はじまりのに
中は狭かった。学校の教室の大体半分ぐらいだろうか、真ん中に柔道のフィールドみたいな赤い線が引かれている
「やあやあはじめまして。私は講師の
済南時乃路地と言います。よろしくお願いします」
銀縁の眼鏡をかけた七三分けの男が歩いて来た。グレーのスーツに黒いネクタイをしている
「こちらこそよろしくお願いします。で、このぬいぐるみをどうすんですか?」
「ああ、それはこう唱えて見れば分かりますよ」
「同調」
うわ……光出した!なに!?目の前の男が光出したよ!
……あれ?消えた?男が消えた?
「ここですよ」
声がした足元を見ると、クマのぬいぐるみが
ズボンの裾を引っ張っていた
「も、もしかしてさっきの人!?」
「そうですよ、不思議でしょ?さああなたも」
うーん……これはちょっと怖いがまぁやってみるしか無いか
「と……同調」
唱えた途端、目の前が眩しくてたまらない。
まるでペンライトを目に当てられた時みたいだ
どうなってしまうんだ……!?
やがて眩しさは収まった。視界が変だ、まるで低くなった様な
「出来ましたね」
え……目の前にくまちゃんが……なんか<せんせい>ってフェルトに書いて安全ピンで留めてるし
「まあ驚くのも無理は無いでしょう。落ち着くまで待ちますよ」
驚くって……俺は?
自分の手を恐る恐るみた
それは間違いなくさっき買ったふわっふわの
青いぬいぐるみの手だった
「うおぁああああっーーーー!?!?」
「ぎやっーーーー!!!!!!!!」
その叫びは隣の部屋まで響いたという……