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チエ2

「ごめん。意味が分かんないんだけど…。」


先のヘビの言葉の後半部分が抽象的過ぎて理解ができない。というか、適当なことを言っているのではあるまいか。


「神話のオマージュさ。気にしなくていい。まぁ、端的に言うと君達の価値観っておかしいよねって話さ。」


えぇ…。さっきまで精神構造がどうとかいう話だったじゃん。どういう事の運びで私達が馬鹿にされるわけ…?


「少なくとも僕らよりは馬鹿だ。僕らは未来人だからね。頭の出来が違うのさ。」


何こいつ。人の考えていることを勝手に読んで、なんかムカつく。あぁ、これも読まれちゃうのか。


「あんたさぁ。さっきから人を挑発して何がしたいわけ?そもそも未来人っていう証拠もないでしょ?」


「いや、証拠ならあるよ。君達なら、一瞬で信じちゃうやつがね。」


するとヘビはキューブを空中からなんの前触れもなく取り出し、不敵な笑みを浮かべる。


キューブが突然、発光したかと思うと、光景が切り替わっていた。

無数の光の粒が世界を覆う真っ白な場所だ。


「……何を…。」


「これが僕たちの世界さ。尤も、君と僕の見ているものは違うけどね。君にはきっと光の粒子にしか見えていない筈だ。でも、実際に君の前にあるのは遍く文明の数々だよ。」


不思議とパニックにはならなかった。この状況が何故か飲み込めていた。


考えたこともなかったが、未来の世界があっても、おかしくはない。そこから人が来るのも同様だ。

そして、そこの光景がこれ。


私とヘビで見え方が異なるのは未来人は最早、人間の域を超えているからではなかろうか。


「…すごいね。驚いたよ。君レベルで物分かりがいい人間は初めてだよ。うん。君の思っている通りで大丈夫だ。」


ヘビは随分と満足気に頷き続ける。


「……それで?確かに証拠は見せてもらったけど、私に何を望んでるの?」


すぐに切り替えてヘビに問いただす。

わざわざ未来から過去に来た以上は大方、過去を変えて欲しいとかそういうやつなんだろうけど。


「そうだね。強ち間違ってはいない。ただ、1つ勘違いをしているようだから訂正させてもらうよ。君達の未来は必ずしも僕達の文明に繋がるわけじゃない。君達の未来は様々な世界線で分岐しているから、どの未来を選ぼうが僕達は何も口出しはしないさ。」


「だったら、どうして過去を変える必要があるのさ。」


「僕達の文明には『文明ビジネス』なるものが存在しているからだよ。観賞用、旅行用、希少性が高いから等様々な理由で未来人達は文明を所有する。でも、文明はその辺に落ちているわけじゃない。誰かから買わなければ手に入らないんだ。買うということはお金がかかる。資金源は何なのか?それが文明を売って手に入ったお金だ。」


意気揚々と話してくれるが、そもそも私達にはお金や売買の概念がピンとこない。

頂戴と言ったらどうぞと物が手に入る世界で生きているのだからしょうがないが。


「あっ。確かにそうだったね。簡単に言うと物の交換に発生するものがお金だ。買うのに必要なのがお金だし、売ると貰えるのがお金だ。それに所持しているお金は有限だ。だったら、より自分にとって価値のあるものを買いたいだろう。逆に価値のあるものしか売れないわけだ。そうすると、売り手は文明の価値を高めてから売ろうとする。このために文明に干渉するわけだ。どうだい?話の筋は見えてきたかい?」


「なんとなくだけど。つまり、あんたは私達の文明の価値を高めるために干渉してるってことね。」


大前提、文明に干渉する条件が価値の上昇のみだった場合だが。


「よく分かっているようだ。たが、君達の場合はさらに厄介な理由が付きまわる。君達の場合は文明の価値がとても低いんだ。だから誰にも買われない。そうなるとその文明は消滅の一途を辿る。消えられたら元が取れない。それは僕達も嫌なわけだ。そうならない為に干渉するというのが全容だ。」


消えちゃうのか……。無価値なものは消えていいっていう価値観なのかな?


なんか嫌な未来だな。


「文明の価値って具体的にはどうやったら上がるの?」


「様々だよ。希少性を高めるもよし、文明を発展させるもよし。その両方を両立させるのもよしだ。君達の場合、簡単なのは文明発展だろうね。基準としては君達の文明で提唱された文明レベルを使うといい。そのレベルで最低でも恒星規模のエネルギーを使えるようになれば価値はマイナスからゼロに回復することができるだろう。」


プラスにするなら、銀河規模ってことか……。いや、無理でしょ。


「なんか嫌な予感がするんだ。頼むなら私以外にしてくれる?」


私は断ることにした。私だってまだ6歳だ。皆を背負うには幼すぎる。


「いや、君が一番向いているんだよ。この文明ではね。その証拠に君は僕の話を理解している。君以外の人間が聞いても皆、口をあんぐりと開けてポカンとしているよ。」


そんな馬鹿な……。


「証明しよう。」


キューブが光り、場面が変わる。


そこは多くの人々が行き交い、大きな建築物が立ち並んだ見覚えのない場所だった。


「ここは紛れもなく君達の文明だ。と言っても外に出たことがないんじゃ、本当にその通りか疑わしいものだろうけど。」


私達が住んでいる所にも知らない場所があった。取り敢えず、そう考えよう。

問題なのはこの人達が本当にヘビの話を理解できないのかどうかなのだから。


「そうだね。では、早速。」

 

そう言ってヘビは人混みの中に紛れ、「聞いてほしい」と注目を集めてから今、この文明が置かれている状況を説明し始めた。


ヘビが言っていた結果より、かなり深刻な結果となった。


そもそも、誰も聞いていない。

無視する者。嫌そうな顔をして足を速める者。立ち止まったものの知らない道具を使い始める者など、最早、理解する/しない以前の話であった。


「この通り、彼/彼女等は文明がどうなろうが、自分達が消えようが、消えまいがどうだっていいのさ。大事なのは今を生きることなんだろうね。」


私は絶句した。唖然としてしまった。


でも、すぐに気持ちを切り替える。

誰もやらないと言うのなら………。


「私がやるしかないってこと……。」


「よく分かってるじゃないか。」

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