表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/7

第4話 社畜剣姫、ロケハンに行く4

 ダンッ!


 わたしは一番近いヘルワイバーンに向けて走って行きます。

 俊敏な相手はそれに反応して、叩き潰そうと大きな手と爪を振り下ろしてきます。


 ドガアァッ!


 ですがそれは空を切り、地面を抉って大きな穴を開けてしまいます。

 その時わたしは、ジャンプして攻撃をかわし、相手の肩口まで飛び上がっていました。


「やああぁぁぁぁっ!」


 肩口から斜めに、木刀を斬り下ろします。

 わたしが着地すると同時に、ヘルワイバーンの体が真っ二つになって崩れ落ちました。


”うおおおおぉぉぉぉっ!?”

”こいつも一撃かよ!”

”他のレアハント企画じゃ、こいつ一体狩るだけでも死闘なのに……!”

”でも、今のは斬ってるのが見えたな! やっぱ斬ってたんだ!”

”何で木刀でモンスター斬れるのかは謎だけどな……!”


”【¥10,000@ぜになげ子】逆にあの木刀が、氣の伝導率が超高い霊木の可能性がありますね。氣さえ通せば、普通の金属より硬くなります。民民書房によると”

”【¥10,000@ぜになげ子】太刀筋がカメラに映ったのは、相手の体の強度が高過ぎて、斬り抜ける速度が若干落ちたからでしょう。さすがヘルワイバーンです”


”解説乙ナイスパ!”

”ないすぱ! 動き見える分、やられ方がダイナミックだけど!”

”うん、こっちのほうが相手弱く見えるw それはそうとナイスパ!”

”【¥10,000@ぜになげ子】うわ~。言ってる間にもう一体バラバラですね”


 わたしが二体目のヘルワイバーンを斬り倒すと、残りのヘルワイバーンの群れが一斉に飛び立ちました。


 高い天井近くまで飛び上がって、わたしを見下ろしてきます。


”飛んだ!”

”逃げたか……!?”

”地上戦は不利そうだからな”

”距離とって安全圏から攻撃するつもりだな!”


 グオオオオオオオォォォォォッ!


 大きな唸り声がその場に響きます。

 それを合図に、複数のヘルワイバーンが一斉に炎を吐き出します。


”うわすげぇ炎!”

”画面が真っ赤だ!”

”ひよりちゃんの姿も見えん!”

”大丈夫か!? ドローンも焼け落ちるんじゃ……!”


 物凄い量の炎が、わたしに向けて降り注ぎます。


 わたしはぐっと腰を落として足を踏ん張り、強く木刀を握りました。

 左手を照準代わりに前に突き出し、剣を握った右手は矢を引くように引き絞ります。


「神剣寺流・大賀阿罵頭宇火!」


 突き出した剣先から、巨大な氣の塊の虎が出現します。


 ガオオオオオオォォォォンッ!


 それが炎に向けて飛んで行き、弾け飛ぶと凄まじい衝撃波となり炎を逆流させます。

 そしてヘルワイバーン達も吹き飛ばし、天井に叩きつけました。


”な、なんじゃそりゃああああぁぁぁっ!?”

”すげえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?”

”な、何か出たぞ! た、タイガーバズーカ!?”

”と、虎だったよな……!?”

”炎を一発で逆流させて、吹っ飛ばしたぞ!?”

”【¥50,000@ぜになげ子】ま、まさか全ての剣術の源流となった神剣寺に伝わる奥義を、この目で見る事が叶うとは……!”

”【¥10,000@アッパーマス夫】ま、また民民書房ですか……!?”

”【¥10,000@ぜになげ子】ええ、古の中国武術の寺院に伝わる技がバズーカという……! これは意図的なギャグですよ”

”【¥10,000@中毒者】何はともあれ凄いもん見たな!”

”【¥5,000@生ポニキ】こんな俺ですらスパチャせざるを得ない”

”皆さんナイスパ!”

”画面がカラフルだな~! みんなナイス!”

”最後のやつはやめとけw”


 天井に激突したヘルワイバーン達は、力無く地上にどさどさと落ちて来ます。

 もう動かず、立ち上がってきません。

 これで全部倒しました。


”いやでもこれ、倒したはいいけど、今夜の本配信はどうなるんだろ?”

”DLiveのライバー達がここまで降りて来て、ヘルワイバーンの遺体と対面するのもそれはそれで面白いけど……”

”次沸くのに72時間待ちだよね?”


 勿論このままでは帰れません。

 ロケハンではなく、ライブをぶち壊しにしてしまいます。


 わたしは木刀の剣先を地面に叩きつけます。


「えぇぇぇいっ! 散魂竜光っ!」


 地面に突き立った剣を中心に光が立ち上り、それが地面を這う波紋のように広がって行きます。

 眩しい輝きが静まった後――そこには綺麗さっぱり、何もありませんでした。


”えええぇぇぇぇぇぇっ!?”

”き、消えたぞ!?”

”何も残ってない!”

”今の光で消滅したのか……!?”


 わたしは暫くそのままで待ちます。


 すると――何もない空間からヘルワイバーンが次々と姿を見せ始めます。

 最初にこの部屋に踏み込んだのと同じ、十体くらいの数です。


”沸いた!”

”な、何で……!?”

”72時間待ちの話は……!?”

”【¥50,000@ぜになげ子】あの技は、ヘルワイバーンの死体を魔力レベルに分解して、ダンジョンに還元したのかも知れません”

”【¥10,000@ぜになげ子】魔力はダンジョンがモンスターを生むエネルギー。それが満たされれば――さすが、中国四千年の武術は奥深いです”

”いや、ダンジョンが出来て十年だし! 四千年意味ないけどナイスパ!”

”とにかく再出現間隔無視って事かナイスパ!”

”解説ありがとうございますナイスパ!”

”ないすぱ! ホントに謎の資金力!”

”【¥10,000@ぜになげ子】いや、さすがにちょっとやり過ぎだと思いますが、止められないんです……この子凄過ぎです”


「まだ、現れてくれませんね……!」


 わたしはもう一度、ヘルワイバーンの群れを殲滅します。

 そして、散魂竜光で消し去ります。


 次に出現したグループにも、目的のプリズムワイバーンはいませんでした。

 わたしはもう一度同じ事を繰り返します。


 これが、ロケハンです。

 撮影の前に、プリズムワイバーンを出現させておくんです。


 これが純粋なレアハント企画と言えるのかどうかは微妙ですが、社長も鈴木先輩もそのくらい他事務所もやってるって……


”おいもう何セット倒した?”

”5セット! 50匹くらい一人でやってるぞ、この子!”

”なんでこの腕で手取り十万のブラック労働させられてんだよw”

”たしかにw才能の無駄遣いが過ぎるよな”


 普段は外注の業者さんに頼んでロケハンするんですが、うちは予算が少なかったり、社長が支払を渋ったりするので、あまり外注業者の方からの評判は良くないみたいです。


 以前どうしても業者さんがつかまらない時があって、その時鈴木先輩が自分でロケハンをしていました。昔は探索者として活動していた事もあったそうです。


 それを見て、わたしも出来るようにならなきゃと思って、通信教育の講座を申し込んだんです。


”100! 今ので百匹斬りだぞ!”

”ほんとすげぇ! 夢でも見てるのか俺は!”

”同接もえらい事にw”

”ほんとだ、1000万とか普段の10倍だろ!”

”ってか、こんだけやれば期待値的にそろそろあるんじゃ……”


 その時です。

 次に現れた竜の姿は――漆黒に輝く鱗ではなく、キラキラした虹色の輝きに包まれていました。体の大きさ自体も、ヘルワイバーンより一回り大きいです。


「や、やった! あれがプリズムワイバーンですね……!」


”””キタアアァァァァァァァァァァ!”””

”””ホントにでたーーーーーーーー!”””


”【¥10,000@……”

”【¥20,000@……”

”【¥30,000@……”

”【¥40,000@……”

”【¥50,000@……”

”【¥30,000@……”

”【¥30,000@……”

”【¥50,000@……”

”【¥50,000@……”


「ロケハン、完了です!」


 わたしはドローンに飛びついて回収し、停止ボタンを押します。

 さあ、帰ります!


 帰社する前にショップに寄って、スマホの修理をお願いしないといけません。


 ――だけど無事にロケハンを終えたと思って帰社すると、大変な事になっていました。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


『面白かったor面白そう』

『応援してやろう』

『ひよりちゃん!』


などと思われた方は、ぜひ積極的にブックマークや下の評価欄(☆が並んでいる所)からの評価をお願い致します。


皆さんに少しずつ取って頂いた手間が、作者にとって、とても大きな励みになります!


ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ