山陰を東へ
米子に到着した。『まつかぜ2号』は増結して13両編成になっていた。鳥取・福知山等への乗客が増えたと見られ、空席が残り少なくなってきた。大阪へは伯備線・新幹線経由の早いが、乗り換えの手間と新大阪での寝過ごしリスクを考慮して在来線特急を乗る人も多いようである。
新幹線の西端は現在岡山であるが、博多まで延伸開業した時に新幹線連絡中心のダイヤとなる事で乗り換えの手間をいかに軽減させるかが気になるところである。国内線航空機・夜行バス等の競合は避けられぬというのが今後の日本であるのは間違いない。
冬の日照時間は短い。粗く波立つ日本海に陽が沈もうとしている。朝から車内で殆ど座っていても腹減るのが人間である。車内販売から元祖かにずしを購入し、晩飯とする。酢飯の上に松葉ガニの棒身・ほぐし身・錦糸卵が散りばめられている。豪華であるが実にシンプルである。下から響くディーゼルエンジンに揺られながらも箸を運びやすい。勿論、言うまでもなく美味い。これこそ駅弁に求められた姿でなかろうか。
浜坂を過ぎ、減速して鉄橋を渡る音がし始めた。外は真っ暗であるが、車窓には日本海と深い谷が映っている事が分かる。言わずと知れた餘部鉄橋である。急行以下の列車であれば窓を開けてみたいところであるが、目の前にあるのは固定窓である。仮に開けられたとしても周囲の乗客から寒いと苦情を受けそうである。冷房完備の通勤電車も増えてきたので、冷房完備が常識化した頃には「窓を開ける」という行為も不要になるかも知れない。しかし、混雑する通勤電車の場合は窓を開けて換気したい時もあるので完全固定窓化には疑問を抱く。特急でも非喫煙者の私には窓開けられぬので少し困る。外国では禁煙化が進んでいるようであるが、日本での受動喫煙が本格的に問題になるのは昭和90年頃であろうか。
気付けば日本海から遠く離れ福知山線内に入っていた。神鉄がチラリと見え、三田を過ぎた。武庫川の下流に沿うように進む。この区間は日中なら絶景である。この区間の写真は本でもよく掲載されている。しかし、十数年後には電化・複線化に伴う新線切替される事になっており、この区間の車窓を楽しめるのもそう長くはない。
宝塚で阪急宝塚線が見えた。冷房車の導入も進めている。それに対して国鉄での運賃のみ乗車列車は非冷房が当たり前である。近い内に冷房完備の国電を新製投入するという話も聞いている。
そんな事考えている内に『まつかぜ2号』は大阪に到着した。