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イカリちゃんの爆発は工場を破壊した。


壁という壁は殆ど形を無くしていて、地面も崩壊している。

私は壊れかけの壁の支柱につかまることでなんとか難を逃れた。


髪はチリチリで耳も爆発の後からキーンという音が響いている。目は辛うじて防げたが、それでもドライアイになってしまうくらい水分を奪われた。


そして、とうとう私は1人になった。


「どうして……。」

枯れた目からは涙すら流れない。


『アイ〜。そんなとこいたら危ないよ〜。』


私よりも少し高い声が浮上してきた謎の機械から聞こえる。


『ほら。早く乗って。』


機械は足場を広く展開して私に近づく。

………哀しいや。なんといっても哀しい。


足を機械に預けると、機械はゆっくりと下降し始めた。


『残念だったね〜。イカリちゃんは生かしておくつもりだったんだけどな〜。』

 

機械から聞こえてくる私に似た声は哀しみで埋め尽くされた私の脳を刺激する。


「他の皆は殺すつもりだったんだ………。哀しいよ。それは。」


『殺すつもりはなかったよ。私としてはどっちでもいいって感じ。あいつらが勝手に死んだんだよ。情けないよね〜。アイもそう思うでしょ?』


「哀しいね……。」


『そ。哀しい奴らだよねぇ。』 


普段の私なら猛烈に言い返していそうだが、今はそういう気分になれない。

本当にただ、哀しいのだ。


場所は工場から少し離れて森の中へ入った。

地面との距離は近く、降りようと足が動いた瞬間、地面は機械的に割れ始める。

…危なかったみたいだ。


静かで暗い中を機械が照射する光を頼りに進んでいく。哀しい場所だ。

3分くらい経つと、奥に明るい光が見えた。


「ヤッホー。イカリ。久しぶり!」


光の元に着くと、白い髪に白い眼、白いスーツに身を包んだ女性―――チエが私を出迎えていた。


私は何も言わずに機械から降りる。


「元気ないね〜。どっか具合でも悪い?」


チエは軽快なステップを踏みながら私に近づいて、私のおでこに手を当てたり、背中を擦ったりして私の具合を嬉しそうに確かめる。


「ちょっと熱いかもね〜。ベッドあるから寝てる?あっ、なんか作るよ。ちょっと待ってて。」


そう言ってチエは私に背中を見せた。


私の周りを黒い光が覆う。

だが、すぐに光は影に消えた。

そこにいるのはパンプスにストッキング、そしてワンピース。全てを黒に統一し、首には真珠のネックレス。髪はさらに黒くなり光を通さない。両眼はとうとうハイライトがなくなり真っ黒になってしまい、左手に無色透明の数珠を下げたアイの姿だった。


右手を数珠に掛け、強引に引き千切る。バラバラになった数珠の1つ1つは床に落ちることはなく、縦横無尽に空中を動き回り始めた。


数珠の玉は大きい携帯端末や長方形の鉄の箱、赤、黒、黃、白の太い糸などの機械類の中に侵入し爆発したり、光線を撃ったりして地下内の設備を悉く破壊していく。


「本当はさ、工場で出迎えたかったんだけどねぇ、あそこまで壊されたら流石に出来ないよねぇ〜。」


アイ以外何も見えていないのだろうか、チエは何も起きていないと言わんばかりに周囲の爆発には反応せず、おぼんに小粥を載せて歩いてくる。


本人は無反応でも、小粥の入った茶碗はそうはいかない。爆発四散した機材の部品が何処からともなく飛んでくる。

その部品が茶碗に当たってしまいパリンという音を立てて割れてしまった。


「あれ?アイ。その服どうしたの?」

茶碗や周囲の爆発には気づいていないがアイの変化には敏感だ。とはいえ、これでチエは何かしらの違和感を覚えた。


「…哀しいね。」


「ちょっと待って!ど、どうなってるの!?これ!?」

チエが気付いたと同時に警報が鳴り出す。


「やっば。まずいよ!アイ!逃げるよ!」


「グアァァァァァッ!」


耳を突き刺す咆哮が轟く。

その声の主は獅子の上半身、山羊の下半身、蛇の頭がついた尾を持ち、始祖鳥のような翼を携えた怪物だった。


「…アニマッル…。あなたも哀しいんだね。」


黒いオーラを纏う怪物を正面からアイは見据える。


怪物は唸り声を上げてアイに襲いかかる。――――刹那、108の数珠の玉が一斉に光線を照射し、怪物の身体の隅々まで撃ち抜いた。


怪物の眼からは生気がなくなり一瞬で息絶える。


 ♥  ♥  ♥  ♥  ♥  ♥  ♥


       「勝った。」 

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