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「はい、此処からはレディースのみとさせて頂きますのでダニエル様はお帰り下さいな」
「もっと側に居たかったのですが仕方ありませんね」
残念そうに眉根を下げてダニエルは帰った。
「皆様、持って来ました?」
「忘れませんでしたわ!」
「えぇ、此方に」
「ありましてよ」
縫いかけのチビバックを皆が取り出して見せ合う。
「まぁ! そんなに進んでますの?」
「さすがエリシャお姉様ですわね」
「あらソフィア様も中々ですわ」
ティーワゴンを押して部屋に入ってきたメアリー。テキパキとお茶を配り一口サイズのお菓子達も準備する。
「まぁ! 可愛らしいチョコレート!」
「本当に! バラを模しているのね」
お嬢様方は会話に花を咲かせてチクチクと縫物に精を出す。
「そういえばダニエル様はアンナ様にメロメロでしたわね」
「もうアンナ様しか目に入らない! という感じでしたわぁ」
はぁと、うっとりしつつ溜め息を零す。
「は......恥ずかしいですわ」
ポッと頬を染めて俯くアンナ。大変に可愛らしい反応である。
「そのぉ、宜しければデートの内容等お聞きしても?」
「ぁぅ......ダッダニエル様とは観劇デートが多いですわ」
「あらぁ素敵だわ」
「ダリア家として劇場に出資していたらしく、個室に案内されるのです」
キャァアと悲鳴が上がる。
「個室! まぁ! まぁ!」
「2人っきりという事ですわね!」
「お酒は? お酒もご一緒に飲まれますの?」
「お酒は、ほんの少し飲む位なのです」
やはり乙女には恋話である。大いに盛り上がりキャアキャアとはしゃいで時間は過ぎていった。
「それで? キスはされましたか?」
「いえ! そんな! 出来ませんわ」
ぱっと手で顔を覆うアンナ。
「手を繋ぐ位はしたのでしょう?」
「はい、もう手汗が気になってしまって......早く慣れたいものです」
ソフィアは頬に手を当て悩まし気な溜め息を零した。
「はぁ、私も婚約者を見つけないと、という気持ちになりますわね」
「あら? ソフィア様にはまだ婚約者いらっしゃらないの?」
「はい、ミリーお姉様」
「13歳でしたよね?」
「そうなのですが......中々難航しておりますの」
そこからは、ソフィアの理想のタイプの話で盛り上がった。
まとめると頭が良くて優しくて出来たら年も近い方が良いと。
「何だかソフィア様なら直ぐに見つかりそうですけど」
「それが両親が納得してくれないのです。もっと上の者が良いと駄々を捏ねて」
「私達の両親から、それとなく釘を刺しましょうか? 娘の幸せを、ちゃんと考えなさいって」
「良い考えだわ! 私も両親に話します!」
「ソフィア様、落ち込まないで! 大丈夫よ、私達がついております」
ソフィアの手を握り勇気づける。
「有難うございます。私、友人に恵まれて幸せです」
こうしてお嬢様方で友情を確かめ合いつつチビバックが完成した。
「出来ましたわね」
「中々良い出来です」
「私の腕の見せ所ですわね」
アンナは張り切ってチビバック達に魔法を込めていく。少しするとフフンと胸を反らして得意気になった。
「さぁ! 何か入れて見て下さる? 取り出す時は入れた物を思い浮かべれば出て来ますわよ」
「嬉しい! アンナ様有難うございます」
口々にお礼を述べつつチビバックを手に取る。
「試しに、この裁縫道具をしまいますわね」
スポッと吸い込まれる。
「キャアッ! 入りました! このバックよりも大きいのに」
「まぁ! 出してみて下さる?」
出てこいと思い浮かべればポンッと飛び出てきた。
「凄い! 凄いですわ! 宝物に致しますわ」
「私も! 私も宝物に致します!」
「アンナ様って本当に凄い方ですわね。私、一生付いていきます」
皆に褒められアンナは嬉しくて仕方ない。フフンと胸を反らして得意気だ。
「私、天才だもの」
髪をハラリと手で流してニコニコしている。
「さぁ! それでは私ミリーお姉様とエリシャお姉様の婚約者様のお話が聞きたいですわ」
「私も聞きたいですわ」
妹分の2人から懇願されて、また惚気話を話す事になったお姉様方。
こうして楽しいお茶会の時間は過ぎていった。
「おい! 見るんだ」
ソフィアの両親は届いた手紙に戦慄した。娘が懇意にして貰っていると思っていた家門からお叱りの内容なのだ。
エリシャはマム侯爵家の娘で、ミリーはリリー公爵家の娘なのだ。加えてローズ公爵家からも似たような内容で娘の幸せを考えて行動しろという手紙が届いたのである。
曰く何故、上の者との繋がりに固執しているのか。そもそもダンデレオ伯爵家は1人娘なのだから、野心に溢れた者を選ぶ事の方にリスクがある。それよりも心根の優しいソフィア嬢を大事にしてくれる者を選ぶべきだ。
大まかにはこういった内容で占められている。
「これは......どうしたら」
「貴方、しっかりして。公爵家と侯爵家からの手紙なのです。従う他ありませんよ」
「そっそうだな。ソフィアの幸せの為を思っていた筈なんだが......そういえばソフィアに直接聞かずに動いて来たのだな」
「私達は間違っていたのです」
両親もソフィアを思って行動していたのだが裏目に出てしまっていたのだ。他家に指摘を受けて、その事を真摯に受け止める事が出来たのが何よりの証拠である。
「ソフィアと話をしよう」
「そうね、それが良いわ」
愛娘であるソフィアと話し合い学び舎に通いつつ焦らずに相手を探す事になった。
ダンデレオ家は直ぐに手紙の返事をしたためる。
有り難い指摘を受けるまで愛娘のソフィアが困っている事に気付く事が出来なかった事。
今回の指摘に、とても感謝している事。本人としっかり話し合い相手を焦らず探す事になったという内容を書いて送った。
それぞれの家門へ手紙が届き友人の問題が片付いた事にお嬢様方は胸を撫で下ろした。




