第6話 社畜剣姫、転職活動をする
――それから、二週間が経ちました。
「あ~。元DLiveで働いてた子? あれだよね、ライブ配信の前にフェイク映像で本放送妨害しようとしたって……悪いけどウチじゃ雇えないな。他所行ってくれる?」
面接担当の男の人が、ため息混じりにそう言いました。
あの時の放送事故と、その後にDLiveから発表された内容は、みんなが知っているみたいです。
「ち、違うんです! あれはフェイク映像では無くて……! 信じて下さい、お願いします……!」
「いや、あそこの社長がロクでもない事は分かってるよ? でもDLiveは大手だし、あっちがそう言ってる以上、君を雇っちゃったらウチが君に指図してやらせた、みたいに言われちゃうじゃない? そうすりゃうちの事務所と、事務所に所属する配信者達まで疑いの目で見られる。そんなリスクは冒せないんでね」
「本当に嘘じゃないんです……もう御社に断られてしまったら、他に行く所が……!」
「そうは言われてもねえ……」
面接官の方が渋い顔をします。
あれから、他のどこのダンジョン配信事務所を回ってもこんな反応です。
わたしにはほとんど貯金なんてありませんから、早く再就職先を見つけないと家賃すら払えなくなります。
そうしたらわたし、ホームレスになってしまいます。
田舎に帰っても仕事なんてありませんし、頼れる人もいません。
両親が早く亡くなって、おばあちゃんに育てて貰ったんですが、そのおばあちゃんも去年亡くなりました。
もうわたしに、帰るべき場所はないんです。
何とか一人でやって行かないと行けないんです。
「それにねえ。あの映像俺も見たけど――正直、フェイクだって言われた方が納得行くけどね? あまりにもちょっと……なぁ」
「あ、あれは通信教育が凄いだけで……! わたしが凄いんじゃないんです……!」
「はっはははは! いやいやそれはねぇ?」
笑われてしまいました。
「うぅぅ……! お、お願いです、本当に何でもしますから……! 二日に一回徹夜でも大丈夫ですから……!」
「いや、そんなブラックな環境俺も嫌だよ。まあ、ウチで雇うのはやっぱり難しいけど……知り合いの事務所を紹介する事は出来るかな? 良かったら行ってみる?」
「ほ、本当ですか!?」
わたしは思わず立ち上がります。
チャンスがあれば、どこでも行ってみないと!
DLiveで働いていた時は、とても忙しかったですが、仕事自体は好きでした。
影ながらですが、華やかな世界に触れて、そこで輝いている配信者の皆さんの姿を間近で見せて貰えるのは嬉しかったです。
できればまだ、この業界で働きたいんです。
「お? やる気ありそうだね? じゃあほらこれ、先方の名刺。連絡はしておいてあげるからさ、これから行ってみなよ」
そう言って面接官の方は、わたしに名刺をくれました。
確かにこことは別の会社の名刺です。
「あ、ありがとうございます……! 早速行ってみます! 本当にありがとうございます……!」
わたしは何度もお礼をしながら、その場を後にしました。
――何とかなるかも知れません!
都会の人は冷たいっていうし、DLiveでは確かに冷たくもされましたけど――
まだやり直せるかもしれません。
いい人もいるんですね。本当にありがたいです。
そして――
電車に乗って五駅ほど移動して、名刺の住所の場所に到着しました。
『ソフト・イン・ディマンド』と書かれた看板が目印です。
ここですね!
「よし、今度こそ再就職先を……! がんばれ、わたし!」
わたしは気合を入れて、事務所の中に足を踏み入れました。
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