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チエ11

実験は想定を上回る結果を出した。

暗黒騎士さながらの甲冑を纏い、腰には剣を備えている。また、想定以上のエネルギーを瞬時に出力し、未来のスイッチくらいなら触れることもなく破壊できる。


とはいえ、まだまだ彼にはデータが必要だ。

そこで何故か起きることに成功した変態に急遽ヘビに取ってきてもらった未来の武装を装着させ戦闘を行わせた。


序盤こそ劣勢だったものの、次第に順応していき、最終的には勝利を収めることに成功。ただ、戦闘の際、激しく損傷したため、修復、改善に時間を有することとなった。


私には1つだけ誤算があった。

ヒダさんは子供を実験材料に使ったことで罪悪感に苛まれ、完全にメンタルを壊してしまったのだ。


ヒダさんにはヨシミちゃんという12歳の娘がいる。自分の娘より幼い子供を手に掛けて、その子の断末魔を目と耳に焼き付けたことが親として自責の念に堪えないのだろう。


結果として彼女は自室に引きこもってしまった。


子供を使って心が痛むのは分かるが、それでも1人の未来を犠牲にするだけで大勢の未来が守られるのだから安いものではなかろうか?

そこまで病む必要があるだろうか?


変態に関しては予定通り子供を孕ませることに尽力してもらっている。

報告によれば毎日50人前後の女性と行為を行っているようだ。その中の何人の女性が降ろさずに育ててくれるかは不明だが、数が数だ。流石に全国の産婦人科でも手が回らないだろう。つまり、必然的に産むしかないという人間が現れるわけだ。


かく言う私はここ5、6年近く文明移住の方法の実用化に向けた取り組みをしている。

方法自体は既に確立できていて、安全性の担保と全国民に普及させるだけだ。


一応、普及案として全国民の携帯端末を私の端末を通して未来のインターネットに繋げるというものがあるにはあるが、これで移住をするとなるとハードの改良が必要になる。


そこが問題なのだ。この文明が滅びるということを信じもしない国民がハードの改良要請を受け入れる筈がない。

実際、彼等の生活は現在の携帯端末の性能で十二分に成り立つ。である以上、彼等にとってハードの改良は不必要な時間を使われることになる。


となると、ソフトで実現するしかない。ソフトであれば強引に端末に入れることが可能だ。

現在はどうやってソフトで文明移住を可能にできるか試行錯誤中だ。


「ねぇ。いい加減出てきて来んない?あんたの知恵が欲しいんだけど?」


ヒダさんの自室の前に来て、助言を乞うが返事がない。外側(こっち)に関しては私よりもヒダさんの方が詳しいのだから、なんとか言ってもらわないと困る。


一応、研究者達にも聞いてはいるがあれ等は完全に自我のない機械だ。ヘビがマインドコントロールでひたすら操っているため私の命令しか聞かないし、発言はイエスかノーだけだ。


「あんたもこの世界を救う責任担ってんの!今更、逃げれるわけないじゃん!」


私の罵声に反応したのか部屋の中からガサガサという音が聞こえた。

数秒後、扉が自動で開き、薄紫の長髪を垂らしたヒダさんが姿を見せたかと思えば、いきなり手を取られ部屋に連れ込まれた。


「なっ……!?」


私は言葉を発する隙もなくベッドに倒される。

そして、すぐに謎の機械を頭に着けられ、私の視界が切り替わる。


ぐるぐるとした空間。

言語化するならばこの言葉が一番正しいだろう。

空も地面も円の形になっており、それが幾重にも輪をかけている。

そんな円が波打つように不規則に色を変えながら動いている。


最早、天と地に境界が見えない。

…気が狂いそうな空間だ。


「なんのつもり」と声を出そうとしたが、喋ることができない。


何故なのか。原因は分からないが……手足が大量の針で木製の椅子に固定されていることは分かる。

にも関わらず身体は痛くもないし、出血もしていない。

まるで人形だ。いや、それ以前に何処だここは?


「あんたのお友達はここにはいないよ。」


本当に何処からかローブを羽織り、トンガリ帽子をはめ、杖をもった魔女のような老婆が姿を見せた。


誰?友達って…。ヘビのこと?だったらあいつは………?まさか、ヒダさん?


「ここはバーチャルワールド。今や、社会の主戦場さ。お嬢さん……いいや、メグミ チエさん。」

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