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イカリ 〜哀愁〜2

21:45


「ふぅ〜。満足!満足!」

青髪の男は気が済んだように私から離れていった。

何も考えられない……。


涙だけが溢れてくる。

「ごめん……なさい…。」

暗い、虚空の空に赦しを請う。


あぁ、サンタクロースからとんでもないものをプレゼントされちゃったなぁ……。


どうしたらいいんだろ………。


取り敢えず、施設に戻ることにした。

既に門限は過ぎてる。


「怒られるだろうなぁ……。」

 

それは、仕方ないことだ。今はそれよりも言い訳を考えないといけない。


あんなことをされたなんて言ったら検査されてしまうかもしれない。そして、もし……。あぁ、考えたくない。最悪だ。


「ただでさえ、施設は先生達の給料で圧迫してるのに、避妊手術なんて無理な話よ……。」


施設に戻ると玄関には先生が待ち構えていた。


「ッ!よかったぁ!心配したのよ!」


先生のハグに罪悪感で涙が止まらない。

「ごめんなさいッ!ごめん……なさいッ!」


ある先生は気付く。


「あらあら、この袋。クリスマスプレゼントじゃないの!成る程。それで遅くなったのね!」

 

周りの先生は全員納得する。

私が言い訳をする必要性がなくなってしまった。


……無理に気分を害する必要はないと思う……。きっと、時間が解決してくれる。……今は、今は、これでいい…。


それに……たった1回だ。

……多分、妊娠確率もそこまで高いという訳じゃないだろう……。


『検索結果:避妊行動を取らない場合、個人差はありますが、1回の性行為による妊娠確率はおよそ、20〜30%と言われています。』


就寝前に怖くなって調べた。

うん。……大丈夫だ。この程度の確率なら、そう簡単に引けるものじゃない。


大丈夫。大丈夫。大丈夫だから……。



――――――時間は残酷だった――――――



3ヶ月を過ぎたあたりから、やけに食欲が出ず、どちらかといえば吐き気がする。


風邪でも引いたのかと思いながら、寝ることに専念したが、一向に治らない。

「……まさか…ね……。」


そんな訳はない。そう、そんな訳はないのだ。絶対に違う。


「モモちゃん。病院行く?」

心配になった先生は私に病院を勧める。


いや、駄目だ。最悪の場合、皆に迷惑をかけることになる。


「多分、風邪だと思うから、大丈夫!……明日から、ちゃんとできると思うから!」


気持ち悪いのを我慢して、必死に元気であるかのように振る舞う。

それに、普段通りにやったら気持ち悪いのも多少は……。



「ヴォエッ!エホッ、エホッ!」

きつい。

なんとか嘔吐はトイレで済ませることができてるけど、あまりにもきつすぎる。


「……耐えないと…。」

私は言葉通り、なんとか耐え凌ぐことに成功した。誰にもバレずに。


だが、本当の地獄はここからだった。


気分は次第に良くなった。

()()()()()()()()()()()()


「…………………ぁ…。」

朝、起きてその光景を確認した途端


絶句した。絶望した。絶対的な死を望んだ。


…隠せない。すぐにバレてしまう。


「………手は…ある……。」


私はこの日、初めて、生命を憎らしいと思った。


右手と左手を力強く握りしめる。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……ッ…ハァ……ッ!」


体温が上昇していき、額から汗が流れる。呼吸もどんどん荒くなっていく。



意を決して、握った両手をお腹に叩きつける。

何度も、何度も、何度も。

「死ね。死ね。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねッ!」


今、殺さないと、もう後戻りができない!

皆に迷惑をかけない為には、こうするしかないッ!


叩きすぎてお腹がどんどん痛くなる。

違う。痛がってるのは私じゃない!

私は痛くない!私は辛くない!

私はッ!私はッ!!


「モモ〜。起きてる?朝ご飯だよ〜。」


結局、施設の友達が扉の向こうから呼びに来るまでずっとお腹を叩き続けていた。


「…ごめん。今から行くよ。」



こうなれば、服を着込んで誤魔化すしかない。 


それに、お腹の子は殺したんだ。しばらくしたら、お腹も元に戻る。

もう春で、かなり暑いけれど、なんとかするしかない。


意を決して扉を開いた。


「うわっ。結構、厚着だね……。」


「うん。まだ、寒いから。」

友達の顔を見ずに、進みながら答える。


「まぁ、病み上がりだしね。そんなこともあるのかなぁ。」

友達も納得したようで、私のお腹については全く触れない。

良かった。これなら、気付かれない。


この友達以外にも病み上がりで体温調節がうまくできていないという理由で通し、ここ数日はバレることなく済んだ。



「……………あ……。あぁ………。」


時間が経つにつれ、明らかにお腹が出てきている。

殺せていなかった………。


まだ、厚着でなんとかなるかもしれないが、季節もかなり暑くなってきた頃だ。流石に怪しまれる。


「………どうしよう……。」


今から殺しても、このお腹は確実にバレる。

…一先ず、一先ず、今日は寝込もう。今日1日でやれることを考えないと。


しかし、どれだけ考えても、携帯端末で検索をかけても、今の私にできることは何もなかった。


一応、服によってはバレにくくなるみたいだが、生憎、私はそのような服を持っていない。

 


結局、私は1週間近く施設の部屋から出なかった。


そんな私を心配して、友達や先生がノックをして、顔を見せてと言ってくる。


私は精神的に辛いの一点張り。


当然、こんなことを永遠と続けられるわけもなく、痺れを切らした先生が無理矢理、私の部屋に押し入った。


そこで、先生にとっては衝撃の光景を目の当たりにする。


「……モ…モ……ちゃん……?なに?その……お腹………。」


1週間、俯いてばかりの私はゆっくりと顔をあげて、先生の顔を見る。

まるで、怪物を見るかのような顔だ。


「どうして………入ってきちゃったの………。…………先生。」

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