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「…………ん? あれ……?」
まぶしい月明かりにしょぼしょぼする目をこすって、辺りの様子を用心深くうかがう。
確か、トビーの四人の兄弟姉妹が折り重なるようにして眠るベッドの足もとで、自分は丸くなっていたはずだ。寝ている間に逃げないように、と余っていた物干しヒモを首に結ばれてしまったから、動いたら苦しくなって目が覚めるはずなのに――。
「これこれ、イーヴィー嬢ちゃん、お前さまはどこにいなさるんだね?」
そっか、これはブタ氏の夢なのね、と、耳に飛び込んできた、もはや聞き慣れた声に納得する。
「今はフラムのトビーの家よ」
羊毛のようにフカフカする雲の上に身を起こすと、今宵も三日月の上に腰かけたブタ氏と目が合う。
「浮気かね? アーサーと言いなさったかね、お前さまのいい人が嘆くぞよ」
「い、いい人って、ア、アーサーは、こ、こ、恋人なんかじゃないわ!」
やっきになって否定すると、ブタ氏はしてやったり、という風にニンマリと笑った。そうすると何だかおじいちゃんぽい。
「お前さまは、そのアーサーというお人のことが好きみたいじゃの」
はっと息を呑んだイーヴィーは、ブタ氏に食ってかかった。
「ちょっと! カマをかけたわね!」
「安心めされ。魔女は古来から恋愛運が良いでのう」
ほっほっほ、とブタ氏はあくまで太平楽だ。
「ほ、ほんとっ? ほんとに恋愛運がいいのっ?」
怒っていたことも忘れて身を乗り出す。
「これこれ、雲から落ちなさるよ」
イーヴィーが下を見てあわてて後ずさった間をとらえて、ブタ氏はさっさと話を変えた。
「ところで嫁入り前の嬢ちゃんが外泊とは、ちと大胆でないかの? どうなさったのじゃ?」
きかれた途端、イーヴィーの眉尻が下がった。
「あのね……、ちょっと事情があって帰りにくいの」
「ふむ。ではその事情とやらを、ちと話して聞かせてくれんかのう」
耳を傾けてきたブタ氏に、イーヴィーは「それがね……」と薬草園を出てからの顛末を語り始めた。
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