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〜暗黒騎士〜 真相1

『ツチノコ大発見(だいはっけん)ツアー!!見つけることができたら150DMY!!』

そう見出しがついた記事をスクロールしながら読んでいく。

DMYとはデジタルマネーのことだ。

デジタルマネーは今じゃ主流になったバーチャル空間、またはバーチャルワールドで使えるお金。現金から換金することができるし、デジタルマネーから換金することもできる。とはいえ、リアルワールドが廃れてしまっているこのご時世、わざわざ後者を選ぶ人なんて殆どいないだろう。

「えっと…場所は?」

携帯端末が俺の声を認識し、画面に俺が知りたい情報を映し出す。4歳の俺には内容が難しいのだ。

画面には地図とここからのルートも表示されている。 

「こっから、6時間かぁ〜。でも今時ツチノコって珍しいんだよなぁ〜。」

というか、オカルトの体験自体が最近減っている希ガス。なんてたって殆どは真偽が完璧に証明されちゃったからな。 

そもそもツチノコも蛇やトカゲの見間違いって言われてるくらいだし。それでも今回のツアーは誰も見たことがないだの、未確認だのと強調している。これは、かなり期待できそうだ。

俺は早速計画を練り始めた。ツアーはエントリー不要、実施日は明日。それまでに仕事を沢山して資金を調達しなければならない。

4歳に仕事ができるのかって?

できるんだよ。バーチャルならね。

バーチャル空間での仕事は最早ゲームと言った方がいいだろう。所謂街作り系の。

運営が公式に出している仕事もあれば、ユーザーが出している仕事もある。給料は基本的には公式の方が高い。大金持ちユーザーが出す場合は話が変わるが。

「とりあえず、交通費だけでも8万近くいるのか……。高難易度討伐クエをかなり回る必要があるな…。」

ゲームのジャンルは街作りと言ったが、防衛戦と言った題目でアクションも楽しめる。



3時間くらい高難易度を周回しているとメッセージが届いた。

『飯だぞ。』

姉ちゃんからだな。今、周回中の高難易度が終わったら行くとしよう。丁度、資金も貯まったぽいし。


「おまたせ。」

スタスタと小さい足を動かして階段を降りる。バーチャルでは青年のガワを着ている為、リアルになると違和感を感じてしまう。早く大きくなりたいものだ。

「あんた、あたしのメッセージ無視したでしょ!」

「高難易度やってたんだ。仕方ないだろ?」

姉ちゃんはいつもこれだ。食事に遅れるだけで怒る。先に自分達だけ食べておけばいいじゃないか。

「そんな理由で無視したっての!?途中離脱したらいいじゃない!」

な〜に言ってんだか。自分は高難易度苦手な癖に知ったようなことを言う。

フンと鼻で笑ってやって席についた。

「高難易度?全部クリアしてなかったかい?シン。」

姉ちゃんの携帯端末からケンの声がする。ケンは姉ちゃんの幼馴染み且つ彼氏。まるでラブコメのようなシチュだよなぁ…。それでいて、俺の兄貴みたいなもんだ。血縁関係はないんだけど。だから俺はよくケンニキって呼ばせてもらってる。

「そうだけどさ、このツアーに行きてぇんだ。」

俺の携帯端末からケンニキの方へツアーの記事を送る。

「ツチノコか……。シンはオカルトにも興味あるもんなぁ……。このための資金調達ね…。」

「そうだよ。」

俺がケンニキと話していると、ケンニキを通して記事を読んだ姉ちゃんと親が爆笑する。

「あんた……これ、あはは、嘘松でしょ!うひひひひ。」

親も同意を示して頷いている。

「そもそも、ツチノコって正体判明してんでしょ。それを未確認って、あはは、ごめん、腹よじれる、あひひ。」

「まぁまぁ、いいじゃないか。まだ、4歳なんだしさ。あっはっは!」

姉ちゃんも親も皆してからかってくる。そこまで言うんなら、いいだろう!晴天の空を仰ぎし、無辜の者どもよ!俺の力でお前等の歴史に俺は間違ってないの8文字を刻みつけよう!

最近ハマったアニメキャラのセリフをオマージュし、俺のやる気を沸き立たせる。

「ふん!皆笑ってろ!俺が正しいって証明してやる!」

俺の強気な言葉も、馬鹿にされる。それでも俺はムキになって言い返した。それにも姉ちゃんから言い返され、ちょっとした口論が発生した。


結局、ケンニキが場を収めて、皆で飯を食って寝た。

全く、俺の家族は意固地な奴ばっかだ。ケンニキにも迷惑かけてるし。もう少し、柔軟に物事を捉えるっていう考えを身に着けた方がいいんじゃねぇかな。俺より年上なのに情けねぇの。


翌朝

起床はいつもより早めにした。そそくさと顔を洗って、必要なものをリュックに入れる。そして、警告バンドという、防犯ブザーのスーパー上位互換を腕に巻く。

「よし。あとは飯だ。」 

飯は予約していたものが配膳ロボによって机に並べられる。

ホッカホカのおにぎりだ。具はツナマヨ。ツナマヨはおいしいぞ…。

「うん、おいしい!」

毎日これを言うのが日課である。別に意味はない。

飯を食べたら、歯磨きをして、いざ、出発である。

「うぇ!」

玄関で姉ちゃんとばったり出くわした。

「おはよ。今日は早いん?」

欠伸をして、姉ちゃんが言う。

「当たり前だ。今日がツアーの日なんだから!」

「ふぅん。ツチノコ探し怖くないの?知らないとこに行くんでしょ?」

姉ちゃんの意外な言葉に俺は呆気に取られる。

「どういう風の吹き回しだよ。心配してんのか?」

「そりゃ、そうだよ。あたしはあんたのお姉ちゃんなんだし。心配くらいするよ。」

なんか、変な気持ちがこみ上げてくる。んだよ……昨日言い合ったのになんでこんなこと言えんだ。

そんな時はアニメキャラのセリフで誤魔化す。

「恐怖からの克服こそ、我が宿願。生命を繋ぐものの役割なり!」

へっ、ビシッと決まった!

「また、アニメの台詞?」

なんだよ、またって。確かに昨日の口論で多少、アニメキャラの台詞使ったけどさ。

「そうだよ。最終決戦時の悪役の台詞。いきなりパワーアップした主人公達に魔王は恐怖を覚えたんだ。でも魔王は立ち向かった。まぁ、結果的に負けんだがな。」

アニメのことを知らない姉ちゃんに使われたシチュを教え込む。

このアニメは俺が初めて見たアニメで思い入れもある。そん中で魔王にはゾッコンだった。できるものなら、魔王の近衛騎士として働いてみたい程に。

「ダメじゃん。」

はぁ〜〜〜!?ダメなのは姉ちゃんの頭じゃい!

「全く姉ちゃんは分かってないねぇ。勝とうが負けようが恐怖に立ち向かうってとこに惚れんだよ。魔王は信じてたんだ、恐怖と対峙することが重要だって。俺も信じてる。恐怖の先に何があるのかは分からんけど、体験自体は人生構成の中で、楽しいものになるに違いねぇって。」

魔王の行動を俺なりに咀嚼して、魔王への熱意とともに姉ちゃんに伝える。

「う〜ん。よく分かんないけど、ま、あんたが行きたいなら行けばいいよ。楽しんできな。飯のメールが来たら帰ってくんだよ。」

言われるまでもねぇ!

「じゃ、行ってくる!」

「うん。行ってら―。」



この時の俺は本当に馬鹿だった。年上の言う事を聞かず、未成熟の知能とネットの情報だけで物事を決めてしまったのだから………。

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