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憧れの存在


 俺は目を疑った。

 まさかシオンたちがここに来るなんて、夢にも思っていなかったからだ。

 

 ドクドク。

 心臓を高鳴らせながらもう一度配信画面を見る。


 彼女たちが今いるのは、第一階層。

 そして俺がいるのは第五階層と六階層のあいだのセーフポイント。


 会いに行こうと思えば会える距離に、憧れの存在がいる。


「ま、まじかよ……」

 

 いや、確かに俺がブログを始めたのは、記事を見て興味を持った人が来てくれたらいいなという気持ちからだよ?

 

 だけどまさか、シオンたちが来るとは思わないじゃん?

 憧れの存在のシオンとカナデ。……ただでさえ人見知りの俺にとっては高すぎるハードルである。最初の街を出たらいきなり魔王が待ち構えているようなものだ。


「あば、あばばば……」


 お、落ち着け。冷静になれ俺。

 そうだ、俺はあくまでただのファン。

 ここは見守りに徹しよう。


『ここが【神々の庭園】……。凄い雰囲気のあるダンジョンですね』


 俺がテンパっている間も、シオンたちの配信は流れていく。見慣れた入り口の風景がスマホに映り、ドキッと胸が高鳴る。


 本当に来てるんだ……夢じゃないよな……?

 俺は頬をつねってみる。痛い。どうやらマジらしい。


『これは……すごい風景ですね。【神々の庭園】と呼ばれている理由が分かりました』


 シオンがそんな感想を漏らす。

 コメントも大盛り上がり。俺もその流れに乗ってコメントをする。心配の声と期待する声が半々だ。


 シオンは最近S級にランクアップし、カナデも限りなくS級に近いA級。ビジュアルが注目されがちだけど、二人はかなりの実力者。


 特にS級ともなると、国内に数十人しか存在しない……らしい。あまり詳しくないけど、ニュースでそんなことを言っていた記憶がある。


 二人なら、第一階層は問題なく進めるだろう。

 ただ、あそこのモンスターはちょっと初見殺し要素があるというか……。それを知らないと苦戦するかもしれない。


『あ、その前に。今日、どうしてここに来たかの説明をしないといけませんね』


 た、確かに。

 どうしてシオンたちはここに来たんだろう?

 自分で言うのもなんだが、ここのダンジョンは圧倒的不人気。現にさっき配信をした時も誰もこなかったからな……。


「それに比べてシオンたちはすごい同接だな」


 同時接続数を示す画面右下に表示された数字は、10万を突破していた。

 自分で配信してみて、いかにこの数字がバケモノかが分かる。なにせ俺の十万倍だ。


《マサルが言ってたから?》

《今朝もニュースでやってたな》

《掲示板でも今すごい話題だよ》

《あー、あのブログか。でもあれデマなんでしょ?》


 そんなコメントが流れていく。

 あのブログ? いったいなんのことだろう。俺以外にも【神々の庭園】について書いている人がいるのだろうか?


「そうです。コメントにもある通り、私たちはあのブログが正しいのかどうかを確かめにきました」


《デマなんじゃないの?》

《まぁでも確かに気になるかも》

《危ないんじゃ……》

《気をつけてね》


「もちろん、安全には最大限の注意を払います。無理はしませんし、ほんの入り口に入るだけです」

 

 シオンがコメントを見ながら話を進めていく。

 隣に立つカナデは珍しくそわそわとして落ち着きがない。緊張しているのかな。


「――さて。それでは早速、行ってみましょうか」


 しばらくコメントの質問に答えた後、シオンは入り口に向かって歩き出した。


 やっぱり間違いない。見慣れた【神々の庭園】の入り口だ。ほんとうに、ここにシオンとカナデがいる……!!


「ど、どうする……!? ここで待つか!? いや、会いにいくか……!?」


 テンパる俺をお構いなしに、シオンたちはダンジョンへと入っていく。


「とりあえず、第一階層に行こう……!」


 絶対に配信の邪魔はしない。

 そう決めて、俺はシオンたちがいる場所へ向かうことにした。

 


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