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―幕間―無駄な努力

僕―アスハラ ケンはこの程度でへこたれる程、弱くはない。

絶望はするけどやりようはある。


ラクがいなくなるのならば、連れ戻しに行けばいいだけのことだ。幸い、何処に行ったのかは既に分かってる。

僕は3日で準備を整え、ラクの行った森の中へ入っていった。


「ラクーー!何処だーい!」


森に響き渡る大きな声でラクの名前を呼ぶ。


「ラクーー!シンーー!」


返事はない。ただ、僕の声が響くだけ。


「君は……定員オーバーだね。大人しくしてて。」


突然、景色が森の外の景色に変わる。  


「は?」


僕は呆気に取られて3分程立ち尽くした。

なんとなく、考えて1つの結論を導く。


「追い出された……?」


でも、誰に?何のために?どうやって?

考えれば、考える程分からないことが増えていき、むしゃくしゃしてもう一度、森の中に足を踏み入れる。


今度は一瞬だった。すぐに元々いた場所に戻っている。

辺りは暗くなっている。

僕がここに来たのは夕方だからもうそんな時間になるのか。


夜の森は危険だと聞く。だが、ここには生き物の気配1つない。つまり、何かに襲われる心配はしなくて良いのだ。

僕は意を決してまた森の中へ足を踏み入れた。


「いや、流石にしつこいよ。」


言葉と共に姿を見せたのは10M以上の巨大な蛇の化け物だった。

白い鱗で全身を覆い三対の紫に光る目を輝かせている。

「ぁ………。」

いや、夢だ。こんな生き物が存在するわけない。


「君は不確定要素なんだ。変に関わられると確率がぶれてしまう。だからさ、じっとしていてくれないかな?」


恐怖で竦んでいるが辛うじて言っていることは分かる。意味は分からないが。


「ぼ、僕は、彼女を助ける為にここに来たんだ!その要求はの、呑めない!」


声を絞り出して伝える。殺されるかもしれないが、その時はなんとかして逃げ切るまでだ。


「はぁ〜。多分だけどね、君の彼女さんは死なずに戻ってくるよ。だから、安心してお家に帰るといい。」


「し、証拠がないじゃないか!そんなもの信用できない!」

あまりにも無関心な言いようにイラッときた僕は言い返した。


「証拠ね。彼女の生き死に関する証拠を提示することで君がここから去るというなら、喜んで出すよ。未来の未来演算結果をね。」


「それは本当にし、信用できるのか?」


「数式も書いておくから自分で計算してみるといい。数字は嘘をつかないだろう。」


「………条件を呑む……。」

賭けだ。ラクが本当に死なない証拠が出せるのなら、僕がここにいる必要はない。向こうの文明で会えばいいだけなのだから。 


「君の端末に結果を送った。契約は成立だ。早くここからいなくなってくれ。」


ポケットから携帯端末を取り出し、電源をつける。

画面には不明なファイルと銘打った通知が来ていた。


覚悟を決めてファイルを開く。


『結果:生存率 20%  死亡率 80%

以下計算式――――――』


は?


言っていることが違うじゃないか!

これじゃあ、ラクが死ぬ確率の方が高い。生きる証拠になっていない!


「ッこ、こんなの!」

 

「僕はあくまで『生き死に関する証拠』としか言っていない。君はそれに同意したじゃないか。君の望むようにしたんだ。約束は守ってもらうよ。」


蛇の怪物は顔を引く。


「は、話が違う!僕が望んだのはラクの生存する証拠だ!お前はラクは生きるって言ったんだ!僕はッ!その証拠を!」


はぁ〜と呆れた溜息をついて、蛇は答える。

「だから、論点をすり替えたんじゃないか。僕は直感でそう言ったけど、直感を補強する証拠なんてない。で、ある以上、君に伝えれるのは事実だ。自分が求めるものと僕が提供するものの違いに気付けずに条件を呑んだのは君だろう。簡単に言えば、君の自業自得さ。」


納得出来ない。そんなの騙しているだけじゃないか!屁理屈だ!


蛇はもう話すことは無いと言わんばかりに顔で地面に穴を開け、スルスルと消えていった。


「クソっ!」

僕は懲りずに何度もがむしゃらに森に入る。


膝が折れた時には既に日は昇っていた。汗をびっしょりとかいて足も動かないくらいに痛い。

諦めるしかないのか……。


「クソッ!」

イライラして地面の砂を握り、森の中へ投げ捨てた。


「………待てよ……。」

砂は森から弾かれる様子はなく、パラパラと暗い森の地面に落ちた。


「もしかして………。」

右手の指を森の中へ入れてみる。

弾かれる様子はない。

そのまま右腕、上半身が森に入った。

今は上半身が森の中、下半身が森の外で四つん這い状態だ。


はいはいで進んで行くと腰を少し過ぎた辺りで弾かれた。


「あぁ、なるほど。そういうことか。」


弾かれた位置にはポケットがある。そしてその中には


「これが原因だったのか。」

携帯端末だ。おそらくこの森はこれの有無で弾く対象を決めている。


確証は無いが、試さない手はない。

早速、携帯端末を取り出して、地面に置く。

そして、何も持たず丸腰の状態で森の中に入った。


「……いけたッ!」


疲れ切った足を叩いて全速力で走る。時間を掛けてしまうと対策が施される可能性がある。

だから、急いでラクを見つけ出さねばならない。


呼吸が苦しくなってきた頃、耳をつんざくような爆発音が聞こえた。

音の方向に目を向けると、半壊している工場がいきなり現れた。


僕は驚くよりも先に走った。今は時間が惜しい。

派手に装飾がされた工場の入り口から入る。


中に入れたからといって安心はできない。

「ラ―――グワッ!」


叫ぼうとしたところ天井が崩れ、大量の瓦礫が降ってきた。あと一歩でも前に進んでいたら下敷きになっていただろう。


荒い呼吸を整えて瓦礫の山を登っていく。少し登った辺りで緑色の髪を発見した。


「ラクッ!」

折角、呼吸を整えたが、またもや荒れ始める。

慌てて登って、緑色の髪をした女の子に近づく。

ツインテールは解かれているが、この体格や雰囲気は間違いなくラクだ。


「ラクッ!しっかりッ!」

肩を握って身体を強く揺する。

血の気が引いていて、体温も驚くほど冷たい。それに、胸辺りには大量の刺し傷だ。


「あんた誰?」

瞼が少し上がり、ラクとは思えない弱々しい声から出てきたのは予想もしていない言葉だった。


「…誰って。僕だよ!アスハラ ケンだよ!兎に角、今は病院に――」


「ごめん。触んないでくれる?そんなに鼻息荒くしてる知らない男の人が看取り人なんて最悪なんだけど…。」


弱々しいが、そこにはラクの芯があった。それは同時にラクの記憶がないことの証左でもある。


悔しさが怒りが悲しさが他にも様々な感情が一気に湧き上がってくる。

「だからッ!だからッ!言ったじゃないかッ!なのに君はッ!ラクはッ!」


「私から離れてくれない?気持ち悪い。」


「――――――ッ」 


「あの女が言ってた通りになっちゃったじゃん。」

その言葉を最後に、瞼が閉じ、呼吸が止まった。


僕はその場に崩れ落ちる。

ラクの為に頑張ったのに……。どうして?どうして…こんな結果になるんだ!


「ああああああああああああッ!」

手元の瓦礫を殴りつける。 

「クソッ!クソッ!クソォォォォォッ!」


「忘れ物だよ。」


僕が哀叫している時に外に置いてきた携帯端末が雑に投げられて、僕の前に姿を現す。


「こんなものッ!」

投げつけようと拾った瞬間、そこは知らない場所だった。


「………え?」


僕以外にもキョトンとしている人達が大勢いる。


さっきまでの感情が嘘のように消え、思考が働き始める。

考えられるのは文明移転だ。

だが、僕らの文明とこの文明はあまり大差がないように思われる。


『異文明存在多数確認。無許可と判明。排除開始。』


アナウンスがなり響く。だが、ケンを含め全ての文明移転者には聞こえない。


―――――――――苦しい。

形容出来ない。痛くはない。吐き気もない。今までに経験したことがない。

そんな苦しさだ。


だが、なんとなく理解できる。 

自分の概念そのものが別の何かと戦っている。それに伴う苦しさだ。

苦しさは増していく。どんどん、次第に、ますます増していく。

増して、増して、増して、増して――――



『排除完了。防衛プログラムの強化に移行。問題を報告。』


そこにあるのはその文明の普通の暮らし

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