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暗黒騎士3

赤い液体が噴き出てくる。

あたしの喉からも勢いを持った液体がこみ上げてくる。

「アッブォェ!」

胸の当たりから肩にかけて鋭い痛みが走るのを自覚する。


それがどうした。


「………やっと……会えた……。」

ずっと探し続けた弟が、シンがいるのだ。2人で、いいや、家族皆で移動しないと。

「……頑張ったね……。…ぁ、帰ろ………ゴホッ!…。」

口から赤い液体が、多分血…、が噴出する。

シンの肩と背中に手を回して、しっかりと、二度と離れないように抱き締める。

グサッという音とともに胸に鋭い痛みが走る。

1度ではない。2度も3度も。何度も何度も。胸が何かに、多分剣だろうけど、貫かれている。その度に押し返されて手を離しそうになる。

「……大丈夫。………大丈夫だ……から……。」

涙まで溢れてきちゃった。シンに会えて嬉しいんだ。当たり前だよね。ホントに、ホントに心配したんだから…。


「アガッ………ァ……。ァ…。」


これまでにない強烈な痛みと衝撃が胸に炸裂する。

あたしの視界は一瞬、暗転してその隙に手が離れる。

視界が明るくになると、なんでだろう、あたしの方が目線が上だった。

「シ………ン………。」


「……ね…え…………ちゃ……」


勢いよく地面に振り落とされる。


あぁ、まただ。また、シンが遠のく。探すの大変だなぁ……。でもさ、今回は出来たんだし、次もさ、出来るよね。


―――――――これまでに聞いたことの無い音を立ててあたしの目は閉じた―――――――。


「ラクナちゃぁぁぁぁぁぁん!!」


ラクちゃんが!ラクナちゃんが!

こんな、こんなのって……!


「あんまりだよ!」


無我夢中でラクちゃんの所へ走る。

そんな私の前に黒い影が勢いよく舞い降りる。


風圧で怯んで、動けない私の代わりに腕に抱えているミッズーが水の玉を作って攻撃を仕掛ける。


「効かないミズ……。制限されてるミズね……。」


ミッズーが言うように水の玉は黒い騎士に当たらず、正面で弾けている。

「アイの友達を回収して、一旦撤退するミズ!」

ミッズーも相当きついだろうに頭と能力を使って私達を助けようとしてくれてる。

「ごめん、ありがとう。」

大きな水の塊で私を覆い空中へ移動、そのままラクちゃんの所を目指す。


ラクちゃんを水の触手で回収し、2人の元へ帰還、そして――――雑に飛ばされた。


「え?」 


「ミ…………ゥ……。」


振り返ると、ミッズーに黒い斬撃が直撃していた。

その上、ミッズーの周りに紫色の稲妻が発生していて、動きが拘束されている。


ガチャリ、ガチャリと黒い騎士は無気力な顔でこちらに向かって歩いてくる。

黒い騎士は剣を正面で振るう。すると剣先から、さっきみたいな黒い斬撃が飛んでくる。

そして、ミッズーに直撃。


「………ッ、やめてえぇぇぇぇぇえ!」


これ以上はミッズーが死んじゃう!

止めないと、なんとかして止めないと!


そう考えると、私は走っていた。どうなるか分からないけど走った。黒い騎士に向かって。

でも、ミッズーの側に来た途端弾き飛ばされた。水っ気を感じて。


「ダメ!ミッズが死んじゃうよ!」


私の言葉が届く頃には黒い、無表情の騎士はミッズーのすぐ後ろ。


「ミッ……ズァッ!ミッ…!ズ!いた…ミッ!ッズ!」


ミッズーの背中が何度も斬りつけられる。斬りつけられる度、ミッズーの悲痛が響く。

「いや……いや……ぁ…。」


ミッズーの小さいお腹を貫いて黒く、太い剣が顔を見せる。

その剣に貫かれたままミッズーは地面に叩きつけられ、大きい顔から弾けて消えた………。


「……………ぁ………。」


………。死んだ……。周りで沢山消えてしまった……。

もう、二度と戻ってこない…。


剣先は、私達を捉えた。

私が哀しみに暮れていようがお構い無しに。


自然と消えることへの恐怖は感じない。哀しみだけ。憎悪や屈辱よりも哀しみだけ。哀しみで私が塗り潰されていく……。

そんな哀しみを晴らすように目の前で爆発が起きた。

真っ赤な炎の中から大きな斧が現れ、黒い騎士の首を刎ねる。


刎ねられた感情の無さそうな首と、その身体は豪火によってあっさりと燃え尽きた。


「……遅れ……ました。目が覚めたのが今だったもので……。」

猛っていた炎が静かに止み、イカリちゃんが姿を現す。


「ねぇ、イカリちゃん……。」


「はい。」


「私達ってこんな目に遭うためにエモーショナルセイバーズになったのかな………。」

「……だとしたら、哀しいよね。誰かを助けたいっていう思いがあった筈なのに…。こんな!こんなことを!」


イカリちゃんが震える身体で震える私を優しく抱擁する。


「………私にも、分からないです……。」


私の(うなじ)に冷たい感覚が流れてくる。

イカリちゃんも泣いてるんだ。

…もう、分からないよ。私達はどうしたらいいの!


 2人は沢山泣いて、あまりの疲れで眠りに落ちた。


 ♥  ♥  ♥  ♥  ♥  ♥  ♥

 

ピンク、白、青、赤、紫で糸のように細い花びらをした綺麗なお花が燦々と咲いている。

そんなお花達をお天道様がキラキラと照らして、私に映る光景の中心には緑色の髪をした女の子と男の子が手を繋いで背を向けて立っている。


「ラク……ちゃん…。」


「これでいいんだよ!」

ラクちゃんの元気いっぱいな声が木霊する。


「アイっちのお陰であたしとシンは出会えた。これってとっても楽しいことだと思うんだ。」

お花達も花びらをめいいっぱい広げてラクちゃんの意見を肯定したかのような素振りを見せる。…いや、これは確実に肯定してる。


「まぁ、あたしはリタイアって感じだけどさ、皆なら絶対やっていけるよ!なんたって、あたし達はエモーショナルセイバーズ。感情だけで動いて感情だけで全部を救う。そんな救世主なんだから!」


「違う……違うよラクちゃん!私はラクちゃんを救えなかった!それに、弟さんもあんな結果にしか……ッ!」

私は眠る前の出来事を鮮明に思い出して必死にラクちゃんに伝える。


「でも、そのお陰で、あたしとシンはこうして一緒になれた。…あたしは充分救われてるよ。」


……なに、それ……。死んで、出会えたから救われたなんて、そんな、そんなの!

「あまりにも、身勝手だよ!」


ラクちゃんは頭を少し下げて答える。

「そうだよ。あたしはずっと身勝手だ。自分が楽しければいい。だから、こうやってアイっちを悲しませる結果に終わる。ホント、これだけはどうにもならなかったなぁ……。唯一の後悔だね……。」


お花達が無くなる勢いで舞い上がってラクちゃんとシン君、お天道様まで隠しきってしまう。

「これまで、姉ちゃんをありがとうございました。そして、ごめんなさい。俺のせいで、やりたくもないことをさせる羽目になっちまって。」


お花達が全て舞い落ちる前に手を伸ばして――――――


 ♥  ♥  ♥  ♥  ♥  ♥  ♥


「ラクナちゃん!」 


そう叫んで目を覚ました。

そして気付く。一緒に倒れていた筈のラクナがいなくなっていることに。


「………ぁ……あ……。あぁ…。」 


アイは発する言葉すら出て来なかった。

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