(2)出石そばの店で
電車とバスを乗り継ぎようやくたどり着いた城下町・出石。ただ町の方ではなく出石神社の近く。正直何もないし観光客どころか人の姿もまばらだ。
なんとかお店を見つけ、忠史は暖簾をくぐった。
目当ては名物の出石そば。丸い小皿に分けられたそばが何枚も運ばれてくる。つゆは濃いめ、薬味は山芋、とろろ、生卵。
歩き疲れた身体にちょうどよかった。
昼のピークを過ぎたからか店内に客は忠史ひとり。箸の音だけが静かに響いていた。
そばを平らげ、湯のみを手にしながらスマートフォンで地図を確認する。
――さて、どうするか。
遺跡へ向かうか。
コンビニを探して水でも買うか。
そのとき、おばさんが湯のみを手にやってきた。
「おおきな荷物背負って……お兄さん観光? お城の方はあれだけど、この辺までくると観光するとこなんてないでしょ?」
朗らかに笑う。
「あ、いや……遺跡でも見に行こうかと」
「遺跡? ああ、袴狭の方ね。お兄さん、車?」
「いえ、徒歩で」
「徒歩! 元気ねー。けっこうあるわよ?」
からからと笑う声が店内にやわらかく広がる。
「それに今から遺跡って、帰りどうするの? あの辺ホテルとかないでしょ?」
「ネットで見たらキャンプ場があるみたいなので、そこを利用しようかと」
そのやりとりを聞いていたのだろう。奥から割烹着姿の男が顔を出した。白髪交じりの無口そうな店主。
「キャンプ場って……まだやっとるのか?」
おばさんが振り向く。
「え?」
「もうキャンプ中止みたいな話、聞いたけどなぁ」
忠史の手が止まる。
「え!? やってないんですか?」
「さあなぁ。それに車じゃないんじゃろ? キャンプ場はけっこう山の中に入るで。滝の方だし」
「白糸の滝ですよね」
「まぁ、若い人だし途中で動けなくなることはないとは思うけど。とにかく気ぃつけてな」
「ありがとうございます」
忠史は頭を下げ店を出た。
外はさっきより少しだけ曇っていた。




