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暗黒騎士1

戦いの火蓋は切られた。

ミッズーは工場内全ての水を部屋の水路から放流し始める。

このままでは黒い騎士含めて全員溺死するに違いない。

「先手必勝!」

ラクナが盾に乗って高速でミッズーの正面に立ち、攻撃を仕掛けようとする。しかし、

「うわぁ!」

空気中の水分が爆発し、剣で斬りかかろうとしていたラクナを地面に叩き落とした。

空気中の水分、水蒸気の爆発は他の3人の所でも起きており、全員不意を突かれて被弾する。

「クッ………。」

背後、正面、左右、どんな方向からも爆発が襲ってくるため立ち上がることすらままならない。

黒い騎士とミッズーは一歩も動かず、エモーショナルセイバーズを完封する。

「うっぐ…………ううう。」

その上、アイは腹の痛みが再発し、身動きが取れていない。そんなアイにも容赦なく爆発は襲いかかる。

「アイちゃん!」

イカリがアイを爆発から身を挺して守る。

「グッ……。大丈夫ですか!アイちゃん!」

「はぁ、はぁ、ごめん……。」

アイの苦しんでいる顔を見て、イカリは目が黒く変色していることに気づく。

「アイちゃん……その目……。どうしたんですか!?」

しかし、アイは自分の目が変色していることに気付いていない。

イカリに言われて水面に顔を映す。

「……なんだろうね……。分かんないな…。」

イカリは今のアイの様子を見て、あることに思い至る。

おそらく、アイの目の変色は子宮に入れられた何かが原因で、アイは着実に影へと変化していっている。

イカリはブンブンと頭を振って、マイナスなことを考えないようにした。

「みんなーー!これ使って!」

そう言って立ち上がることに成功したラクナが3人に盾を渡す。

「私とラクちゃんで攻めるわ!2人は下がっていて!」

盾を使うことでなんとか立ち上がったヨシミが2人の前に立って言う。 

ラクナとヨシミは盾を構えてミッズ―に突撃しに行った。

「………皆。ありがとう!お腹の痛みも少し治まったから私もやるよ!」

イカリに支えられながらアイも立ち上がった。その頃には水が足首まで溜まっていた。アイは自分が足手まといになって時間を潰すことがいかに致命的か理解している。だから、多少の無理をしてでも皆の力になろうとしているのだ。

「………援護お願いします!」

アイの意を汲んだイカリは心配しながらもアイに任せることにして、ミッズ―に向かう。

丁度イカリと入れ替わりにヨシミが放ったビームが飛んできた。

ビームがアイに当たるとアイの周りに白く濁った半円の結界が張られる。

「アイちゃんは弓を引くのに両手を使うから盾が持てないでしょう。だから、爆発から身を守る結界を張ったの。時間制限があるからモタモタはできないけれどね!」

「ありがとう!」

アイはミッズーに1本の矢を放つ。しかし、その矢は届かずに水蒸気の爆発によって弾かれた。

次は複数本の矢を放つ。それも同じ結果となる。

「………じゃあ、これなら!」

複数本の矢を不規則な軌道をとるように連射する。すると何発かの矢は爆発をすり抜け、ミッズーに直撃した。

「よし!」

ラクナが盾に乗り、爆発よりも速くミッズーの背面に移動する。

「ラクちゃん!光っているのは中央よ!」

「オッケー!」

ラクナの持つ剣が黄金の光を放ち始める。


「エンジョイブレード!」


黄金の剣がミッズーを一閃する―――筈だった。 


ガキン


黄金に輝く剣は漆黒を纏った剣によって受け止められる。

「なっ!?」

ラクナが動揺した次の瞬間、部屋の床を満たしていた水が一気に爆発した。

その爆発は地上の3人は当然、空中のラクナさえも巻き込む。

「あっ………グッ…。」

ラクナは再び地面に落とされる。

眼前には斬りかからんとする黒い騎士。

咄嗟に巨大な盾を出し、身をかがめて攻撃を防ぐ。

「あいつはさっきの爆発を受けてないっての……!?」

盾から離れて、剣を構える。

「あんたは一体何者で、何が目的なのさ!」

感じている恐怖を打ち消すように大声で問いかける。だが、黒い騎士は無反応でガジャリ、ガジャリと鎧の音を響かせながらラクナに近付いてくる。

ラクナの恐怖心はさらに高まる。

「うわああああ!」

ラクナは盾を前面に押し出して、突進を仕掛けた。

 

 ♥  ♥  ♥  ♥  ♥  ♥  ♥  


爆発に使われた水が雨のように降ってきてる。 

その雨は爆発は直に受け、倒れているヨシミちゃんとイカリちゃんに容赦なく降り注ぐ。ラクちゃんは見当たらない……。

パチャパチャと足音を立てて、イカリちゃんとヨシミちゃんを結界の中に入れる。2人を入れ終わったタイミングで結界が赤く点灯し始める。そろそろ時間みたいだ。

「………2人とも……。」

イカリちゃんは痛そうなのにまだ、立ち上がろうとしてる。

「…………これは、撤退した方がいいかもしれません……。」 

イカリちゃんは斧に体重をかけながらヨロヨロと立ち上がって血のついた顔で言う。

「…………出口を……見てごらんなさい……。」

立ち上がれずに寝た体勢で髪で顔が隠れているヨシミちゃんがイカリちゃんに反論する。

私とイカリちゃんはヨシミちゃんと言った通り、私達がやって来た扉を見た。

「………そ……ん、な……。」

イカリちゃんの体勢が崩れて、倒れる。

扉は壊され、そこから水が放流されている。無理矢理出ようとしても押し戻されて終わりだろう。

「…………撤退も……許されない……みたいね…。私達には勝つこと以外………道はないのよ…。」

ヨシミちゃんが言い終わった後、結界が解けた。待ってましたと言わんばかりに近くの水蒸気や降っている雫が爆発する。

「グッ………ッッッ……ッ!」

ヨシミちゃんの盾と自分の盾、そして自分の鎧を使ってイカリちゃんが私とヨシミちゃんを囲むような形で守ってくれる。

「ごめん……イカリちゃん……ッ!」

今日は守ってもらってばっかりだ…。

爆発の音が響く。響く度にイカリちゃんが傷つく。剥き出しの太ももにも爆発は炸裂してる。イカリちゃんは足が折れそうになるのを我慢して何度も足を伸ばしてる。

「………私も戦わなくちゃ。」

イカリちゃんの腕と盾の間の隙間からミッズーが見える。そこに弓の照準を合わせて、1本に見せかけた複数本の矢を連射する。1本の矢は途中で複数本に分かれて様々な方向からミッズーに向かう。何発ミッズーに当たるかは分かんないけど、この攻撃で爆発を分散できるなら!

しばらくすると、爆発の音が止んだ。

「イカリちゃん!もう大丈夫だよ!」

私の声と同時にイカリちゃんは倒れた。ありがとう!後は私達で!

そう思って立った矢先、私達の周りが水の塊で囲まれていることに気付いた。

「あ……。」

水の塊は一斉に私達を目掛けて飛んでくる。私はいきなりのことに反応できない……。

水の塊は私の目の前まで襲ってきて、そこで停止した。そこから、ミッズーの方へ吸い込まれていく。

「え……?」

他の塊も同じだ。全部ミッズーの方へ吸い込まれている。

「チート………無法を使えるのはあと1回よ。なるべくなら使わずにケリを付けたいわね…。」

私の後ろで立ち上がったヨシミちゃんが槍を突き出していた。そうか!ヨシミちゃんがやったんだ!

周りをよく見渡すと水の塊以外にも全ての水がミッズーに吸収されてる。

「私が攻めるからアイちゃんは援護お願い!」

「うん!」

槍を片手で持ってミッズーを目指して駆ける。

ミッズーは水を氷にして攻撃を仕掛けてきた。氷も当然、吸い込まれるけど、分解されて吸い込まれるから分解分の時間が吸い込む時間に追加される。つまり、吸い込まれるのにかかる時間が少しだけ伸びるんだ。。ミッズーはこれを瞬時に理解して行動を起こしたんだと思う。

ヨシミに四方八方から襲いかかる氷を私の矢とヨシミちゃんの槍で砕いていく。砕かれた氷は追撃に転じることができずにそのまま吸収される。

ミッズーはそれでも諦めずに自分の身体から直接巨大な剣のようなものを複数本生やして、斬り掛かってくる。その剣はかなり硬くて矢や槍をうまく当てないと簡単に弾かれちゃう。

「ここで、足を止めるわけには……ッ!」

ヨシミちゃんは剣の対処に精一杯で中々前に進めない。私もかれこれ数十本は砕いたと思うけど砕く速度よりも生成させる速度の方が速くて、砕き終わる頃には既に新しい剣ができてる。

そんな時に私達の後方から火球が飛んできた。

「イカリちゃん!」

イカリちゃんは斧に身体を預けて肩から火球を放っている。

イカリちゃんの放つ火球は氷の剣に当たると炎が剣全体に燃え広がって水滴を滴らせる。そうなった剣はもうカチンコチンじゃない!

イカリちゃんのお陰で私の矢でも剣を砕けるようになった。

ヨシミちゃんが一気に前進して、ミッズーの真下に到達する。

「アイちゃん!力を合わせるわよ!」

「勿論!」


「グラッドスピアーーー!」 


「ラブリーエモーショナルシャワーーーー!!」


ヨシミはオレンジ色の光を放ちながら回転する槍をミッズーに向かって投げる。

その槍をピンクの矢の雨が包んで軌道に乗せる。

無数の矢はミッズーすらも包み込む。矢の雨の中でミッズーの中央に槍が刺さる。

槍はミッズーを覆う水を絡め取り、ミッズーを元の姿に戻して光となって消えた。矢も同様である。


「ミッズーーー!」

ヨシミちゃんとラクちゃんは変身解除と共に倒れる。私しか動けない!

変身解除と共に走り出す。傷は回復しても体力は回復しないみたい。それでも!誰かがミッズーを迎えてあげないと哀しいよ!

ミッズーに抱きついてそのまま倒れる。

「ミッズー……良かった……。」

ミッズーを頭の近くで抱きしめて伝える。

「ご……めんミズ……。迷惑をかけたミズ……。」

澄んだ水の身体で背中の十字傷を疼かせながらミッズーが謝る。

「ううん。大丈夫。誰も気にしてないからね!」

私はそう言って元気よく起き上がる。


が、次の瞬間私は膝から崩れ落ちることになる。


私の目に映ったのは、緑髪の人物が剣を振り上げ、相手の胸から肩にかけて切り裂いている場面だった。

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