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チエ1

私が、この村の価値観に違和感を覚えたのは何時頃だろうか……。物心ついた時から合わないなとは思ってた気がする。


でも、強いて言うとしたら、この出来事だと思う。



私にはとても仲の良い女の子の友達がいた。その子は女の子だけど、男気が強くて、何か言われたら真っ向から言い返すし、大食いだし、力持ちだし、優しい。

それに、話していてとても楽しい子。


私はその子と毎日、朝から晩、お風呂の時間も一緒に過ごすことが多かった。


けれど、ある日、その子は躓いて道端の植物を思い切り踏みつけてしまった。

当然、ショクブッツに殺される。中々惨たらしい死に方だったが、私はこの時、ドジだなぁとしか思わなかった。何故か?この子はアニマッルによってすぐに戻ってくるからだ。


「こいつの自業自得ブツ。」


「そんなんだから嫌われるんだよ。」 


当然、私もショクブッツから草を生やされ殺された。


「お〜い。」

聞き覚えのない低めの声が誰かを呼んでいることに気付いた。


私は蘇ったのだ。復活後の姿は精神構造によって変化するが、基本的に変わることはない。


「お〜い!」


それにしても友達は何処にいるのだろう?私よりも数秒早く死んだのだからここで私を待っていてもおかしくはないはずだ。


私は周囲を見回す。そこにいる人物は手を振りながらこちらへ走ってくる男――――――

「…え?」

思わず声が出た。


「やっと気付いた。さっきはやっちゃったなぁ。いつかやり返そ!」


高身長でガタイの良い好青年だ。

私は見たことがない。でも、これって性転換以外考えられない。


復活後の姿は精神構造に準ずる。友達は男気が強かったから性別が変わってしまったのだ。


「じゃ、行こ!」


友達が私の手を握ろうと腕を伸ばす。

私は反射で手を引いてしまった。


「……どしたん?」


……頭では分かっているのだ。姿は変わっても中身は彼女のままであると。

……この嫌悪感は何……?


「いや。何でもないよ。」

私は思いっ切り、友達の手を掴んで歩き始めた。


他の友達は性転換した子に対して今まで通りになんの変化もなく接していた。それが、私は不気味だった。

女の子達の空間に不相応な長身の男が混じって女の子らしいことを話す。

気持ち悪いことこの上ない。


別に私は男が嫌いなわけではないのだ。ただ、今まで女の子だった子がいきなり男になるという状況が気色悪いだけなのだ。


その夜はいつものようにその子と一緒にお風呂に入った。いつもみたくじゃれ合って、形だけは笑っていたが、内心は恐怖で一杯だ。まるで赤の他人に接しているような感覚。

それに、股についた突起物が余計に嫌悪感を高めてくる。どことなく品がない。あんなものをぶら下げている人間を最早、同じ人間とは思いたくなかった。


私は翌日アニマッルに談判を持ちかけにいった。


「ねぇ。性転換って意味あるの?」


二頭身で黄色の身体。頭にオレンジ色で三角のたてがみを生やし、すき間から小さな耳がひょいと出ており、真っ黒な目にオレンジの鼻をした、さながら小さなライオンのような妖精だ。


「性転換というより、精神構造に合わせることに意味があるマル。そうしないと効率的な仕事ができないマルから。」


…まぁ、その通りだ。極端な例を出すと、赤ちゃんの精神構造で大人の身体にされても、全く仕事ができない。こういうことを無くす為に精神構造にあった身体を提供しているわけだ。


分かってる…。けど……ッ。


「私……なんか、気持ち悪いんだよ。」


吐き捨てるように私は言った。

それを聞いて、アニマッルは何が言いたいのか分からないといった顔だ。


「私さ、皆みたいにあいつと接しきらないの。」


う〜んと唸り、たてがみを短い手で触りながら、自信なさげにアニマッルは答える。

 

「きっと、慣れていないだけマルよ。または……チエの精神構造になんらかの異変があるのかもしれないマルね…。もう少し考えてみるマル。」


そう言い残してアニマッルは去ってしまった。他の妖精達と情報を共有して解決策を練るのだろう。



「君は本気で精神構造に合わせる必要があると思っているのかい?」


近くにあった木に身体をぐるぐると巻きつけて、白いヘビは私に言った。


「必要はあるみたい。そうしないと効率的に仕事ができないからって、アニマッルは言ってるよ。」


ヘビは私に言った。

「君達の仕事の効率が落ちることは決してないだろう。精神構造とは異なる身体を提供すると、君の目が開け、妖精のように善悪を知る者となることを妖精は知っているのさ。」



この出会いが私を大きく歪ませる原因となった。


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