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4-4

「…………ん? あれ……?」

 まぶしい月明かりにしょぼしょぼする目をこすって、辺りの様子を用心深くうかがう。

 確か、トビーの四人の兄弟姉妹が折り重なるようにして眠るベッドの足もとで、自分は丸くなっていたはずだ。寝ている間に逃げないように、と余っていた物干しヒモを首に結ばれてしまったから、動いたら苦しくなって目が覚めるはずなのに――。

「これこれ、イーヴィー嬢ちゃん、お前さまはどこにいなさるんだね?」

 そっか、これはブタ(ムッシュー・ピッグ)の夢なのね、と、耳に飛び込んできた、もはや聞き慣れた声に納得する。

「今はフラムのトビーの家よ」

 羊毛のようにフカフカする雲の上に身を起こすと、今宵も三日月の上に腰かけたブタ氏と目が合う。

「浮気かね? アーサーと言いなさったかね、お前さまのいい人が嘆くぞよ」

「い、いい人って、ア、アーサーは、こ、こ、恋人なんかじゃないわ!」

 やっきになって否定すると、ブタ氏はしてやったり、という風にニンマリと笑った。そうすると何だかおじいちゃんぽい。

「お前さまは、そのアーサーというお人のことが好きみたいじゃの」

 はっと息を呑んだイーヴィーは、ブタ氏に食ってかかった。

「ちょっと! カマをかけたわね!」

「安心めされ。魔女は古来から恋愛運が良いでのう」

 ほっほっほ、とブタ氏はあくまで太平楽だ。

「ほ、ほんとっ? ほんとに恋愛運がいいのっ?」

 怒っていたことも忘れて身を乗り出す。

「これこれ、雲から落ちなさるよ」

 イーヴィーが下を見てあわてて後ずさった間をとらえて、ブタ氏はさっさと話を変えた。

「ところで嫁入り前の嬢ちゃんが外泊とは、ちと大胆でないかの? どうなさったのじゃ?」

 きかれた途端、イーヴィーの眉尻が下がった。

「あのね……、ちょっと事情があって帰りにくいの」

「ふむ。ではその事情とやらを、ちと話して聞かせてくれんかのう」

 耳を傾けてきたブタ氏に、イーヴィーは「それがね……」と薬草園を出てからの顛末を語り始めた。


読んでいただきありがとうございます。

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