チエ5
ダイソン球が完成し、かつてない程のエネルギーを手に入れ、恒星文明に到達した私達は働く必要のない社会を目指し、あらゆるものの自動化を進めた。
並列して、宇宙開拓も開始、およそ1年でコロニーが実際に開発された。
材料は当然、現存する生物を用いた生命資源。ただし、その数はアニマッルを使用することで無限に増やすことができる。
これまでにあった再生可能エネルギー全てを無に返すほどの代物だった。
私に初めに協力してくれた骸骨人達は銀河文明を目指すと豪語し、方法を立案中。
当の私は上手く行っている今の現状をかなり不審に思っていた。そのため、もしなにかあったときの為に文明移住を考え始めた。
この発想は宇宙開拓の際に惑星移住という言葉が出た時に思いついたことだ。
「不可能ではないよ。ただ、そんなことされると利益が出ないんだ。なるべくなら、その方法は最終手段にして欲しい。」
ヘビはそう言って具体的な方法への明言を嫌な顔をして避けた。
こいつがいうことはよく分かる。
私達が文明移住をする場合は、この文明に将来性がないことが確定している場合だ。
この時点でおそらく、私達の文明は滅びてしまうだろう。だから、そうはならない為に私達の文明を捨てて、別の文明に移住する。そうすれば、私達は多分生き残れるはずだ。
しかし、ヘビに残された文明は私達が捨てた将来性のない文明。
折角、お金を出して買ったのに売れずに消えてしまわれたら、そのお金は無駄金という扱いになる。当然、利益も出ない。それどころか、マイナスな気分だ。
それがどうした?
私のやりたいことはこの文明、いや、文明に住む人々を守りたいのであって文明を守りたいのではない。
だったら、取り得る手段は全て取る。
「成功例とかあるの?」
これがあるか、ないかで難易度は大きく変わる。確認は必須だ。
「…悪いけど、成功どころか実証例すら見たことないよ。君はかなり簡単に考えているようだけど、やろうとしていることは文明侵略と見られてもしょうがないんだ。もっと簡単に言うと、人様の商品に傷を付けに行っている訳だ。そんなこと、高度文明が許す筈ないだろう。」
言われてみればその通りか。
……………いや、妨害手段は何だ?
「…調子に乗りすぎだ。君達に僕らの技術を打倒できる手段はない。というか、君達は検問の時点で弾かれるよ。存在証明ができないんだから。」
「具体的に教えて貰えない?」
「諦めた方が身のためだと思うけどね……。まぁ、いい。至ってシンプルな方法だ。君達は別文明に移動した時点で検問が行われて、その文明の人間かどうか証明する必要がある。といっても、別に君達が説明するわけじゃない。君達の存在番号を見るのさ。その番号で君達が何処の文明出身で、文明移動の認可を得ているのか分かる。もし、証明に失敗したら君達は存在ごと消されるよ。もし、成功したらその文明で生きて行くことが可能だろうけどね。」
存在番号を偽装したら簡単に入れるのでは?
「できる訳がないだろう。存在番号は僕らからしか干渉できない概念だ。君達は知覚することもできないさ。」
なるほど…。だとしたら不可能だ。1つの方法を除いては。
「僕を犯罪者にする気かい?言っておくけど、僕は君達の為に認可を取ってあげるなんてことはしないよ。僕だって損はしたくない。」
確かに、その方法もあったけどこうなることは分かっていたから考えていない。私の考えている方法は真っ向から存在消滅に対抗するという方法だ。
どんな技術で消滅させるのかは不明だが、未だ誰にも使用されたことのない技術だ。ケースがない以上、捻くれたやり方をしたら、エラーを吐かせることに成功するかもしれない。
「君というやつは……。その通りだよ。消滅させる技術は少し古い時のものだ。何せ、使う機会がないからね。それでもメンテナンスはそれなりにされているから、余程捻くれていないとエラーなんて吐かないだろうけど。」
「うん。それが聞けただけでも上々。それでさ、ちょっと相談なんだけど、未来の技術をこっちに少しだけ持ってきてくんない?」
理由は単純、未来の性能に追いつけるものを作るためだ。取り敢えず、性能を超えないと奇抜な作戦も水の泡になってしまう。
「そこで得た技術を以て文明移住を成し遂げると…。いいだろう。正直、僕としても興味が無いと言えば嘘になる。僕の手が汚れない範囲で協力させてもらうよ。」
「ありがと。」
手札は集まってきた。次にアニマッル無しでの生命資源の生成。
これを確立させなければ、万が一の場合、全てがパーだ。流石にそうなってもらっては困る。
一応、こちらはデータ自体は集めてるから、それを解析して可能なら実行に移すまでだ。
「ふぅ〜。」
私はデータを解析にかけ、ぐぅっと背を伸ばす。どうにか一段落だ。
地下の研究施設は少人数用に改装された。
メインの施設は全国が絡んだことにより、都市部に移された。
そこでは主に研究、開発、実験等々を行なっている。とはいえ、実際に生命資源を宇宙に飛ばすのは森の近くからじゃないとアニマッルの影響をフルに受けれない。
まぁ、パスを繋げてるからそこまで心配することじゃないんだけどね。
だから、基本的に地下は私や骸骨人達、たまにヒダさんが使うくらいだ。
と、色々考えてたら、解析結果が出たみたいだ。
「どれどれ〜。」
結果に目を通す。
あまり良好なものとは言えない。
「…人体実験が必要…か……。嫌いなんだよね……。」
生命資源の時も最初は人体だった。人間レベルの知性体を一度犠牲にして、そこからさらに解析を進めていく。これが禁忌に手を伸ばす実験の基本だ。
やらないわけにはいかない以上、携帯端末を開き、適当に広告をでっち上げ一番下に小さく、『犠牲者大歓迎』と付け足した。
2、3人釣れればいい方だ。その人数で何としても結果を出す。
♥ ♥ ♥ ♥ ♥ ♥ ♥
2週間程経っただろうか。人体実験のプランを考えた後、ヘビに頼んでいた未来の技術を拝見、攻略はまた後に回す。そして、最近は顔を出してない村へと向かった。
生命資源を創っている時は村によく戻っていたが、インフラが完成し、特別生命資源に頼らなくても維持できる社会になってからは戻っていない。
というより、あまり戻りたくない。外で暮らしている内に価値観が大きく変わって、村の人間と話が合わなくなってきたのだ。
そして、話の齟齬が大きくなるとすぐに一度死んでみたらと提案される。
死ねば身体の不具合が解消されるからだ。齟齬が起きるのは私がおかしいから。
そんな感じで見てくる人間と触れ合いたいとは思えなくなった。
彼/彼女等に全く悪気はない。それどころか心配までしてくれてる。
そうなのだ。そうなのだが、
「なんか無理……。」
森を抜け、村に着く。
以前来た時とあまり変化はないようだ。
そう言えば、外から村に来るのは私しかいないんだったか。何故か皆、来たがらないからね…。私が悪い印象を付けまくってる所為だろうけど……。
私は足早にアニマッルがいつもいる場所を目指す。
アニマッルには生命資源とのパスを渡しているから、それが無事か確認しなければならないのだ。
「アニマッル久し―――――え?」
「お。久しぶりマル!チエ。」
「……お洋服は、どう、したの………。」
「あぁ、それマルね。気に入ってたマルけど、チエのお父さんが燃やしてしまったマルよ。」
―――――――終わった……




