第7話 社畜剣姫、転職活動をする2
わたしが中に入って用件をお伝えすると、すごく快く迎えて貰いました。
面接担当の方は、日焼けをしていて髪もちょっと長くて、体も大きい感じですが、ニコニコしていました。
「よく来てくれたね~! さささ、どうぞどうぞ」
立派な応接スペースのようなところに通して頂きました。
「急いで移動して喉乾いてるでしょ? はい、どうぞ」
冷たい飲み物を出して頂きました。アイスティーです。
「良ければケーキもどうぞ、リラックスしてお話したいからね」
いちごのショートを出して頂きました。
飲み物のグラスもそうですが、外のカフェみたいにお洒落です。
「あ、ありがとうございます――」
物に釣られると言うわけではないですが、何だか少しほっとしてしまいます。
他の事務所では、こんな風に優しく迎えては貰えませんでしたので――
「高井ひよりちゃん……だったね。話聞いたよ~、大変だったね? 華やかなようで狭い業界だから、大手に睨まれちゃうと行き場無くなっちゃうよね」
「は、はい。本当にそうで……それでその、御社は……」
「ウチ? ウチはもちろん、君の事を信じるよ! 大変かもしれないけど、君にチャレンジする気があるなら大歓迎さ!」
「ほ、本当ですか!? あ、ありがとうございます! そんな風に仰って下さる所があるなんて……! ううぅぅ……本当にありがとうございます……!」
思わず涙ぐんでしまいます。
わたし、まだ何とかなるかも知れません……!
「辛かったんだね。でも大丈夫だからね? 僕達と一緒に頑張ろう?」
わたしの肩をぽんぽん、と優しく叩いて下さいます。
見た目はちょっと悪そうな面接官さんですが、とてもいい人です。
「はい……! ぐすっ……! よ、よろしくおねがいしますぅぅぅ……」
「じゃ、うちでやって行くって事で……! これ契約書だから、ここにサインお願いできるかな?」
「は、はい……!」
涙で前が見えませんが、わたしは言われた場所にサインします。
「うん、ありがとう! じゃあ、それ食べて落ち着いたら――早速いこうか!」
と言うわけで一息ついて落ち着いたわたしは、隣の部屋に通されました。
そこは撮影スタジオのような明るい部屋でした。
立派なカメラもしっかり用意されています。
「ささ、ひよりちゃんはそっち! カメラの前に立ってね~」
「あ、あの……? どうしてわたしを撮るんでしょうか……?」
「うちは女子社員が出演する場合もあるからね~」
「は、はあ……確かに時々、裏方さんを映してスポットを当てる配信者さんもいらっしゃいますね」
「そうそう! だからその時のためのカメラテストだよ! 履歴書の写真を撮ると思えばいいからさ。あ、でも顔は可愛く笑顔でね!」
パシャパシャパシャパシャ!
カメラのシャッター音が響きます。
「そ、そう言われても……わたしは可愛くなんて……」
何とか笑顔を浮かべようとしますが、緊張して引き攣ってしまいます。
「そんな事ないない! 自分で気づいてないだけで、初心な感じが可愛いよ! あ、でもちょっとだけ、前髪で目元が隠れ過ぎてるかなぁ? ほら、これで前髪パッチンして、顔をよく見せてくれる?」
カメラを片手に近寄って来て、バレッタを手渡して頂きました。
「こ、こうですか……?」
「うんうんうん! いいよいいよ!」
目の前でシャッター音が鳴り響きます。
「じゃあそのまま床にぺたんって座ってくれる? で、こっちを見上げる感じで!」
「は、はい……!」
照明が凄く明るいのもあって、ちょっと熱くなってきました。
「ふう……」
「あ? ちょっと熱いよね~? じゃあ、上のジャケットは脱いじゃおうか? シャツだけでいいからね~」
「はい、済みません」
お言葉に甘えて、スーツの上のジャケットを脱ぎました。
「ボタンもそんな上まで留めてなくていいから~。楽にしちゃって!」
「わ、分かりました」
上から一つ、ボタンを外します。
「うんうん! もう一つ外しちゃお!」
「は、はぁ……」
「その方が涼しそうで爽やかだから!」
「そ、そうですか……?」
「うんうん、いいよいいよ!」
パシャパシャパシャパシャ!
「よし、じゃあもう一つ外しちゃお!」
「ええっ……!? で、でももう十分涼しいですし……」
それにその……これ以上外すと、下着が……
「そう? オーケーオーケー! じゃあそのまま、ちょっと前に手を突いて、そのまま前かがみになってくれる~?」
「こ、こうでしょうか……?」
「あ~! いいね! ひよりちゃんはあれだね、着痩せするタイプだね~? すごくいいよ~!」
「え……!? そ、その……」
たしかに胸は普通よりは大きい方だと思いますが、どうしてそんな事……
「あ……!」
そこでわたしは気が付きます。
今、前かがみになったわたしの胸元を……!?
ちょ、ちょっとエッチな写真を撮られていたんでしょうか、わたしが……!?
あわわわわわわわわわ!
わたしは頭がパニックになりながら、問いかけます。
「あ、あ、あのっ!」
「ん?」
「こ、これは何の撮影なんですか? ほ、本当に履歴書の写真なんでしょうか……!?」
「ん? あ~まだ気付いてない? うちAVのメーカーなんだけど……?」
「え……? えええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
わたしの悲鳴が、スタジオに響き渡りました。
ここまで読んで下さりありがとうございます!
『面白かったor面白そう』
『応援してやろう』
『ひよりちゃん!』
などと思われた方は、ぜひ積極的にブックマークや下の評価欄(☆が並んでいる所)からの評価をお願い致します。
皆さんに少しずつ取って頂いた手間が、作者にとって、とても大きな励みになります!
ぜひよろしくお願いします!