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チエ9

変態は息を荒げながら、がむしゃらに身体を起こす。


私はそんな変態を横目に見て、ヒダさんに話しかけた。


「ねぇ、ヒダさん。これからのことなんだけどさ、知っての通り」


「いやいや、先にあの男の人を警察に渡しましょうよ!」


私の言葉を遮ったかと思えばつまらない。そこまで不思議なことではないだろうに。


「ダメ。あいつは利用価値があるからね。」


「利用価値って……。そもそも人殺しなんでしょう!?だったら尚更、警察に渡さないとダメよ!」


こいつもか。おおよそ、ルールで決まってるとか、古くからのしきたりとか、人道に反するからとかそんな理由だろう。村のゴミ共と一緒だ。


「分かってるとは思うけど、この文明に以前程の時間はない。今更、くだらない理由で私の決定を阻害しないでくれないかな?」


「くだらないですって!?いい?チエさん。これはあなたの考えている以上に―――」


「若者相手にキーキー鳴いてんじゃねぇよ。クソババア。そもそもてめェ如きが意見すんな。面白みもねぇ。」


予想外の加勢に私も驚く。まぁ、考えれば、自分が捕まらなくても済むのだから加勢するのは当然か。


「……チエさん…。考え直す気はないの?」


私の両肩に手を掛けて、真剣に私を見つめ問う。

それでも私は臆せず、コクリと頷いた。


「なら、私はこのプロジェクトを降りるわ。さようなら。」


そう言って、私に背を向け、出入り口の方へ歩いていった。


「それは困るな…。」


ヘビをヒダさんの腕に巻き付け、私と一緒に瞬間移動する。


着いたのはゴミ共を始末した研究室だ。


「なに……これ……ッ!?」


人としての面影は残っていない筈だが、ヒダさんを口を両手で覆ってしゃがみ込んでいる。本能的に人だと認識できるのか…。


「ヒダさん。あなたにはやるべきことが山程ある。だからさ、そんな簡単にやめれないと思うよ。」


そう言いながら、ミキサーの下部を開く。そこにはガラス越しに白く細いウネウネとした物体があった。


「これは見やすいように加工されたこいつらのDNA。この中にさ、アニマッルに関する情報伝達物質があるみたい。で、これをあの変態の精子に組み込んで今後生まれてくる子供の組織を村の人間と同等にしたいわけ。」


今のところ、緊急時に使用する生命資源の貯蓄が目的だ。もしくは移住成功後にデコイにする為の資源として使用する。

まぁ、デコイが効果的かは検証の余地はあるが。


「まだまだ、やることは沢山あるからさ、さっさとこれ終わらせちゃってね。」


果たして聞いているのかいないのか?少し気掛かりになりつつも、携帯端末の画面を見る。すると、そこには申込依頼の通知があった。


私が出した広告を見て実験体になろうという意思を持った者が名乗り出たというわけだ。中々、献身的ではないか。


「それじゃ、私は向こうの実験設備点検しなきゃだから行くね。瞬間移動必要な時はいつでも呼んでね。」


森の研究施設に帰ってみれば、あの変態が仕事に来た研究者達を襲っているではないか。

これでは職員の数が大幅に減ってしまう。全く、面倒事を起こすのが好きな変態だ。


「……どうせ実験体に使うんだ。やっちゃえ。」


ヘビが地面を這い、首元まで上り詰めてかぶりつく。

ついでに神経毒と未来のテクノロジーを牙から注入する。死ぬか耐えるかは不明だが貴重なデータになることに違いない。


流石に変態はブルブルと全身を痙攣させながら仰向けに横転し、白目を剥いてピクピクしている。

   

「皆を襲ったこいつは…貴重なデータになるの。こいつの行動には制限を掛けておくから、文明移住の研究を続けてもらえないかな?」


私の呼びかけに反応はない。泣きじゃくっている女性職員や立ちすくんでいる男性職員の姿だけがそこにある。


ストライキなんてされたらたまったものじゃない。なんとかして呼び止めなければ。


「意気消沈の所悪いけど、君達の文明には20年後に監査が来るようになっている。それまでに成果を残すことが出来なければ君達の文明はそこまでだ。僕としては文明を発展させて欲しいけど、彼女はそれを諦め、君達を守るために文明移住の決断を下した。君達はそんな彼女に応える気はないのかい?」 


ヘビの声を聞いた職員達は一度頷いてから、自分達の持ち場に向かった。ヘビの言葉に感化されたのか、マインドコントロールなのか何がきっかけかは不明だがヘビに助けられたことは確実だろう。

 

「ありがとね。助かった。」


「まぁね。ここで止まられると僕にとっても痛手だからね。なにせ、手ぶらで帰ってしまうことになる。」


それもそうか。


私が何気なく携帯端末を点けると今度はヒダさんからのメッセージの通知が来ていた。ようやく向こうも決心が着いたようだ。


とはいえ、私は実験設備の点検を終えなければならないわけで、ヒダさんを迎えに行くことは出来ない。不親切な対応になってしまうが、仕方ないか。


「ごめん、ヘビ、ヒダさんを迎えに行ってくんない?」


「了解。」


端的にやり取りを済ませ、点検に取り掛かる。


それにしても、20年後に監査が来るか…。初耳だし、とうとう本当に時間がなくなってしまったようだ。

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