突然九州へ
高校卒業前の課題で書いた話を思い出しながら執筆しております。
国鉄ネタ、そこそこ多めです。
時代背景に間違いがあれば、コメント欄にて御指摘お願い致します。
「次は岡山………」
私は『明星3号』に乗っていた。
もうすぐ日付が変わろうとしている。父との諍いも日付が変われば過去の事となる。
営業終了後の食堂車のテーブルで夜景の流れ行く車窓を眺めつつ呑んでいた。
「博多着は朝早いです。そろそろお開きにして寝台にもどりましょか。若旦那。」
「ほんなら、そないしましょか。忠さん。」
レール方向に並べられた寝台に戻ったあとの記憶は殆どない。下からのモーター音が子守歌になったのか、意外と早く夢の中に入ったようである。
私は十三の料亭にて店主兼板長の父の下で板前として働いていた。
しかし、父と諍いを起こして店を飛び出してしまった。心配して年配板前の忠さんが追いかけて来てくれて、一緒に夜行で西へ向かう事にした。要はちょっとした「家出」である。
博多に着いたのは7時台。通勤ラッシュのホームは忙しい。新幹線工事も追い込みにかかり、いかにも九州を代表する駅という感じがする。
一晩乗って来た『明星3号』は博多止まりで、回送となって南福岡電車に引き上げて行った。これから寝台は解体されて座席となり、九州の昼行特急として運用につくのであろう。ほぼ24時間勤務、それが583系の使命である。
昨夜の父との諍いから時間が経過した事で心にも余裕ができ、帰阪する事にした。
しかし、まっすぐに帰る気にならなかったので、日本海側経由にした。
エンジンを唸らせながら乗車ホームに姿を現したのは『まつかぜ2号』キハ80系である。今は天候に恵まれているが、冬の山陰本線では降雪・強風にダイヤが影響されないかが心配であった。