怒のエモーショナルセイバー!
「それで?どうしてアッメはあんなのになってたナリ?」
村の皆の安否確認が終わった後、カミナッリがアッメに皆が聞きたかったことを聞いてくれてる。
村の安否確認といえば、イカリちゃんは家でぐっすりと寝てたなぁ。結構心配させちゃったねぇ………。
「それは、アッメにもよく分からないアメ。ただ、ああなる前に紫色の光を見たアメ。その後に身体の自由が利かなくなって、やりたくもないことをさせられてたアメ。」
そうなんだ…。やりたくないことを強制されるって、苦しいよね。
「カッゼも同じカゼ!カッゼはアッメに飲み込まれたから、紫色の光は見てないカゼけど、その後はアッメと同じカゼ!」
「身体の自由が全て奪われた訳じゃないっシャよね?」
???さっき、身体の自由が利かなくなったって言ってたと思うけど……。
「流石に全てじゃないアメ。出力の部分は多少は自由が利いたアメ。それ以外は駄目だったアメ………。」
「えっ、そうだったの!?」
驚きのあまり声に出ちゃた。いやいや、さっきと言ってること違くない???
「アイは分からなかったっシャ?ドッシャ達誰か1匹でも出力を最大にするとっシャ、この村が一瞬で消えてなくなるっシャ。そうなってないってことはっシャ、力を抑えられているか、自分で制御しているかの2択っシャ。今回は後者だったっシャね。」
「そ、そうなんだ………。」
ってことは、妖精達にとって今のことは些細なことで身体の自由として見てないってことになるのかな。そうじゃないとあんなふうに言わないよね…。
価値観が違うなぁ〜。
「でも、そんなことにならなくて良かったアメ!アイのお陰アメ!」
アッメの頭についている雲がブヨンブヨンと跳ねる。
アッメ、カッゼ、カミナッリ。この3匹の容姿は雲が頭についていて、アッメなら青色、カミナッリなら黄色の二頭身。カッゼは雲だけで実体という実体を持たない。
「それに比べて、他の妖精達は情けないカゼ〜。」
「言ったブツね。今、ここで身の程を教えてやるブツよ!」
あっ、ショクブッツの頭にお花が咲いてる。それに、周りの植物も茂り始めてきた。やる気だねぇ。
「まぁ、取り敢えずは紫色の光に注意することが大事ナリね。そこのお花畑もちゃんと注意するナリよ!」
「分かってるブツ!ショクブッツに限って、自分の力が奪われるなんてあるわけないブツ!!」
植物がどんどん茂ってる。ショクブッツは感情が表に出やすいなぁ。ホントに。
「まぁまぁ、ショクブッツはこう見えて結構、しっかりしてるし大丈夫だよ。」
こう言っても周りの妖精達の疑いが晴れない。でも、私は信じてる。ショクブッツはあんなことにはならないって。
「そういえば、アイの力はどうやって覚醒したっシャ?」
「えっ?」
どうやって覚醒したんだろ?私は皆が大好きで、愛してるから助けたいって思って走ってた。これが原因なら
「愛の力?かな?多分。」
「アイだけにブツか?」
「うん。アイだけに……って馬鹿にしてるじゃん。」
「ブッツ、ブッツ〜。」
ぬ〜ん。やっと、いじれる立場に立ったからか、めっちゃ嬉しそうじゃん。
「これも、人間の性質っシャかね〜?感情で出力が変わるのは知ってるっシャけど、ここまで変わるのは初めてっシャ。」
「アイが自然と張り合えるようになったことはとても嬉しいナリ。でもナリ。やっぱり、自然のことは自然で解決する方がいいナリよ。アイも絶対に無茶はしちゃ駄目ナリよ。」
「うん。ありがとう。」
そうだった。今、アニマッルはいないから、傷ついたら直してもらえない。
ん?いや、おかしい。そう、本当はその筈なんだ。でも、走ってる間、私の身体はボロボロだったのに今は回復してる。こんなことってあるの?
「ねぇ、皆。アニマッル無しで私の傷が治ることってある?」
「傷の種類にもよるっシャけど、大きい傷は基本的に治らないっシャ。でも、アイは傷が治ったっシャ?」
最初に口を開いたのはドッシャだ。ドッシャは頭が良くて色々なものに精通してる。
「うん。私、息が出来ないくらい苦しかったんだけど今は全然苦しくないの。」
「きっとそれはアニマッルのお陰カゼ!アニマッルがその力をアイに与えて助けてくれてるカゼ!」
自信満々なカッゼ。他の妖精達は困惑してる。
でも、カッゼの言う通りだったら嬉しいな!
「根拠はないっシャけどね。けどっシャ、そう思うだけでも心持ちは違うっシャ!根拠がない以上、そうじゃないとは言えないっシャから可能性自体は捨てれないっシャ!」
ドッシャにしては珍しい結論だけど、皆、納得してる。皆もそうであってほしいんだ。
「雨も十分に降り注いだし、今日の所はこれで解散アメ?アイの服も乾いたアメね?」
「あっ、うん。ありがとう。お陰様で。」
そうだった。私のとこだけ雨が降ってないどころか日光が当たるようにしてもらってる。さらにカッゼも暖かい風を吹かせてくれて、私の服を乾かすついでに風邪ひかないようにしてくれてるんだ。
踏み出して良かったなぁ。
「そうナリね。共有すべきことはしたナリから。解散で大丈夫ナリ。それじゃあ、皆気をつけるナリよ〜。」
「アイはちゃんと休むカゼよ〜。」
「うん。分かった!」
アッメ、カッゼ、カミナッリは笑顔で帰って行った。
「もう、夜ブツね。ショクブッツ達はやることがあるブツけど、アイは帰って休むブツ。あんまりイカリを心配させちゃ駄目ブツよ。」
「そうだね。イカリちゃんを安心させないと。因みにやることって草刈りの後片付け?」
コクリと頷いた後に何か思い出したかのような反応をする。
「それもブツけど、この惨状をなんとかしないとブツ。結局、修正作業ブツね。」
さっきの暴風雨で滅茶苦茶だもんね…。これはショクブッツ以外には何もできないなぁ。
「じゃあ、頑張ってね。」
「ブツ!」
家の前に着く。思えばこの家で夜を過ごすのは久し振りだ。ここは私達の家とは違ってちゃんとした木造建築で中もかなり広い。元々は集合会議場みたいな感じだったんだけど、アニマッルが居なくなってから動けなくなった皆を集めて、ここで面倒を見るようになった。だから基本的にここに来るのは朝、昼、晩でご飯を食べさせにくる時くらい。それ以外は周りの植物や妖精さん達が面倒を見てくれてる。
「イカリちゃん、怒るかな……。」
怒られるくらいのことをしたんだ。素直に受け入れよう。
決心して扉を開く。
カチャ
「ただいま…。」
「アイちゃん!」
扉を開くや否や、イカリちゃんの細い腕が私を包みこむ。かなり、強く抱きしめてくれてる。
「イ、イカリちゃん……。痛い…。ごめん、痛い痛い痛い!」
「良かった!本当に良かった………。良かったです…。」
イカリちゃんの力がどんどん強くなってくる。これは抱きしめてるというより、挟み込まれてる!
「イカリちゃん!私千切れちゃうよ!イカリちゃ………」
「心配したんですよ!本当に、本当に!アイちゃん!あぁ、アイちゃんだ……。」
その後、なんやかんやあって私達は寝た。寝る時もイカリちゃんが抱きついてきて痛みに苦しみながら寝ることになった。
「ふぁ〜。朝だねぇ〜。」
窓から差し込む光が私の黒髪を照らす。お陰で朝からぽかぽかだ。雨上がりの朝は気持ちがいい。
「あっ、おはようございます。アイちゃん。………そ、その、昨日は申し訳ありませんでした……………。」
私が朝ごはんの用意をしていると、イカリちゃんだ。
赤面しながら謝るイカリちゃんも可愛い。ってそうじゃない。なんでイカリちゃんに謝られせてるんだ私は。
「うん。おはよう。心配させちゃたのは私なんだし、謝ることないよ。」
「い、いやぁ、それでも、痛かったですよね…………。」
モジモジして、恥ずかしそうなイカリちゃん。そんなイカリちゃんには悪いけど、確かに昨日のあれは
「ごめん。痛かった。」
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい………。」
勢いよく頭を下げだして、ごめんなさいを連呼し始めちゃった。どんだけ昨日のこと後悔してるんだろう。
「いやいや、大丈夫だよ!それよりもさ、朝ごはん準備しよ!」
「は、はい………。」
とは言っても、ここでの朝ごはんなんてパンだから特に準備の必要も無い。紙袋から取り出して、好みに合わせてジャムつけたり、チョコつけたりして私達の分は終わり。皆の分はスープに浸けて柔らかくした後に私達で口に運ばないといけない。辛うじて飲み込むまでならなんとかいけるからそこは大丈夫だ。今回はコーンスープに浸けて食べさせるつもり。
「後、4人分だけ用意してもらえますか。私が持っていくので。」
「任せて。って結構終わってるね……。」
私が寝てる間にイカリちゃんと他の動物さん達でやったんだ。皆、起きるの早いよぉ。昨日は全部任せちゃたし…。
「はい。お願いね。いつもごめんね。殆ど任せきりにしちゃって……。」
「いえいえ、このくらいのことなら喜んでやりますよ。」
そう言ってスタスタと皆がいる方へ歩いて行った。このキッチンと皆がいるところとは葉っぱで作った暖簾みたいなもので仕切られてる。
その暖簾を通るイカリちゃんを見てるとなんだか感慨深くなる。
「イカリも成長してるムシな。」
背後から低い声がする。ムッシーだ。ムッシーは妖精の中で1番声と背が低いし、細い。色は卵から孵ったカマキリくらい白くて、頭から下を羽で覆ってる。唯一、露出している頭は真っ黒な目の面積が半分を超えて、口、触角がお飾りかのようについてる。ほんのりの身体が発光していて虫達の目印にもなってるんだ。
「ムッシー、おはよう。いつも、ありがとね。手伝ってくれて。」
ムッシーは毎日手伝ってくれる妖精さんの一匹だ。動物達のご飯を食べさせたり、身の回りの管理をしたりしてくれてる。
「その点、アイは変わらないムシ。」
それだけ言って、皆の場所に飛んでいっちゃった。
なんか、やけに嬉しそうだったなぁ…。
朝のやることが終わって、他に何かやることがないか外に出て探す。
「本当に一晩で綺麗になってる。」
地面には緑が生い茂り、決まったところに決まった花が咲いている。昨日、荒れてたのが嘘みたい。
「ショクブッツのお陰ですね。ご褒美にたくさんお水をあげないとですね。」
「そうだね。ミッズからたくさんお水を貰おうか。」
一旦、私達が住んでる大木の家に戻ってバケツを用意する。
ミッズは水を司る妖精さんで、アッメとは兄弟の関係にある。見た目も殆ど一緒で違いは頭に雲がないことだけ。
いつもは近くの川に行けばミッズに会えるんだけど……
「ミッズ―!いないの?」
何故か今日は見当たらない。雨の後だし、忙しいのかな。
「水、貰ってくね!あ、皆、ミッズが戻ったら伝えてくれると嬉しいな。」
一応、川の中のお魚さんや、近くの植物達に言っておく。自然は皆、自我を持ってて私達の言葉を理解して、互いにコミュニケーションを取り合うことができる。
「アイ―!イカリ―!」
私達が昨日の公園を通りかかった所でショクブッツの声がした。
ショクブッツの他に、ドッシャとムッシがいる。皆で揃ってもの作りをしているみたい。
「何作ってるの?」
ショクブッツ達の近くに行くと虫さん達が木に穴を開けたり、粘液を使って木をくっつけたりしてる。
「それは出来てのお楽しみブツ!きっと皆喜ぶブツよ!」
皆が楽しめるようなものを作る。いかにもショクブッツが好きそうなこと。
「ブツ!アイ達にも手伝って欲しいブツ!大きい材料に細かい調整をするのはショクブッツ嫌いブツから、アイ達にやって欲しいブツ。」
「それだと、計画がバレるっシャよ。」
「ショクブッツと言えば考えないで有名ムシ。」
怒涛の罵倒ラッシュ。たまらずショクブッツはいつものように頭にお花を咲かす。
「うるさいブツ!いいから2匹は手を動かすブツ!」
「ま、まぁまぁ、それで、私達は具体的に何をお手伝いしたらいいんですか?」
こういう時はイカリちゃんが間に入って場を収めようとする。あんまり酷くなりそうだったら私も入るけど今回はなんとかなるんじゃないかな。
「イカリはここの2匹と違って、話が分かるブツ!大好きブツ!そうブツね……イカリは………」
「随分と、和気あいあいと………。」
「「!?」」
一斉に聞き慣れない声の方へ目を向ける。
足首から太ももにかけて側面に棘がついており、腰回りもアーマーの上に棘が見受けられる。前腕の表面にも3本、太く鋭利な棘があり、ショルダーアーマーは左右非対称性に棘が生えている。ボディは胸部辺りに離れて2本小さな棘。おそらく漆黒のマントを留めているのだろう。兜には左右、角が確認できる。そして腰に漆黒の装飾剣が装着されている。
一言で表すなら、暗黒騎士。もしくは闇堕ち騎士と表現できる。
そのような存在が、今、不釣り合いな場に存在している。
「何者っシャ……。」
「我か………。我は名乗る名など無いが強いて言うなれば、そうさな、闇の剣士………。或いは正義を糾す者なり……。」
くぐもった重低音が響く。
「……何で語尾がカミナッリと同じブツ?」
空気を崩壊させる質問に周りがざわつく。ショクブッツはこの中で唯一緊張していないのだ。
「フン………。万象の化身の一角……。まずは貴様からだ。」
ゆっくりと腕を上げてショクブッツの方を定め、掌に紫色のエネルギーが収束し始める。
「紫色の光!?皆、逃げるっシャ!」
一斉に皆、バラバラの方向へ走ってゆく。その際にイカリが躓いて転んでしまった。
「イカリ!」
「イカリちゃん!」
アイとショクブッツが気付き、駆け寄る。しかし
「毒牙よ!彼の自然を蝕め!」
弾は既に放たれた。
アイはイカリを庇いつつ、ショクブッツに手を伸ばそうとしたが……
「ブッツーー!」
間に合わなかった。ショクブッツは紫色の光に侵食され始める。
「「ショクブッツ!!」」
ショクブッツの名を皆が叫ぶ。
「ブツブツ………。ブツ!何のこれしきブツ!ショクブッツにはこの程度、通用しないブツ!」
なんと、ショクブッツは侵食を防いでしまった。外見に変化はない為、おそらく内面を変化させるか、根性で防いだのだ。
「さぁ、逃げるブツよ!」
アイ達を植物に乗せ、自身も移動しようとするショクブッツを漆黒の影が一閃する。
「ブッ………ツァ……!」
「………ショクブッツ!」
防いでいた侵食が再開し、ショクブッツの身体が変容を開始する。
「ご……めんブツ………。こ…れは…予想が……アァァァァァァ!」
全身の草が全て地面に到達し、広範囲に広がった。
「エエエエエエェェェ!」
地を割るかのような声と共に鋭く尖った木が文字通り地面を割って生えてくる。
「ムシ!」
大きなオニヤンマがアイ達を乗せて、間一髪の所で飛び立つ。
そして巨大なカマキリがショクブッツに応戦する。大きな鎌を用いて草木を刈り取っていくが、ショクブッツの再生速度は尋常でなく、刈った瞬間からほぼ元通りに戻ってしまうほどだ。それどころか、草や蔓の鞭、地面から生える鋭い木が着実にカマキリを弱らせる。
ドッシャも応戦したいのは山々たがドッシャがどんな攻撃をしようとショクブッツにはプラスにしかならないことを理解している。土砂を用いての攻撃は植物の苗床で攻撃しているのだから、ショクブッツは土砂を利用して攻撃に転じれてしまうのだ。
となるとこの状況を止めれるのはムッシと
「誰かを想うハートの気持ち!『愛のエモーショナルセイバー』!」
光から弓を持って飛び出し、オニヤンマから降りてくる少女、アイしかいないわけだ。
「アイちゃん………。」
アイちゃんを行かせちゃった……。
私が転んだからだ。私があの時、転ばなかったらこんなことにはならなかった。
「どうして……いつも私はこんななんだろう……。」
自分自身に怒りが湧いてくる。この状況を招いておいて、責任を取ることができない……。
「せめて、囮にでもなって攻撃を……。」
上空から戦況を見る。カマキリが2匹、3匹と投入されているけど、ショクブッツの攻撃範囲が広すぎて劣勢なのは変わらない。
アイちゃんも下から生えてくる木を躱し、弓で草木を薙ぎ払いながらなんとか近付こうとはしてる。でも、近くになればなるほど攻撃する草木の量が多くなって一時的に撤退しないといけない。
この状況で私が囮になっても逆効果だ……。皆の足を引っ張るだけ……。
本当に私はなんでこんなに役に立たないのッ……!
その怒りに呼応して、イカリの背中が紅く発光し、イカリを包みこんだ。
光の中でイカリは炎に纏われている。
最初に足の炎が霧散し、暗い赤をべースに足首の中央からくるぶしにかけて金色のラインが入り、つま先がやや鋭利なレッグアーマーが現れる。2番目に腰回りの炎が展開、霧散し、露出している太ももとレッグアーマーの半分を隠すような形で暗い赤のスカート、その上に明るい赤がべースで金色の装飾が入ったアーマーが装着される。3番目に胴体から腕にかけての炎が霧散する。そこには深紅のインナー。上から赤基調のボディアーマー、同色、身の丈の半分程で派手に装飾がなされたショルダーアーマー、アームアーマー、ハンドアーマーは合わせてイカリのくるぶしに到達する。装飾も派手で、ハンドアーマーには爪もついている。
そして最後に髪の炎が霧散し、いつもの髪とは真逆の赤い色に変色しており、金色の装飾がなされている。目も同様に赤く変色している。
光が霧散した頃には3M近くの斧を持って姿を見せた。
「誰かに届くメラメラの気持ち!『怒のエモーショナルセイバー』!」
これなら、責任を取れる!アイちゃん達の手助けをしてショクブッツを助けることができる!
オニヤンマさんから勢いよく飛び降りる。
「オニヤンマさん。助かりました。感謝します!」
オニヤンマさんに感謝を伝えた後、斧を構えながら、肩から炎を噴射してショクブッツに突撃する。
「やあぁぁぁぁ!」
私が斧を振るうと、斧は炎を伴ってショクブッツの草木を焼き払う。
「イイイイイィィィ!」
熱いですよね………。でも!我慢して下さい!私とアイちゃんが絶対助けます!
「アイちゃん!今です!」
「任せて!ラブリーエモーショナルシャワー!!」
アイちゃんが放った無数の矢がショクブッツを元の形に戻そうとしてる。
「イカリちゃんも一緒に行こ!」
「はい!」
アイちゃんの差し出した手を取って一緒に無数の矢の中に入る。
奥の方にショクブッツだ。アイちゃんの愛情いっぱいの矢がショクブッツを取り囲んでる。
「ショクブッツ!もう大丈夫だよ!」
「大丈夫ですよ!」
ショクブッツを2人で抱きしめると無数の矢は消えて私達の胸の中にショクブッツが収まった。
「良かった…。」
「ですね。」
♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡
「ほう……。」
ショクブッツが元に戻ったのを見て、何処か楽しそうな漆黒の影…。
「待てっシャ!目的は……。」
ドッシャの言葉を聞かぬまま漆黒の影は姿を消した。
「一体、何が目的っシャ………。」
♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡ ♡
「ありがとうブツ!」
元気元気と言わんばかりにショクブッツは空中を飛び回ってる。でも、長かった草木が焦げて真っ黒になってたり、短くなってたりしてる。これ、大丈夫なのかな?
「ご、ごめんなさい。焼いちゃって………。」
イカリちゃんがなんてことをしたんだって顔で謝ってる。いつもと違うから見てて新鮮。
「これは大丈夫ブツよ。再生しようと思えば今すぐにでも再生するブツ。でもブツ、好きで長くなりたいわけじゃないブツから、自然再生を待つブツけど。それより、深刻なのはこっちブツ。」
そう言ってショクブッツは後ろを向いて、草を上げて背中を見せた。
「これって……斬られたやつ……。」
紫色の傷が背中に大きくついてる。
「私のせいで………。」
ガクッと膝から崩れ落ちるイカリちゃん。でも、これはイカリちゃんのせいじゃない。
「イカリちゃんは悪くないよ。」
「ムシ。悪いのは油断してたショクブッツムシ。全く情けないムシ。」
それも違うと思うけど………。
「それは……認めたくないブツけど、一理あるブツ。それはそれとしてブツ。この傷が全く塞がらないブツ。そのせいで出来ることが制限されてしまったブツ。」
私達は絶句した。ショクブッツの出来ることなんて、何か1つでも制限されたらたまったものじゃない。
「とはいえブツ、限定的ブツよ。野菜、果物の早期、大量生産ができないブツ。生産自体は出来るブツけどね。」
「現状の生産でできるところまでやるしかないっシャ。野菜や果物は土壌や気候次第で生産速度自体は上げることが出来るっシャ。」
「なんとか、なりそうだね……。」
不安はあるけど、ひとまず大丈夫そう。先のことを考えるのは大事だけど考えすぎてもどうにもならないからね。うん。ひとまず、ひとまず大丈夫。
「それにしてもイカリ!よく頑張ったブツ!カッコいいブツ〜!」
「あっ、ありがとうございます……。」
ショクブッツにヨシヨシされてイカリちゃん、照れてる。
「ねぇ、イカリちゃん腕、重くない?武器もだけど。」
これ以外にも聞きたいこといっぱいあるけど、疑問で疑問で仕方ない。イカリちゃん細いのにすごいものもってるもん。
イカリちゃんは腕を自在に動かして、答える。
「重くはないですね。不思議と。」
「へ、へぇ~。イカリちゃん…変わったねぇ………。」
イカリちゃんはキョトンと私を見る。でも、すぐに気付いたみたいで
「そうですね……。なんか、派手に変わりましたね……。」
不思議そうにそう言った。
「派手に変わるなんてよくあることムシ。成長してる証拠ムシ。それに比べてアイは……。」
「う、うるさいな!別に私はいいでしょ!」
ムッシーめ、隙あらば私をからかってくる……。ぐぬぬぬ。
「イカリも感情が起因でそうなったっシャ?」
「確証はないですけど、多分そうだと思います……。」
ドッシャは少し考え込んだ後
「人間って不思議っシャね〜。」
共感しかできない感想を口にするのだった。