はじまりのよん
「いっち に 、 いっち、に」
……何の間違いか俺は高校生になって手を握って貰いながら歩いている、それもクマのぬいぐるみの姿でだ
しかし、これが思ったより難しい。重心を
後ろに意識するといいらしいが後ろにし過ぎると今度は後ろに倒れてしまいそうだ
「今度は片手だけにしますよ、いっちに、いっちに」
それにしてもテイの手はふわふわしてて触り心地がいいな本当にぬいぐるみだなあ
「次は壁に背中をくっつけて1人で歩いてみましょう」
「はーい」
薄汚れた壁に背中をくっつけるとひんやりと
した感触が伝わった
「ゆっくりゆっくりでいいですからね」
こちらを見ながらテイは身体を左右に捻っている。俺は壁に張り付きながら横に横に歩いてみた、壁がチクチクしてちょっと痛い
「それでしばらく歩いたら今度は腕だけ壁にくっつけて後ろ向きで歩いてみてください」
「あーはい」
しばらくこれは続いた
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「何とか感覚掴めましたか?」
「うーん……何となく」
幾らか歩く練習をして俺は何とか歩ける様になった。感覚としては平均台を渡る様な感じだ、頭を前か後ろに持ってき過ぎると倒れてしまうだからとにかく頭をまっすぐにこんな
感じだった
「それじゃ、ルールの説明にいきましょうか
こっちまで来てくださいね」
「はいはい」
言われるがままに向かった先に何かリングみたいな線が引かれていた。まるで柔道のリングみたいだ
「ルールと言っても単純なんです、線から相手を出すか相手がギブアップしたら勝ちって
感じに」
「制限時間は?」
「定めらていません。決着が着くまで行われます」
テイは線の端に立っていた。俺とかなり離れている
「それで初期位置はそこですね。そこに立てば大丈夫です」
俺は足元を見た。端に立てばいいってわけか
「端だからって言って審判の目の前とか角とかはダメですよ」
そうもいかないみたいだ……
「それで試合のやり方何ですけど」
その時、テイは姿勢を低くした。そして
「こんな風に蹴りでも」
「殴ってでも」
「絞め技でも」
「いきなりタックルしても大丈夫です」
凄まじいスピードで蹴りやパンチやタックル等を俺の周りで見せた。全て寸止めで
「あと大切なのが人間の時とぬいぐるみの時は痛覚がリンクしてるんですね。だから股間に攻撃すれば凄い痛いし目を攻撃すればよろける。これを覚えといてください」
「は、はい……」
とにかくテイはよく動く。俺の周囲をとにかくだ。俺は怖くて一歩も動けない
「なので顔とか股間の攻撃は嫌われるんですがレベルが上がってくればそれが当たり前に行わます」
「まあここぐらいのレベルだと必要ないかもですが」
「ここぐらいのレベル?」
「失礼、口が滑りました。後は細かい事ですねまず絞め技を食らった時は….…」
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「以上で説明は終わりです。何か質問はありますか?」
「あ、それなら」
俺は気になってた事を聞く事にした
「チラシに一勝ごとに賞金200円って書いてあったんですけど本当何ですかね?」
それを聞くとテイは首を傾げた
「賞金なんてありませんよ……?大体何ですかそのチラシって」
「だって落ちていたチラシに……あっ!」
気付けばあのチラシどこかへ落としたらしい
バックも何も持ってきてないからな
「まあ連勝すれば賞金は出ますけどね」
「連勝!?それって何連勝ぐらい?」
にっこりの顔でテイは答えた
「300連勝ですね」
バランスを崩した訳でも無いのに俺はその場に倒れてしまったなぜだろう……