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アンナの理想(全年齢向け  作者: もちごめ


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32三度目ましてのパーティー(age15

王家主催で成人した者を毎年お祝いするのが習わしである。


勿論アンナにも招待状が届いた。


「久しぶりのパーティーだわ」


少しだけ気持ちが浮つく。何せダニエルのエスコートを受けての出席なのだ。

初めてではないが嬉しい事に変わりはない。


加えて、この1年は社交に時間を割く事が出来ない程に忙しかったのだ。アニー商会で出した短い会話が可能なアクセサリーが爆発的にヒットしてしまい朝から晩まで働き詰めとなってしまったのである。

これは初回に限っての魔力充填サービスを付けたせいだ。いつもの面々に手伝って貰ってはいたが、他の2つの商品も売れ行きが好調だし魔力量が遥かに高いアンナに比重は傾く事は必然である。

忙しい隙間を縫って学び舎にも行っていた。忙殺されていたと言って良いだろう。



今回のパーティーの途中離席が許されているが会話可能なアクセサリーを献上する為だ。



緑のアクセサリーを身に着け、濃い緑から白へと綺麗なグラデーションのドレスにブラウンの刺繍が入っている物を身に纏う。これでもかとダニエルの色を主張し加えて揃いのブレスレットも外さない。


ダニエルの方はと言えば黒いスーツに銀から紫へと変わる煌びやかな刺繍が施されている。紫のピアスも着けていた。


互いに思い合っていますよ! と激しい主張をしている。


若いからという事もあるが次期当主とその婚約者だ。思い合っている事は、とても好ましい。


「まぁ、何て可愛らしいのかしら」


「お似合いの2人だわ」


周囲からの視線も勿論、好意的だ。しかし、ここまで互いの色を纏うのは珍しくそういった面でも視線を集めている。


「あぁ困ったな」


「何かありまして?」


「アンナ嬢が美し過ぎて視線を集めてしまっているよ」


カッと頬に赤みがさすアンナ。


「わ、私が美しいのは当然でしてよ」


ツンと顎を上げて得意気に見せる。


「確かにそうだ。きっと間違えて空から落ちてきてしまったのだろう?」


「え?」


「本当は天使や女神だと言われても納得してしまう」


アンナは恥ずかしくて俯いてしまうがダニエルは覗き込む。


「空に帰りたいと言われても離してあげないから。その時は私の腕の中に閉じ込めてしまおう」


この1年こうして度々ダニエルから冗談なのか本気で言っているのか分からない事を言われているアンナ。

中々慣れる事が出来ずにいる。


新緑の目は近くで見るとキラキラと美しく吸い込まれてしまいそうだ。


「こらこら、ここは公の場だよ」


「私の宝石ちゃんは可愛いから仕方ないわね」


両親の登場に焦って近くなっていた顔を放す。ダニエルは少し恨めしげだが仕方ない。





「ぁ...あれは、ばっ化け物」


小さな怯えを含んだ呟きは兄にしっかりと届いていた。


「お前、まさかまだ怖いのか」


成人を迎えた者達を祝うめでたい席で何を言っているのかと見つめればカタカタと小刻みに揺れる弟。暫くすると小さく飛び跳ねているのでは? と思う程の震えへと変わる。尋常ではない。

もはや筋肉達磨となった弟が未だに1人の令嬢にトラウマを抱えている事実。


「仕方ないか。今日はお前は話さずにニコニコとしておけ、良いな?」


「はい、兄上」


今回のパーティーでも第1王子と第2王子が共に歩いてお祝いの言葉を掛けて回る事になっていたのだが失態を貴族達に見せる事に繋がるかもしれない。

最悪の状態を想定して弟には喋らせないようにしようと決意する兄。


「大丈夫だ、にぃ様にまかせておけ」


やはり見てくれが変わっても兄にとって弟は可愛いままで。ポンポンと頭を撫でて笑い掛ける。


「そうだ、お前の婚約者も来ていたな。婚約者との仲を深めるという名目で一緒に居ると良い」


下手に動き回ってボロが出るより良いだろうと提案してやれば嬉しそうにコクコクと頷く。


「よし、決まりだ」


安心した様にホッと息を吐き出す様子に思わず笑ってしまう。


「全く、お前は何時までたっても可愛いままだよ」


王位継承権等には初めからこれっぽっちも無い無欲な弟に少しでも幸せであって欲しいと願う兄。

幾ら本人にその気が無くても担ぎ上げようとする愚か者は居るのだ。その度に怯えた様子で兄の部屋に逃げ込んで来ていたのである。第1王子の中で第2王子は未だ可愛い小さな困ったちゃんなのだ。





「成人を迎えた者達にとって良い門出となるように願っている。まずはこの日を楽しんで欲しい」


陛下からの挨拶は短く直ぐにパーティーは始まった。


「今日はお酒を飲みたい気分ですわ」


バサリと髪を払うアンナ。


「林檎のお酒だね」


「えぇ、そのつもりですわ」


「アンナ、待ちなさい。今日は例のアクセサリーを献上しなければならないだろう?」


「あら、待ってロジャー? 私達で行いましょう」


シャーリーを見つめて首を傾げる。


「大人しくなったとは言え王妃の行動は読めませんでしょう? またアンナにちょっかいを掛けてくるかもしれないわ」


「しかし、だな。もうアンナが行うと伝えてあるから」


「じゃあ4人で行きましょう。それ位なら良いのでは無くて?」


「うーむ、まぁそうだね。無駄な心配事を増やす必要は無いか」


現当主であるロジャーは侍従の1人を捕まえて話をする。

慌てて会場から出て行った侍従を見送った。


「これで大丈夫だろう」




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