フェネックと砂漠の喫茶店
フェネックと砂漠の喫茶店
<自己紹介>
"クラークス"
フェネック(オス)
ふるふるの店長。
"ふるふる"
フェネックのクラークスが経営する小さな喫茶店。
克也(26)
日常に退屈さを感じている会社員。
夜空には満天の星。
砂漠の中に佇む小さな喫茶店。
黒いスーツに赤い蝶ネクタイを付けた小さなフェネック。
彼はこの喫茶店の店長。名前はクラークス。
"ふるふる"
⭐︎メニュー
コーヒー
紅茶
ミルクティー
チャイ
ココア
サボテンジュース
トロピカルジュース
ドーナツ
クッキー
チョコレートケーキ
おにぎり
豚汁
カレー
ハリラスープ
チキンのタジン
扉が開く直前。
ピコンピコンとクラークスの大きな耳が反応する。
お客さんが来たようだ。
キイィと遠慮がちに扉が開いた。
数分前。
克也(26)は仕事が終わり、一人暮らしのアパートで休んでいた。
ご飯を食べるのも面倒くさくてシャワーだけササっと浴びるとパジャマに着替えてベッドに寝転んだ。
毎日毎日仕事ばかりで変わり映えのない日々。
何で人生ってこんなつまらないんだろう。
「はぁ、どっか遠くに行って帰って来たくないな。」
ぽつりと呟く。
「おやおや、ではこちらへ来てはいかがかな。」
「え?」
どこからか低い男性の声が聞こえた瞬間。
突如目の前が砂漠になり、目の前に小さな喫茶店が現れた。
「え!?何ここ・・・って砂漠とお店!?」
看板には"ふるふる"と書かれていて、
メニュー表が立てかけられている。
どうやら飲食店のようだ。
ぐう・・・。
やっぱり夜ごはんは食べておくべきだった。
お腹空いたな。でも、金持ってないから何も頼めないや。
ビュオー!
「わっ、さむ!!とりあえず話だけでも聞いてみよう。」
克也は肩をさするとアンティーク調の扉を開けた。
店内は綺麗なブルーに包まれていた。
カウンター席の目の前には、
キリム柄の絨毯にプフやパブーシュなどモロッコの雑貨が飾られている。
シックなブラウン色のカウンターと、ゆったり空間なブルー色の広い絨毯スペース。
合わないようで意外と合っているところがすごい。
「いらっしゃいませ。」
カウンターの奥に凛々しい眉毛をした顔だけがちょこんと見えた。
中にクラークス専用の高い台があり、その上に立っているのだ。
「え、ふぇ、フェネックが喋った!?」
「ふるふるの店長クラークスと言います、よろしく。」
「は、はい、よろしくお願いします・・・あのー、俺金持ってないんですけど・・・。」
「お金は構いませんよ。とりあえず好きな席へどうぞ。
絨毯スペースの方も自由に使って下さいね。」
「あ、はい。」
克也はカウンターの一番端の席に座った。
「メニュー表がありますので、こちらから好きなものをお頼み下さい。」
カウンターにもメニュー表が置かれている。
イラストがしっかりと描かれていて分かりやすい。
食べたら毒入ってるとかあるのかな。
異世界にきてよく知りもしないのに飲み食いして大丈夫なんだろうか。
・・・。
まぁ、死んだらそれまでだ。
「そうですか・・・じゃあ、カレーとチャイをホットで下さい。」
お腹が減っていた克也は食事も頂くことにした。
「かしこまりました。」
15分後、カレーとチャイがカウンターに置かれた。
美味しそうな湯気が漂っている。
カレーを食べ、温かいチャイを飲み、一息つく。食べやすいようにアレンジしてくれてあるみたいだ。美味かった。
窓の外を見るとそこには広大な砂漠と星空が広がっている。
砂漠は暑いイメージだったけど、夜は寒いんだな・・・。
その時、スッと心が透き通るような感覚になった。それと同時に急に不安に襲われた。
「あの、俺ってちゃんと帰れますか?」
「おや、先程は帰りたくないと言っていたような気がしましたが。」
「はい、さっきまでは・・・でも、今は帰れないと困るというか・・・。」
このまま砂漠に放り出されても生きてはいけない。
人は結局、一人では生きていないのだ。
「大丈夫ですよ、お店を出たらまた同じ場所へ戻れますので。」
「あの、カレーもチャイもめちゃくちゃ美味しかったです。」
「それはそれは、ありがとうございます。」
「ごちそうさまでした。」
「またのお越しをお待ちしております。」
扉を開け、閉める。
振り返ると喫茶店は消えて砂漠と星空の中、
風が頬の上をサアァッと駆けていった。
そしてもう一度振り返った時、自分の部屋のベッドの上に座っていた。
人生をつまらなくしてたの自分だったんだ。
そうだ、今度、貯めたお金と有給を思い切って使ってモロッコに行こう。
「あ〜なんか楽しくなってきたぞ!」
克也は、しばらく布団の中でジタバタした後、
楽しい夢の中へと落ちていったのだった。
"ふるふる"店内。
クラークスは専用の小さなマグカップにココアを作り、その上に生クリームとチョコレートソースをかける。
カウンターの中の隅っこには、クラークス専用の椅子がある。
そこに座りながらココアを一口飲む。
いつもクールなクラークスの凛々しい顔がふにゃふにゃっと癒されていく。
クラークスの大きな耳がぺしょっと左右に倒れ、尻尾がブンブンと揺れた。
「やはりココアは甘々がいいな。」




