第2話 社畜剣姫、ロケハンに行く2
”ん? 何かはじまった!”
”プリズムワイバーン討伐配信は今夜だったよな? ゲリラ配信?”
”あ。スマホ身投げ配信かな?”
”これは見事なまでに地の底に……”
”うわ、かわいそう……! めっちゃしょんぼりしてるじゃん”
”ってかこの娘誰だ? DLiveのライバーじゃないよね?”
”えーと……テスト配信、高井ひより、ロケハン中って概要欄に書いてるな”
”あ~運営スタッフの子? テスト放送を間違って公開しちゃってるのか”
”顔あんま映らないけど、どう? かわいい?”
”ん~前髪長くてあんまわからん”
”服も普通のスーツだし、地味よね。名前はかわいい”
”【¥1,000@ぜになげ子】まあ、メイキング映像を見せてくれるのはありがたいですな。がんばれひよりちゃん”
”ナイスパ!”
”ナイスパです~”
”ないすぱ!!”
「あ! で、でも見つけたら買い替えじゃなくて修理で済むかも……! 急がなきゃ!」
”いやいやいや”
”㍉”
”あきらメロン”
”え? 助走して何を!?”
”ちょ……! まさか……!?”
”いやリアル身投げ配信はいけませんよ!?”
”うわマジか……!? 誰か止めろって!”
「行きます! とおおおぉぉぉぉ~っ!」
””””逝くなああああぁぁぁぁぁぁぁっ!””””
吹き抜け部分に飛び込んだわたしの体は、凄い勢いで落下して行きます。
風圧をすごく感じます。
このままでは地面に叩きつけられて、流石に無事では済みません。
でも大丈夫。
わたしはロケハン用に持って来た木刀を頭の上でぐるぐると旋回させます。
「ええぇぇいっ! 人翼天翔っ!」
ギュルルルルルルルッ!
猛回転する木刀が、ヘリコプターのプロペラの役割を果たし、わたしの体をふわりと持ち上げました。
ネットで見つけた、民民書房の『はじめての探索者のための中国武術講座』で習った技です!
ダンジョンの中は特殊な『氣』に満ちているから、それを上手く使えばこういう技も出来るらしいです。通信教育って凄いです。
”おおおおおおおぉぉぉぉぉぉいっ!?”
”飛んだ! 浮いとる!”
”なんじゃこりゃあああぁぁぁっ!?”
”物理的におかしいだろ! これ何かのフェイク画像か!?”
”木刀頭の上で旋回させて飛んでるよね、こんなの出来る奴見た事ないぞ!?”
”【¥10,000@ぜになげ子】むう、あれが世に聞く『人翼天翔』……! まさかこの目にする事があろうとは……”
”ナイスパ!”
”知っているのか、ぜになげ子!?”
”知っているのか……なげ子! あ、ナイスパです!”
”解説期待。ないすぱ!”
”【¥2,000@ぜになげ子】民民書房のトンチキ武術講座本にある架空の技ですよ”
”民民書房って、それ漫画のやつだよね。信じちゃったのか……?”
”いや騙されてるやん!”
”いやでも、実際できてるんだから、あの子は騙されてないんじゃ?”
”とにかくヤベェ奴だぞ!”
”これはおもしろくなってきた!”
”また民民書房のインチキ技がリアルに見られるかも知れん!”
”ちょっとSNSに拡散してこよう”
”配信ミスに気づいて止めないでくれよ……!”
わたしは人翼天翔でふわふわ漂いながら、吹き抜けの続く一番下まで降りました。
着地すると足元は何だか沈み込むように柔らかくて、クッションが効いた感じです。
低反発的なあれです。
でもその床の材質が幸いしたんでしょう。
スマホが近くに落ちているのを発見しました!
「あ、わたしのスマホ! よかったぁ、粉々になってないよぉ……!」
画面はバキバキになってますし本体も歪んで電源落ちてますが、これなら修理が効くかも!?
「ぐすっ……見つかって良かったあ。わたしの手取り十万円じゃ買い替えなんて難しいし、アルバイトしようにも毎日徹夜か終電だし……」
”社畜で草”
”泣いとるがな!”
”どブラックじゃねーか!”
”やりがい搾取されてるぞこの子!”
”あんなすんごい技使えるのに、才能の無駄遣いが凄いな”
”社畜剣姫ひよりちゃん”
”草”
”笑笑笑”
”やめたれw”
”【¥20,000@ぜになげ子】修理代援助”
”【¥5,000@ポチ】これはさすがに私も”
”【¥10,000@江田島偽八】社畜剣姫援助”
”【¥10,000@Rice】社畜剣姫がんばれ!”
わたしは涙を拭きながら、落ちているスマホを拾おうと近づきます。
すると突然、足元がぐらぐらと揺れ始めます。
「わっ……!? な、何……!?」
グウウウゥゥゥゥゥゥゥ……!
足元……!? これ、床じゃなくて大きなモンスター!?
唸り声と共に大きく動いて、わたしとスマホは投げ出されてしまいます。
「お、大きい……! 」
着地して見上げると、物凄く巨大なワニみたいなモンスターが、こちらを見下ろしています。
でもそれよりも何よりも――
グシャアァァッ!
モンスターの大きな前足が、わたしのスマホをぺちゃんこに踏み潰していました。
「! いやああああああぁぁぁぁあぁっ!?」
わたしの悲鳴が、ダンジョンの奥深くに響き渡りました。
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