとんど動かず、常に地面から1m50cm位のところで浮いている。

「これは部屋にたくさん浮いているときれいかもしれないね。」

「そうか?こんなのが部屋にたくさん浮いていたら、逆に怖いと思うぞ。」

「そうかな?まあどっちにしても、そんな部屋があれば冒険者にとってはかなりおいしいだろうと思うけどね。」

「確かにそうだな。」

この魔核はただ浮いているだけで攻撃はしてこないし、倒せばMPが回復するのでかなりお得だ。

しかし、魔核ってモンスターは攻撃はしない、MPは回復させる、召喚にやたらとDPが必要、と良いとこなしだな。

「このモンスター、召喚する意味あるのか?」

「うーん、君がさっきいっていたように増えるとするなら、DPを増やすのに効率がいいよ。」

「確かにそうだが、こいつは生殖行動をしたりはしないだろう。たぶん、こいつは周りの魔素を吸収して増えるか、魔素が濃い場所に勝手に出来るかするようなタイプだ。」

「けど、増えるならいいじゃないか。」

「増えるのに時間がかかるし、下手したらダンジョンの魔素の濃さが低くなるから、余り効率がいいとは言えない。場合によっては、損になる可能性もある。」

「そっか。それなら確かに召喚する意味は余りないね。」

「だから、【冒険者の心得と常識】ではあればラッキー程度のものになってるんだろう。」

「やっぱりそう簡単にはDPは増やせないか。」

「まあ、仕方ないだろ。次だ次。」

召喚出来ない2種類を除いた6種類の最後の1匹、幼狐だ。

こいつは召喚出来る8種類の中で唯一【冒険者の心得と常識】でもまったくわからないモンスターだ。

かといって、狐のモンスターが珍しいわけではない。

冒険者の常識と中に『盗狐』というアイテムを盗む厄介なモンスターがいるとあるのだ。たぶん、そのモンスターの子供なんだろう。

で、実際に召喚してみた。

すると、出てきたのは子狐だった。

小さくて、ふわふわしたきつね色の毛をした子狐。普通の子狐との違いは少し鋭い牙くらいだ。

「か、可愛い!」

樹が目を輝かせて、幼狐を抱き上げようと近づく。

そういえば樹は可愛いもの、特に動物の子供が好きだった。

しかし、幼狐は近づいて来る樹に怯えて逃げている。なるほど。説明にあったように臆病だから、冒険者を見てもすぐに逃げてしまい、冒険者が幼狐に出会うことは余りないのだろう。

逃げられた樹は肩を落としている。

「に、逃げられた・・・。」

「臆病って書いてあるんだから当然だろ。抱き抱えたかったら、餌でもあげて警戒心をとくんだな。」

「はっ、そうか。ちょっとショップで買ってくる。」

「おいおい、可愛いのは分かるがこの狐はモンスターだから餌はいらないぞ。」

「いや、僕はこの狐を飼う。だから餌は必要なんだよ。」

「・・・はぁ。まあ、いいや。ほどほどにしとけよ。」

「やった!ありがとう、裕人。」

樹はかなり嬉しそうだった。

さて、俺はその間に繁殖用の部屋を作るか。あと、玉杓子と水ヤゴ用に池も作らないとな。

俺達は新しい仲間(?)幼狐を加えてダンジョン作りを続けるのであった。



残り29日、4568DP

これからも細々と入れていくとは思いますが、これで説明はだいたい終わりです。


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