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♥『喜怒哀楽』♥

お陰様で100PV突破!

読者の皆様、誠にありがとうございます!



※不愉快要素含みます。

「イヒ、アハハ!アハハ!アハハハハハ!ハハハハハハハハハハハハ!」

甲高い女性の声が響き渡る。

「あんた!何様のつもり!こんなことして……ッ」

怒り心頭で近付いたラクナの頭が黒い影に掴まれる。

目線はアイを向いたまま、ゆっくりと腕を一定の高さまで上げて、手首を使い天井に向かってラクナを放り投げた。

「アハハハハハハハハハハハハハハ!」

ラクナは天井に頭をぶつけ、気を失う。地面にはショクブッツが草の絨毯を引いて落ちてくる衝撃から守ったが、ラクナの頭部はかなり損傷している。

「イヒヒ!イヒヒ!アハハ!アハ……ッ!?」

突如、黒い影を炎が背後から襲う。イカリだ。イカリが影を捕らえて、炎をジェット機のように噴かせながら家から出た。


ある程度、距離を取って影を転がすように投げる。回転して、身動きが取れないうちに炎を纏った斧で真っ二つ。

当然、2つに別れた影の身体は炎によって燃え尽きる。

「……一体何が……。」

家の方を確認すると、先の影が大量に空から、いや……工場から飛んで来ている!?かなりの距離をひとっ跳びで……。

「嘘………。」

急いで、家まで炎を噴かせて飛んで帰った。


 ♥  ♥  ♥  ♥  ♥  ♥  ♥ 


弓矢が黒い影に当たると、影が霧散して女性が倒れてくる。

考えたいことは沢山あるけど、今はそれどころじゃない!

ショクブッツが家を移動させて、ドッシャが上からくる影を払ってるけど、当然溢れてくる影はいる。その影を私とヨシミちゃん、ムッシー達で対応してる。ラクちゃんや家にいる皆はショクブッツが家を改良して、特定の場所に隔離した。これだけやってるけど、手が足りない!

「ぐっ!」

背後から攻撃を受けた。その影響で私の体勢が崩れる。隙を突かれて前方からアッパーが直撃した。

「アガッ!?」

私の身体は後方に吹っ飛ぶ。勿論、後方にも影がいる。痛みに耐えて、空中で身体を回転させて影達に複数本、矢を放つ。

「うぐっ!」

今度は上からやってきた影に身体を地面に叩きつけられて押さえつけられる。その際、私の下で倒れていた女性達は押し潰されて肉や骨、内臓をぶちまける。その人間の欠片は開いていた私の口の中に多少入ってくる。

「ペッ、ペッ。」

口の中の物体を出しながら、弓を背後に向かって引く。片目でしか視認できないから、当たるかは分からないけど。

「やぁーッ!」

ピンクの光が影に直撃して、影が霧散し人が倒れてくる。

「よし!」

人を担いで、体勢を立て直す。部屋の隅を目指して、立ち塞がっている影を走りながら射止める。隅に着いたら背中の人を素早く降ろして、全方位に矢を放つ。

突然、天井が割れ、木の破片や、木の粉がバラバラと降ってきて視界が悪くなる。

マズイと思った矢先、何者かが私の両ほっぺを指で挟んで私をぐいっと持ち上げる。そして私の開きっぱなしの口に(しな)やかに動く何を突っ込んで、口の中全体を確認するかのように直接当てて動かす。息がしづらいし、……なんか、気持ち悪い……。

「んっ……んっ……ッハァ。」

確認し終えたのか何かを私の口の中から引き上げられ、私は乱暴に投げられる。

「クッ……。」

すぐに弓を構え直して目の前にいる何者かに向かって連続して矢を放つ。

口の中に変な液体が入って気持ち悪いけど、目の前の敵は影かもしれないから気にせずに相手に矢を当てることだけ考える。

「アイちゃん!大丈夫!?」

ヨシミちゃんの声が聞こえる。周りの心配ができるのは凄いな……。

「うん!だいじょっ……ッガッ!?」

答えてる最中にお腹にパンチを受けた。私が攻撃の手を緩めたからだ……。マズイ……。

「アイちゃん!?アイちゃん!」

次は横腹に蹴りをお見舞いされ、私は近くの壁に衝突した。勢いで手から弓が落ちる。

「クッ……ハァハァ……。」

衝突して倒れてしまった私は弓を取る為に手を伸ばす。しかしその手は何者かの足によって踏み潰されてしまった。

「ィあああああぁ!」

痛い痛い痛い痛い!手が……手がぁ!

涙が一気に溢れ出る。悲痛の声が止まらない……!何も……考え……ッ!?

蹴りが顎に炸裂する。意識が…おかしくなる……!!

両足が私のお腹を真っすぐ壁に押し込んでくる。

壁が破け、移動中の家から放り出された。家は結構な速度を出して移動しているから家の外に飛び出た私はものすごい風圧を受けて転がっていく。


「ハァァァァ!」

先程まで視認できなかった何者かが家からジャンプする。


「ピィィィィ!」

何者かは転がっているアイを視認する。


「バァァァァァ!」

何者かは転がっているアイに向かって飛んでくる。


「スゥゥゥゥゥ!」

アイがなんとか立ち上がる。その上空に何者かが腕と足の銀色の鎧を輝かせながら辿りつく。


「デェェェェェ!」

何者かはアイを目指して急降下する。


「イィィィィィ!」

何者かは頑張って立ち上がったアイを地面に叩きつけて、アイの腰の上にまたがった。

「アッ……ガッ……!?」

叩きつける威力は周囲の地面が凹む程だ。その威力を受けてアイは一時的に呼吸が困難になる。

そして、何者かは舌なめずりをして、

「おめでたいなぁ!妹ちゃん!会いたかったぜぇ!やっぱ、姉貴とそっくりだなぁ!口の中は姉貴より酸味が強かったが、それも悪くはねぇ!誕生日プレゼントだぁ!楽しんでいこうぜぇ!」

熱血感のあるダミ声を夜の村に響かせた。


 ♥  ♥  ♥  ♥  ♥  ♥  ♥


「えっ、誰か家から出た!?」

家に戻る途中の私は突然、壁を破ってぐるぐると回っている人と、その人を追いかける人を確認した。

片方はよく見るとピンクのオーラを纏っている。

「アイちゃん!?」

アイちゃんがやられてる!助けないと!

「邪魔………ですッ!」

数を増してきた影達を肩から出る炎の出力を上げて一瞬で灰にしていく。だが、影を対処するために炎を全身に纏っているから視界が炎と灰で見えづらくなっている。目的地に到達するためには炎の調節により、どうしても速度が落ちてしまう。

「おぉ!いい顔だ!初めてにしては俺好みの顔をしやがる!!」

………聞き覚えのある声だ………。まさか……。

「オラオラオラ!もっと!もっと○け!俺の○○を○みやがれぇ!最っ高のプレゼントだろぉ!ガッハッハー!」

所々聞こえない部分があったが……ほぼ確定だ……。………殺す。

「ふぅ~。中々いいもんじゃねぇか!」

「クソ親父!死ねぇぇぇぇ!」

前方の影を炎を纏った斧で焼き払って道を作り、肩の炎を圧縮し速度重視で出力する。

すぐにクソ親父の真横に到達、斧で首を刎ね……ッ!?

「賢者の俺に挑むってのは愚者のやることだぜ。嬢ちゃん。」

チッ!気付かれてたか!

炎を爆散させて、アイちゃんを回収、クソ親父と距離を取る。

「ま、今日の所はこれくらいにしといてやるよ。俺は今、気持ちが、いい!最ッ高の肉……」

アイちゃんに燃え移らないように炎の球を発射する。かなり圧縮したから爆発音も大きい。威力も人間くらいなら消し炭にできるはずだ。

「ケホッ、ケホッ。お前の親、教育がなってねぇな。人の話くらいちゃんと聞けっての!」

それだけ言って、他の影と共に工場の方へ跳び去った。

「殺せなかったか……。いつか……殺してやる……。」

けれど、今は撤退してもらった方が被害は少なくて済む。

それに………。

「アイちゃん……。ごめんなさい……。」

赤とピンクの光が発光して変身が解ける。さっきまで片腕で持っていたから急いで両腕に変えて、ゆっくりと降ろして私の膝の上に頭を載せる。

変身中、酷い姿をしていたアイちゃんは変身解除により服や靴以外は元のアイちゃんに戻る。そう"服や靴"以外はだ。 

アイちゃんの服、上半身は防護服で軽い傷がある程度だけど、特に下半身が今も酷い有様になっている。縫って修正が効かないレベルだった。

「………クソ親父……ッ。」

「イカリ………ちゃん……?」

アイちゃんが目を覚ました。

「アイちゃん!よかったです。無事………、いや、生きててくれて……。」

アイちゃんは苦笑する。私はその目に涙が浮かんでいるのを確認した。

「いや……本当だよ……。私……あんなになってたのに………。ウッ……。」

話している最中にアイちゃんがお腹を押さえて苦しみ始めた。

「アイちゃん!アイちゃん!どうしたんですか!?アイちゃん!」

「……痛い……痛いよぉ……。あああッ!」

ダンゴムシみたいに丸くなって悶絶している。考えられる要因は………チッ……。

「失礼します!アイちゃん!」

アイちゃんの服をめくってお腹を確認すると丁度子宮辺りが黒く発光して、そこから黒い線が子宮周りに伸びている。その線は少しずつではあるが長さを伸ばしており、いつかアイちゃんが真っ黒になる可能性がある。

……確実にクソ親父の仕業だ……。

でも、どうしたら……。取り敢えず、鎮痛剤を持ってこなきゃ。いや、違う!持ってくる間はアイちゃんが1人になってしまう。だから、そうだ!

「すみません!ショクブッツを呼んで貰っていいですか!お願いします!」

近くの植物に助けを要請してもらうんだ。今、できる最適解はこれしかない……。

「ああああッ!いやあああ!い……だ……い……。」

「アイちゃん!もう少しですよ!もう少し頑張って下さい!」

痛みで喘いでいるアイちゃんの手を握って背中をさする。


「ごめんブツ!ってアイ!どうしたブツか!?」

「ショクブッツ!いきなりですけど子宮の痛みが和らぐような鎮痛剤を作ってくれませんか!」

ショクブッツはすぐさま空中に様々な薬草を浮かべて、それらを調合していく。

「即席ブツ!ひとまず痛みを和らげるだけブツよ!」

「ありがとうございます!」

ショクブッツから受け取った薬を口移しでアイちゃんに飲ませる。

アイちゃんの唇が冷たい。激痛の程度が窺える……。


「フゥ………フゥ……フゥ………グッ……ッ!?……フゥ……。」

鎮痛剤を服用して暫くした後、アイちゃんは多少落ち着いた。それでも定期的に激痛が襲ってくるとのこと。

………私が変わってあげたい…。

「これ以上の薬は皆で診断しないと難しいブツね……。」

「分かりました……。アイちゃんは徒歩で帰るのが難しいので家まで送ってもらえませんか?」

ショクブッツは頷き、巨大な葉っぱを私達の下に敷いて家までゆっくりと運んでくれる。

「すみません……。私まで……。」

「イカリは無事ブツか?何があったのかは分からないブツけど、あれだけの数の影を1人で相手してたブツから心配ブツ。」

「はい。………私は無傷です………。ッ……。」

拳を強く握り締める。皆は傷ついて戦ったのに私だけ自分の身を炎で守ってた……。情けない………ッ!

「よかったブツ。それならブツ、アイに付き添ってあげて欲しいブツ。」


家に着く頃にはアイちゃんは眠ってしまった。そうした方がアイちゃんにとっても楽な筈。

それにしても家がボロボロになっている……。私が援軍に来ていれば変わったのだろうか。

「帰ったブツよ〜。ひとまずアイを診て欲しいブツ〜。」

ガチャリと家のドアが開いて目の前に映った家の光景に私は絶句した。

知らない女性達が家中に倒れている。

いや……そんな……まさか……。

「この女性達は…………一体……。」


()()()()()()()()()()()()。」


一瞬、言葉の意味が分からなかった。

けれど、私の頭は状況を理解してしまう。黒い影は人間を使った化け物だ。

「………そ、んな……。」

私はこの日、人を、殺した。何十人もだ……。何十人もの未来を奪った……。それはまるで………。

「一緒だ……………。…………一緒だ……。変わら………ない……。わ…たしは……。」

あの、クソ親父と同じかそれ以上のことをやってる………!

「……死ねばいいのに………。なん……で……生きてるんだろう……。死な……ないと……。こんなことをしたんだから…生きてちゃ駄目だ……。」

膝から崩れ落ちて、地面に落ちてる鋭い木の破片を探す。

「駄目だよ!」

背中を身体で押されて前方に倒れる。

声と身体つきからしてアイちゃんだ……。今度はアイちゃんに無理をさせてる………。

「イカリちゃんの事情は分からないけど死んじゃ駄目だよ!アニマッルもいないんだからこれっきりなんだよ!」

アイちゃんの手が私の腕を痛いくらい押さえつける。私の背中には小さい水滴が垂れて冷たい。

「人の未来を奪ってるんですよ……。死んで当然です。そんな奴は……。」

「絶対に違う!イカリちゃんは死んじゃ駄目!イカリちゃんは人の未来を奪う代わりに人の未来を守ったんだよ!」

腕の力がさらに強くなった。アイちゃんは何を言ってるだろう……。私、分からないですよ……。

「イカリちゃん!死んじゃうなんて…哀しいよ…うぅ……。グッ……ッ!?」

「アイちゃん……?ガハッ!」

アイちゃんの力が弱くなって、私の背中に勢いよく倒れ込んだ。

「アイちゃん!」

慌てて仰向けになってアイちゃんを抱きしめる。

………アイちゃんがこんなだったら、まだ……死ぬわけにはいかないじゃないですか………。

アイちゃんは私の肩を強く握り、私の顔の隣に頭を持ってきて痛みに耐えている。

「イ………カリ……ちゃ…ん……ッ!」


「イカリ!アイを起こして欲しいっシャ!」

アイちゃんの苦しそうな声の後にドッシャの声がした。私は言われた通りゆっくりとアイちゃんの上体を上げる。

「どう見てもただの腹痛とは言えないっシャね……。」

私はアイちゃんの服をめくって黒くなっていく子宮周りを見せる。

「……イカリ……事情を説明できるっシャ?」

私は頷いて、あらかたの事情を説明する。これをやったのが影達の主であり、おそらくアイちゃんの子宮に射出したなんらかのモノが影響を与えているのではないかということ。影達の主は私の父親であるから人間である可能性が高いということ。その他諸々。

「また、変わった人間っシャ……。情報感謝するっシャよ。」

ドッシャは影の主が私の父親だったことに触れず、ショクブッツ達の元に戻る。

「……ドッシャ達もイカリの死は反対っシャよ。イカリは大事な戦力であることを忘れちゃいけないっシャ。」

この言葉を残して。

ドッシャにも聞かれてたのか……。そうだ。今は戦力が少しでも欲しい状況。私が死ぬのはまだ早い。

私はなんとか気を持ち直すことに成功した。


数分後

「イカリちゃん。迷惑かけちゃったね。」

アイちゃんの容態が回復した。ショクブッツ達が一生懸命つくってくれた薬の効果が効いたのだ。

でも、いつもよりテンションが低い気がする。気の所為なのだろうか……。

「アイのそれは侵食が緩やかっシャ。詳しいことが分からなくても、抑え込むことだけなら可能っシャ。」

「ありがとう。皆。」

声のトーンも少しだけ低い気がする。

「それじゃ、ここにいる人達を皆ラクちゃんがいるところに運んで私達も寝よう。詳しいことは明日だね。」

「それがいいムシ。疲れた状態で話しても何も纏まらないムシ。人の移動は全部妖精達でやっておくから2人は先に休んでいいムシ。」

「そう。ありがとう。なら、任せちゃおうかな。」

……アイちゃんらしくない…気がする……。全部明確な証拠はないけど、何か突っかかる。ま、まぁ、アイちゃんも疲れてるのかもしれないから、私の気にし過ぎの可能性も否定できない。

アイちゃんは寝室へ歩いて行った。 

「イカリも今日はゆっくり休むムシ。」

「は、はい。後はお願いします……。」



全てが寝静まった深夜の村の大きな家。

玄関から入ってすぐの広場には人の痕跡は見当たらない。妖精達が全て移動したのだ。

しかし、まだ残っているものがある。

粉々に割れた宝石の破片。

視認不可能なまでに破られた押し花の紙。

木の木目に入るほど砕けてしまったアクセサリーの数々。

全てゴミのように小さくなってしまった為、妖精は誰も気付かなかった。


これより始まるは救いようのない地獄に足を踏み入れざるを得なかった愚か者達の物語。

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