はじまりのさん
クマがこちらを見ている……何の特徴も見当たらない普通のクマ(のぬいぐるみ)だ
「落ち着きましたか?」
これは現実だ、信じられないが現実なのだ
「うん」
「それじゃ始めましょうか」
倒れてた俺の手をぎゅっと掴むとクマはよいしょっと持ち上げた
「そういやあんたの事なんて呼んだらいいんだ?」
「私ですか?そうですね……テイとでも呼んでくれたらいいです」
じゃあ、テイと呼ぶ事にしよう
「それじゃまずは体操しましょう」
「はいはい」
「私の真似して下さいね。まずは身体を上に伸ばしてー」
テイはその短い手を頭の横でぐいっと伸ばした。足もついでに少し浮いている
俺も真似して人間状態の時みたいに伸ばしてみるが
「うわっ……転ぶっ」
「あらら、いきなり伸ばし過ぎですね。まあ
ゆっくりいきましょう」
身体のバランスが取れず、思わず倒れそうになってしまう。あれ?
「じゃ次は手を上に上げた状態から横に身体を伸ばしてみましょう」
「はーい」
また真似をして横に身体を伸ばしてみる。思ったより伸びるっ……伸びすぎて
横に倒れてしまった
「だから伸ばし過ぎですって……」
「伸びるんですもん……」
テイに起こしてもらい、何とか俺は立つ
「それじゃ次は腕を前に出してみましょう」
「はい」
今度は簡単だ、腕を前に出すだけだからな
「次に腕を左右に」
これも簡単だ、右腕と左腕を横に出す
「最後に腕を後ろで組んで」
……組む!?組めるのか!?この腹の半分ぐらいしか無い腕が
しかし、テイは当たり前の様に組んでいる
やってみるか
「お、おお……...?」
組める、組めるぞ!やっぱりこの身体思った以上に柔らかいな
「さて体操は終わりですね。次は足をちょっとずつ上げてみましょうか。こんなふうに」
テイは右足をゆっくりと上げた、上げまくった、上げ過ぎて身体にくっつくまでだ
つーかどうやってそれでバランス維持してんだよ、片足どうなってんの
「ゆっくりですからねーはい」
俺はちょっとだけ足を上げた
「……もうちょい上げられません?」
「ええ……だって倒れちゃいそうで」
さらに上げてみる。案の定、不安定な姿勢になりふらふらとバランスが保てなくなる
その身体をテイが押さえた
「まあ難しいですよね……でもこれぐらい上げられないと」
「今後に響きますよっ……と」
い、
痛いっ!!マジで痛い!止めて!無理やり足持ち上げ無いで!ひー!
「やり過ぎましたごめんなさい」
「鬼ですかアンタは!」
申し訳ないと言った表情も見せず、テイは
また身体を上に伸ばした
「じゃ次は歩いてみましょうか」
「歩く?それぐらいなら普通に……」
「ではまずおひとりでこっちまで来てもらえますか?」
彼は少し距離を私から置いた。手を広げて私を待ち構えている
私は人間の時と同じように一歩を踏み出した
が
こてっと目の前に倒れてしまった
頭が……重かった!ナニコレ
「分かりましたか?難しいんですよそれが」
「ヨクワカリマシタ……」