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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

スチル回収のために来たはずでしたよね?

掲載日:2026/05/15

--レイナがまた来た。


 私、リリアーナの耳に噂が入ってきた。


--ちょっと待って。レイナは全ルート回収してるはず。なのになんで?


 私の頭の中は疑問符で一杯だ。


 レイナは一周目は騎士ルートに向かった。騎士と私とは恋仲だったのに、土足で上がり込んで来た格好だ。もちろん私は全力で阻止した。この時はなんとかレイナを追い払えた。


 ただ、そのときのレイナの落ち込んだ仕草に同情する人たちがいたのが、今でも納得いってない。


 二周目のレイナは、騎士と簡単に結ばれた。多分攻略情報を見たんだと思う。


 そのときのレイナの笑顔は忘れられない。屈託のない笑顔。騎士と永遠の愛を誓う様子。祝福の声。私は初めから終わりまで全部見聞きさせられた。


 三周目は、王太子殿下ルートだった。レイナが、国を選ぶか愛を選ぶかを殿下に迫っていた。私は反対した。私だけでない、国王陛下はじめ王室ご一家、大臣、将軍、みんな反対した。あらゆる手を使った。王子を引き戻す方法を考えたり、レイナの行動を防いだりした。


 ただ、これが難易度を高め、むしろレイナの挑戦心に火を着けたのかも知れない。数々の困難を克服して、レイナは元王太子と結ばれた。


 「国より私を取ってくれた」と感涙にむせぶレイナ。おめでとう。その後の王宮は大変だったんだよ。王太子選定で揉めました。権力の空白を狙って隣国の動きが活発化しだしました。行政、軍事ともに多忙を極めたのです。レイナは「権力も財産もいらない、あなたさえいればいい」と言っていたらしいけど、王宮でそれ言ってみろよ。


 四周目以降も、レイナはそこここでトラブルを起こし、私たちを怒らせ、最終的には素敵な殿方と次々と結ばれていった。


 このため、王宮をはじめレイナを知る方たちは、レイナ再訪の報に戦慄を覚えた。


 私は、これまでのいきさつやレイナ再訪の理由などの詮索よりも、もっと重要なことを心に決めた。


--レイナのことは知らない。レイナからは逃げる。レイナが見えても見ない振りをする。


 そう決意した矢先、レイナが私の目の前に現れた。


 私がレイナから目をそらすと、レイナはその目線に合うよう移動した。私が回れ右をすると、半周回り込んで来た。


--完全に私を標的にしてる……!


「リリアーナ、ちょっといい?」


 レイナが笑顔で私の名前を呼ぶ。私で確定。


--誰か助けて。


 左右を見た。王宮内の多くは反レイナのはず。誰か助けてくれるはず。


 そのはずなんだけど、みな視線をそらせた。レイナには関わりたくないらしい。


 私はあきらめざるを得なかった。


「あ、はい……」


 私はぎこちない返事をした。


「ちょっとこっちへ来て」


 満面の笑顔のレイナに手を引っ張られた。


 レイナは何度も王宮を訪れている。どこに何があるかはよく知ってるはず。レイナは迷いなく歩いた。


 最初はどこに向かおうとしているかは分からなかったけど、途中から中庭に向かおうとしていると気づいた。人があまり出入りしないところだ。


 かくして、中庭の隅にある先々代国王陛下の彫像の影に連れてこられた。ここが一番人の眼が少なくなる場所だ。


 突っ立っている私に向かい合うかたちでレイナが立った。


「なに?」


 私は尋ねた。


「キスして」


 レイナはためらいも恥らいもなく言った。


「ふぁ?」


 私は間抜けな声を漏らした。


--私はレイナに恋愛感情を1ミリも持ったことがない。どころか頬を張り飛ばしたくなることの方が多い。その相手とキス?ありえない!ムリ!


 この思いはレイナに届いたようだ。


「難しいよね……」


--そう!難しいです。


「私もリリアーナとキスなんて嫌なんだけど……」


--そうだよね!でも言い方がなんかムカつく。


「嫌なんだけど、スチル回収しないといけないの」


「は?」


--スチル回収?


「ギャラリーのほとんどが回収できたんだけど、あと一つ必要なの」


「……」


 私は聞きたくない言葉を待つしかなかった。


 レイナが口を開いた。


 「あのね……そのスチルは、あなたとキスをしてるものらしいの」


--まあ途中から想像がついてましたよレイナさん。そして逃げられないのも知ってます。


「で、私はどうしろと?」


 敢えて聞いてみた。


「私にキスして」


--うん、分かってた。


 どうせ私に拒否権はない。この庭の片隅でレイナとリリアーナとはキスをする。そういうシナリオになってるはず。


「……分かった」


 私はレイナの胸の下辺りに視線を落として言った。


「よかった!私のライブラリーが埋まらなくて気持ち悪かったのよ」


 レイナが無邪気に喜んでいる。


 キスをすると、レイナとリリアーナとのキスシーンのスチルが開放されて、レイナのライブラリーに登録される。それはいい。


--それで私は得するの?しないよね?なんでこんなことしないといけないの……。


 納得いかずに立ち尽くす私に、レイナは作った笑顔を向けた。


「じゃあ、さっさと終わらせよ?」


 レイナが急かせている。


--せめてなんか楽しいことないかな?


 まだ私は動けない。


「ねえ」


 レイナがさらに急かす。


--せめてレイナの心に爪痕を残すようなキスをしてやろう。もし「もうわたしリリアーナなしでは生きていけない」って言われたら面白いよね。


 そういう非常識なことを思った。


「もう!早く終わらそうよ!」


 レイナが強めの口調で言ってきた。


「うん。するよ」


 私は意を決した。


「ちょっと口開いて?」


 レイナに言った。少し不思議に思ったかも知れないが、素直に口を開いた。


--よし。


 レイナの右手首を掴んだ。その直後に、レイナの開いた口を私の口で塞いだ。


 レイナの右手を壁に押し付けた。抵抗できるかも知れないけど、私にだってレイナが簡単には逃げられないぐらいの力はあるはずだ。実際手をほどこうとしているけれども手こずっている。


--逃げたいんだね?まあそうだよね。急にこんなことされたら驚くよね。


 レイナの目は開いている。


--目ぐらい閉じればいいのに。


 ぼんやりと思った。


 私は舌でレイナの口の中のいろいろなところを探った。


 しばらくすると、目がゆっくり閉じられていった。


 レイナの口の中を吸い上げてみた。右手が少し反応した。そのころには、レイナの喉から、くぐもった声が私の口に伝わって来はじめた。


--かわいい。


 さらに、レイナの口の中を強めに吸ったり、舌を絡ませたりした。


 そうすると、レイナの舌の動きを感じた。私の動きに懸命に応えているように感じた。


--あれ?積極的になってない?


 気づくと、レイナは固く目を閉じていた。手も強く握りしめている。


--刺激が強いかな?


 それでも構わず、つかんでいたレイナの右手を頭の上に引き上げた。レイナの息があらくなったのを感じた。


--息が荒くなってる。スチル回収のためだけにここまでなるかな……?


 そして、右手でレイナの腰に手を回した。するとレイナが自分から身体を押し付けてきた。


--そこまでするの!?


 おへその下あたりでレイナと密着している。さらにレイナの呼吸が早くなった。


--私に対してこんな風にはならなかったのに。


 必死な表情のレイナを視界の端にとらえながら考えた。


--そろそろやめてあげよう。


 ゆっくりと唇を離し、ついでレイナの右手を下ろしてあげて、すこしだけ身体を離した。


「かわいい……」


 つい口に出た。レイナは顔を上気させている。レイナはゆっくりと目を開けた。その眼はやや潤んでいた。


 私は右手で口を軽くぬぐった。


「なにこれ……」


 レイナは言葉を漏らして、手で顔を覆った。


 私は構わず話しかけた。


「言われた通りキスしたよ?」


 レイナは顔を隠したままうなずいた。


「これでギャラリーのコンプリートができたね?」


 うなずいた。


 私は少し躊躇してから、レイナの耳元に口を寄せた。


「かわいかったよ」


 それだけ言ってレイナから離れた。


 レイナに強く見つめられているのを感じた。でもこれで終わり。レイナは帰る。何もかもが終わる。しかも爪痕も残せたのが結構嬉しい。


「じゃあ、これでバイバイだね。元気でね」


 そう言って、回れ右してその場を離れようとした。


 数歩歩いたところで、後ろから足音が聞こえた。すぐに私の背中に衝撃を感じた。


 振り返らなくても分かる。レイナが抱きついていた。何も言わずに、私の背中に顔を押し付け、私のお腹に手を回して、私から離れようとしない。


--やりすぎたかな?


 私はレイナが何か言うのを待った。何か言おうとしているのは分かった。でも「あの……」というだけだった。


--レイナが落ち着くまで待つしかないのかな。


 私はお腹にあるレイナの手に優しく触れながら無表情でレイナを受け止めていた。

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