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喜のエモーショナルセイバー!

食洗機に朝食で使った皿を次々に入れていく。その皿は紙、陶器、その他に分類されて自動的に食器棚に収納される。

「いってきまーす。」

妹、エミカの声だ。そう言えば今日は久し振りの対面授業の日だと言っていたかしら。

「「いってらっしゃーい。」」

「お姉ちゃんも今日は気を付けてね!」

「はいはい。」

台所と玄関。距離は大分離れているけれど、お互い聞こえるくらいの声量で会話する。

「悪ぃな。ヨシミ。今日も朝任せちまって。」

寝室から父は頭をボリボリとかきながら起きてきた。エミカにいってらっしゃいを言えたからか、少し機嫌が良さそうね。

「昨日は遅くまで仕事をしてたんだから、まだ休んでてもいいのよ?」

父の顔はどんどん老けていっている気がする。もう60になろうとしているし、おかしなことではないけれど。

「ハッハッハ。全くだ。折角、仕事から解放されてたのに、ここ近年と今後はまた仕事から抜けられないと来た。ため息が止まらんよ。」

「生きる為だもの。仕方ないじゃない。」

「そうだな。いつだって、俺達は生きることに追われ続けてんだ……。」

父の小言を聞きながら、私の方も支度を終える。今日は遠出になるもの、きちんと用意をしておかなくては。

「なぁ、ヨシミ。絶対に帰ってこいよ。俺はお前がいるんなら、お母さんは……。」

「そんなこと言わないでちょうだい。私にお母さん、そしてエミカとお父さん。皆一緒に行くんでしょ。諦めちゃ駄目よ。」

父は悔しそうに黙ってしまった。そんな父を見て何もしないという選択肢は無かった。

私はゆっくりと父の方へ歩き出し、父を抱き締めた。今じゃ、私の方が背が高い。

「大丈夫だから。私は絶対に戻って来るわ。だから、それまでエミカをお願いね。」

「俺は……。俺は悔しいよ!俺がやるべきなのに!何でもかんでも娘に押し付けて!」

父は涙ながらにそう言った。父の悔しさがひしひしと伝わる。父の言いたいことはよく分かる。けれど、仕事を放り出すことだけは出来ないの。だったら、手持ち無沙汰な私がこの役目を果たすべきよ!

しばらくすると、父は泣き止んで笑顔で「いってらっしゃい」と言ってくれた。

「いってきます!」

私も負けないくらい笑顔で言わないと!


3時間くらいかけて母が消えたであろう森に辿り着いた。認可は貰っている為スムーズだ。

母が消えたのは20年前。母は元々、研究者をしていて調査の為に森を訪れたと研究者仲間の人達から聞いた。ただ、研究者達も当時は何処で消息を絶ったのか分からなかったみたいで、なんとか昨日情報を掴んだということで知らせてくれたのだ。

「植生は温暖湿潤気候に近いわね。中に入らないと詳しいことは分からないけど、少なくとも温帯か、亜熱帯くらいの植生になってると思うわ。」

母の研究分野は自然に関することで私もほんの少しはその知識がある。だから、この森がどういう特徴を持っているかくらいは分かるの。

「………なんか変ね……。」

森を進んでいると、違和感を覚えた。あくまで、資料出見ただけなのだけれど森である以上、植物以外の生物、つまりは脊椎動物や無脊椎動物もいて良いはず。それが、全く見当たらない。

さらに足を進めるとどんどん腐敗臭が漂ってくる。おかしい話よ。動物がいないのに腐敗臭がする?生ごみを不法投棄でもしたらそんな匂いになるでしょうけど、わざわざこんな所まで捨てに来るかしら。

「夏緑樹林に間違いはないのだけど、どうなっているのかしら?」

全体は合っているのに部分が欠けている。そんな中にいると心が落ち着かないわ。

「キャッ!」

こけて情けない声を出してしまった。

「ウッ……。」

酷い。私がこけた地面の匂いはあまりにも強烈だった。

「エホッ!エホッ!」

マズイ。吐きそう。最悪だわ。

所々に欠けた棒のような物が見受けられるが、何処か木とは違う気がする。多分、これに躓いたのだ。

「最悪よ。最悪よ。早くしないと服に匂いが移っちゃう。」

私は急いでその場を去った。その時には手遅れでもう匂いは服に少し移っていた。

「嘘でしょ………。はぁ…。」

ため息をついてまた、足を進める。泣き言を言った所で変わらないもの。取り敢えず前進よ。

「まさか、こっちの道を通るとは。不運な体質だね。」

「え?」

突如聞こえた声の方向に身体を向けたけれど、そこには何もいない。

私は本格的に恐怖を覚え始めた。

「一体どうなっ……………て…。」

眠気が、いきなり………。


♡  ♡  ♡  ♡  ♡  ♡  ♡


「ふむふむ。なるほどぉ!それで皆は戦ってる訳か!」

ふぅ。なんとかラクちゃんにも説明が終わった。昨日はあの後すぐ寝て、今日の朝から説明を始めた。そうすると何故か昼頃まで時間が掛かっちゃった。

「ショクブッツもありがとね。この間注いだお水がまだ沢山残ってるから飲んできていいよ〜。」

うお。私が言う前にショクブッツ飲んでる!それだけ頑張ってくれたからね。

「プハーー。ブツ!もう少しで無くなりそうブツ!」

えぇ……。凄い飲みっぷりだぁ。

「分かりました。今からいで来ますね。」

イカリちゃんは相変わらず働き者だなぁ。もうバケツを持って外に出ようとしてる。私も手伝おっと。私はよっこいせっと腰を上げてイカリちゃんについていく。 

「あたしもやるよ!」

やった。ラクちゃんも一緒だ。これで沢山のお水が注げるね。

「ミッズー!お水貰ってくね!」

3人で川まで来て、お水を注ぐ。ミッズーの名前を呼んでみるけど今日もいないみたい。一体どうしてるんだろ?

「あれ?ミッズー出てこないじゃん。」

ラクちゃんが不思議そうに私に問いかける。

「そうなの。原因は分からないけど何故かミッズーいないんだよねぇ。」

本当に何してるんだろうなぁ。前まで呼んだら来てくれてたんだけど。

「化け物になってるとか、かな?」

ラクちゃんがバケツを持ちながら言った。

「流石に無いと思いますよ。もし、そうならお水を分けてくれる訳ないと思います。」

イカリちゃんは迷いもなく断言する。私もこれは断言していいと思う。ミッズーがそんな簡単に化け物にはならないと思うんだ。

「確かに。」

うんうんと頷いて同意を示すラクちゃん。ツインテールだから頷く度にフサフサと明るい緑の髪が揺れる。

身長は私達と殆ど変わらないし、これだけ見ると年上とは思えないなぁ。

「ただいまー。」

大木の方の家へ戻ってきた。帰ってきて早々、ショクブッツが近付いてくる。

「ムッシーとサカッナが家に来て欲しいって言ってたブツ。一緒に行くブツよ!」

言われるがままショクブッツの出した大きな葉っぱに乗って皆がいる家に向かう。

「サカッナって魚を司ってんの?」

隣に座っているラクちゃんが顔を近付けて質問してくる。

「そうだね。お魚さんは皆、サカッナが担当だよ。」

さらに顔をぐいっと近付けてきて、もう目と鼻の先。その上、鼻息まで荒くなってる。好奇心が凄いね……。

「じゃあ、エビとか貝はどうなってんの?」

「えぇとね。基本的にはサカッナだけど、まぁ、ムッシーも所々担当してて、はっきりとどっちとは言えないなぁ。ハハハ。」

私が答え終わるのと同時にラクちゃんが真っ赤な顔のイカリちゃんによって下げられる。

「近すぎですよ!見てる人がいるんですから少しはですね……。」

いきなり下げられてポケェとしているラクちゃんに慣れない大声で説教をしてる。なんという可愛さだ。

「ごめん。ごめん。次からは気をつけるからさ、許して〜。イカリん。」

イカリちゃんの手を両手で掴んで懇願するラクちゃんを見てイカリちゃんの真っ赤な顔は次第に元の白いお肌に戻っていく。

「次したら、お尻ペンペンですからね!」

イカリちゃんなりに圧をかけてるんだろうけど、どうしても可愛さが勝っちゃうなぁ。ラクちゃんなんて怒られておきながら満面の笑みだよ。

「あっ、ムッシーといえばあたし達が戦ったあの黒いのもムッシーなんだよね?」

ムッシーという単語で思い出したんだろうね。ラクちゃんは姿勢よく座って疑問を口にする。

「そうだよ。というか、ラクちゃん見えなかったの?中にムッシーがいたけど?」 

「え?」

ラクちゃんが目を見開いてこっちを見ている。この表情は多分見えてないやつだ。

「胸の辺りにムッシーの白い光が輝いてたんだよ?見てないの?」

「うん。全然。」

そんなことあるんだ。ラクちゃんは戦いに夢中だったし、見る暇が無かったのかも。それでも苦しい言い訳になるけど。それくらい明るかったし。

「見えてないんでょうね。多分、楽しみっていう感情が出力されてますので、楽し過ぎて周りが見えてない。そういう感じに調整されてるんだと思います。」

「「へぇ~。なるほど。」」

2人揃って頭を縦に振る。

この力も万能じゃないってわけだ。自分達が出力する感情によって制限がかかることがある。誰も気付かないような所に気付いたね。

「………怒りには傷つけることしかできませんからね……。」

「ん?何?イカリちゃん?」

小さい声だったから聞き逃しちゃった。でも、イカリちゃんの言うことはきっと大切なことだ。ちゃんと聞かないと。

「いえ、何でも。気にすることないですよ。ホラ、そろそろ着きますよ。」

イカリちゃんが前を指差す。言った通り目の前に家があった。


「そんなことないブツよ。イカリ。」

「聞こえてましたか……。……ありがとうございます。慰めて貰って。」

このイカリとショクブッツの会話はラクナにもアイにも聞こえることはなかった。


♡  ♡  ♡  ♡  ♡  ♡  ♡


「ヘッビーヘビ。よろしくヘビ!未来から来た蛇の妖精ヘビ!」

「エシマ ヨシミと申します。彼らによれば私は外側から来てるみたい。あまり長くは留まれないでしょうけど、よろしくね。」

よし!整理しよう。

小さくて白い赤い目を持っててぽっちゃりした蛇がヘッビね。

ヘッビは世界の危機を救う為に未来からやってきて他の妖精達とコンタクトを取ろうとした。で、森から抜けた時に明るい紫のポニーテールで濃い紫の瞳をしてて、いかにもお姉さん的な雰囲気を纏っているヨシミさんが倒れているのを発見した。で、その光景を目撃したのがサカッナ。サカッナは背面が水色で前が白。頭は真ん丸で首とか無しに真ん丸な身体があって足部分が尻尾、手がヒレになってる。で!サカッナがムッシーに報告して、ムッシーがひとまず家に連れてきた。で!あらかた情報を聞いたり、情報を教えたりした後が今ってこと。簡単に纏めると仲間が増えた訳だ!!

「私はアイって言います!」

「私はイカリといいます。よろしくお願いします。」

「ラクナだよ。ラクって呼んでね!」

他に妖精さん達も自己紹介をした後にイカリちゃんが問いかける。

「ヨシミさんはお母さんを探しにここに来た訳ですか……。」

「えぇ。母は20年前に行方不明で、最後に調査したのがここだったから。ここなんじゃないかって。」

「20年前ってあたしの弟と同じだ!」

う〜ん。とここにいる全員が考え込む。

「少なくとも、何かしらの関連はあると考えて良さそうっシャ。」

この村の頭脳、ドッシャがやってきた。まぁ、呼ばない訳にはいかないよね。

「あの、ヘッビさん。世界の危機って具体的に何なんですか?」 

「今、未来では戦争が起きてるヘビ。その最中に過去から資源を得る方法が未来人によって確立されたヘビ。すると、滅亡論信者達が過去から資源を枯渇させようと動いたヘビ。このまま行くと奴らが勝ってしまって文明破壊光線が放たれてオジャンヘビ。」

なんだか凄いスケールだなぁ。

「つまりヘッビさんは過去の滅亡論信者を止めに来たということですね。」

単純に考えてその結論になるよね。ドッシャも頷いてるから考え方は間違ってないんだ。

「その通りヘビ!ヘッビは奴らを止める為にエモーショナルセイバーのエネルギーを過去に送ったヘビ。このエネルギーを受け取った人間に奴らを止めて貰うヘビ!」

あれ?エモーショナルセイバーって、

「それ、あたし達じゃん。ここの3人がエモーショナルセイバーだよ?」

ラクちゃんが言うように私達のことじゃない?変身後に名乗ってるし。

ヘッビは最初は驚いたような顔をしたけど、次第に困惑の色を強めていく。

「だとしたら、どうもおかしいヘビ。エモーショナルセイバーは『キドアイラク』と言われる人間が感情を表す言葉を元に作ってるから、4人いる筈ヘビ。」

「私達は愛、楽、怒の3人なので喜が足りませんね。」

ふむふむ。ここまでの話を聞く限り、私達は滅亡論信者達を止める為に未来から送られた力を持ってるってことだ。その中でまだ、1人足りないと。

「じゃあさ、アイっち達が言ってた黒い剣士やとんがり帽子の奴が滅亡論信者ってことになるよね?」

ラクちゃんが質問したところで、いきなり家のドアが開いた。

「誰?え?」

白いスーツに身を包んで、白髮のボブ、白い瞳、そして何処となく私に似てる。そんな女性が家の前にポケットに手を入れて立っている。

「ヤッホー。アイ。元気してた?」

声も私に似てて、少し高い。相手は私の名前を知ってるみたいだけど、私は初対面だ。

「私は元気だけど、えっと、あなたは?」

「そいつは滅亡論信者ヘビ!滅亡論信者は過去の人間に乗り移って行動するヘビ!だから中身はアイの知り合いとは別物ヘビ!」

いや、私も知らない人なんだけど……。

「元気か。それはお《・》ち《・》ゃ《・》ん《・》嬉しいよ。」

お姉………ちゃん……?え?どういうこと?

お姉ちゃんと称する女性は私達を一瞥してさらに続ける。

「ねぇ、アイ。この文明ってそろそろ滅ぶんだ。だからさ、みんなで違う文明に行くの。それには申請書が必要なんだけど、恣意的にこの村にはそんなこと伝えてない。それでさ、アイが私側についてくれるなら、青い髪の娘、イカリさんだっけ?その娘と一緒に別文明に行けるんだけど、どうする?」

その言葉に最も驚いていたのはラクちゃんとヨシミさんだった。

「何を考えてんの!あんたは!あんた、この2人見殺しにする気!?」

「そうよ!あまりにも酷いわ!」

2人が声を荒げて反発する。彼女は2人の言葉に苛立ちを感じたのか目つきが変わった。

「あんたらの意見は聞いてないし。私はアイに意見を求めてんの。愚民共は黙ってろっての。」

「はぁーー!?言ったね、このシラス頭!いいよ!やってやるよ!」

前進し始めたラクちゃんを私とイカリちゃんで急いで止める。

「ラクちゃん。落ち着いて!」

「向こうが売ってきたんだ!買わなきゃ失礼だよ!」

「落ち着いて下さい!下手なことをしたら、私達に迷惑がかかるかもしれないんです!お願いですから!」

イカリちゃんの訴えでなんとかラクちゃんは止まってくれた。

「へぇ~。イカリさんか。噂には聞いてたけどホントに良い子じゃん。」

目を丸くして驚いている。それすらもラクちゃんに対する煽りのように思えてしまう。

「あの、あなたも、煽りみたいに言うのは止めて下さい。お互い、嫌な気持ちになります。」

イカリちゃんの言葉で両方仲裁できたかな……。今だったら、彼女に疑問をぶつけることができ……

「私はそこのネギ頭に正論を言ったまでだから、煽ってないね!アハハ!」

駄目だこりゃ。

ラクちゃんが何も言わずに一歩踏み出した瞬間だった。

「もう、言われたこと忘れたのかなぁ!」

「ドッ……シャ……!」

彼女の声と共にドッシャが黒い影に包まれる。ドッシャは誰にも危害を加えないように意識があるうちに家から飛び出した。

「ラクちゃん!行くよ!」

やったことを後悔してるラクちゃんの手を引っ張って3人でドッシャを追いかける。ムッシーとショクブッツも後から続いて来てくれる!

「ドッシャを助けるよ!」

3人の身体を光が包みこんだ。


♡  ♡  ♡  ♡  ♡  ♡  ♡


「ドッシャを暴走させたら、どうなるか分かってるッナ?」

サカッナはヘッビとヨシミを守るようにエラを円状に広げて彼女に問いかける。

「そりゃ、一時はここに住んでたからね。最強のカードを引かせてもらったよ。」

悪びれもせず、嬉々として答える。

彼女が答え終わった後に地面が揺れ始めた。外からは聞いたこともない大きな音が聞こえてくる。

「何が起こっているの……?」

ヨシミの声は周囲の音にかき消され、誰にも届かない。

「さぁて!誰が生き残るかなぁ!」

突如、サカッナの口から釣り竿が現れ、彼女によって釣り上げられる。

「あんたは貰ってく。後々、使えそうだ。」

「離すッナ!ナァーー!」

サカッナは小さな檻に入れられ、電撃を浴びせられている。

「酷いわ!返してあげて!」

ヨシミの声は届かず、背を向けられて、何処かに去ってしまった。

どうしたらいいの……。

パニックになりそうなのを抑えて、冷静に状況を整理する。

皆の会話を元にすると、おそらく、今、外で起きていることはドッシャさんの暴走によるもの。但し、ドッシャさんの暴走は滅亡論信者によって引き起こされている。これに対抗できるのがエモーショナルセイバー…。つまり、さっきの3人よね。本来は4人なんだけど、「喜」が足りないから3人。これって私でもなれるのかしら。

「いいかしら、ヘッビさん。私もエモーショナルセイバーになることは可能なの?」

隣にいるヘッビさんに近寄って聞こえるくらい大声で話す。あんな私よりも若い娘3人に任せておけるほど私の性根は冷酷じゃないわ。

「ヨシミもエネルギーを受け取っている形跡はあるヘビ。だから、後は気持ち次第ヘビ!」

「できるのね。分かったわ。ありがとう。」

喜びと聞いて、家族や友人の笑顔を思い浮かべた。私は皆の笑顔が好きよ。私はこれまで、笑顔を見る為に、喜ばせる為に行動してきた!お母さんを見つけるのもそう。お母さんを見つけたら皆、喜ぶ。そうなれば皆で笑い合って別の文明へ移動できる。

私はその為に努力するの!

3人を助けるのも、皆を喜ばせる為!それ以外の理由なんて、些末事!私は一時の感情で皆を助けるの!

 

背中がオレンジに発光し、ヨシミを繊維状の光が包み込む。内部でヨシミの全身を深いオレンジ色の帯が巻き付いて覆っている。

始めに足の帯が解け、ダークオレンジのレギンスと茶色のブーツが姿を見せる。左太ももには小物入れ付の茶色のベルトが2本巻かれ、その中に明るいオレンジの固形物が収納される。次に胴体と腕の帯が解け、ダークオレンジのインナーの上に半袖のワイシャツを装備、元々豊満な胸を強調するかのように胸の下に茶色のベルトが巻かれる。また、腰にもベルトが巻かれ、中央部に金色で円形のコスチュームを装備する。そして髪と瞳が明るいオレンジに変色する。ポニーテールの結び目には金色の装飾が成される。最後にフード付の明るいオレンジ色のローブを羽織る。フードを被ったことで顔に影ができ、その影が目の輝きを強調する。包んでいた光が斜めに裂かれ、そこから三叉で派手な装飾のされた槍を持ってヨシミが現れた。


「誰かと紡ぐウキウキの気持ち!『喜のエモーショナルセイバー』!」


「これで、4人揃ったヘビ!誰にも負けないヘビ!」

ヘッビさんの言うように私は今、無敵の力を手に入れたような気分。

「えぇ!皆を助けるわッ!」

家の外に出て、地面を蹴る。

すごいわ。まるで鳥になったかのように軽やかに進むことができちゃう。

3人の元へ行くのは簡単だった。けれど、問題は3人の戦況よ。3人は無尽蔵に飛来する泥や砂、岩にずっと晒されてる。そのくせ、相手は姿すら見えない。どう考えても劣勢ね。でも、それを打開するのが私よ!

まずは、相手に姿を与えて攻撃を与えられる状況をつくる。

小物入れからオレンジの固形物を取り出して、槍の持ち手に挿入する。

すると、槍が光を纏い、ビー厶が放たれて、地面の光っている場所へ的中した。

地面が脈動し、砂の巨人を形作っていく。丁度、巨人の胸に光が見える。作っている瞬間、相手の行動の手が止んだ。

「今よ!少しでも、距離を詰めるの!」

私も地面を蹴って、距離を詰める。

一番早く距離を詰めたラクちゃんが切りつける。次に辿り着いたイカリちゃんが炎の斧で切り上げる。その際に巨人は体勢を崩してしまう。隙を突いて背後からアイちゃんの矢が炸裂する。

「イイイイイィィィィ!」

3人の連携でドッシャさんは攻撃に移れない。

「ヨシミさん!お願いします!」

アイちゃんが矢を放ちながら、私に任せてくれている。私はいくら初心者とはいえ、年長者よ。任されたからにはやってみせないと!

「グラッドスピアーー!」

私の位置は巨人の胸。そこにオレンジ色の光を放ちながら回転している槍を突き刺す。回転は巨人の身体も絡め取り、光の中に吸収される。

全てが吸収された後、そこには元に戻ったドッシャさんが横たわっていた。


♡  ♡  ♡  ♡  ♡  ♡  ♡


「うわぁ。完封されちゃったよ。ドッシャも相当、力を抑えてた感じだし。やっぱり最強ともなると私達の力に耐えちゃうか。」

白髮の女は掌サイズの檻を指で回しながら、結果を見届けた。

「はぁ、はぁ、サカッナを返しなさい!」

4人のエモーショナルセイバーが女の前に現れ、疲労困憊のヨシミが大声で言う。それに対して女は少し考える素振りをしながら答える。

「う〜ん。あっ、そうだ。私、これからでっかいお城を造るからさ、そこに来てよ。そしたら返したげる。そこでアイの返事も聞かせてもらうよ。」

ラクナが他の3人より前に出て、腕を組み女の提案に反応する。

「負けた上に人質まで取って、最後は自分の土俵に上げようっての!?シラミまみれの頭じゃ、そんなことしか考えられないか!この弱虫!」

女は舌打ちと共に目つきを変えて怒りを露わにした。

「私の勘だけどさ、お前碌な死に方しないだろうね。アハハハ!またね!アイ!」

怒りに満ちた表情から、いきなり笑顔になり、そのまま弾けて消えてしまった。


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